37 / 63
イカが嫌いになりそうです。
しおりを挟む「キャーー! どうするのよこれ!?」
ユーリが右側の道に一歩踏み入れた瞬間出てきたのはイカの大群だ。あのイカほどは大きくないけど、私たちの背丈くらいはある。そしてどれも頭部には赤い魔石が埋め込まれている。きっとあの巨大イカと同じ種類の魔物だ。
「だから待ってと言ったのですよ! 魔物がうじゃうじゃいる音がすると!」
「それを先に言えよ!! 不味い!! アレに当たるなよ!!」
ユーリがそう言った瞬間にイカの大群から一斉に例のイカ墨が飛んでくる。当たるなと言ってもまるで雨のように降ってくるイカ墨に当たらないことなど不可能だ!
「そんなこと言っても無理よーー!! イカ墨の雨なんてどうすれば良いのよ!!」
イカ墨は私達の数メートル先で落ちて嫌な臭いを発している。そうしている間にもイカはこちらに近づいてきており、次にアレが飛び出したら思いっきりかかってしまうに違いない。
「魔法でどうにかならないのですか!?」
「どうなにかってどうすればっ」
「浄化しろ! 浄化するイメージをするんだ!!」
「そんな無茶振り! 浄化なんてしたことないのに!!」
「とにかくやるしかない!! あのイカ墨さえどうにかしてくれればアイツらは俺が倒す!」
「……もう! 絶対だからね!」
覚悟を決めると差し出されたユーリの剣に稲妻を纏わせる。イカの大群が先程と同じようにイカ墨を吐き出す体勢に入ったのを確認すると私は浄化のイメージをする。浄化なんてやったことないし分からない。もうアレを雨だと思い込もう。汚染された雨を浄化するの。綺麗にして、蒸発させて天に戻す。うん、きっと出来る!
「来るぞ!!」
「任せて!! キレイニナ~~レ~~」
私の呪文にユーリが一度ガクッとした気がするが無視。イカ墨の雨に向かって魔法を放つと、黒ずんでいた雫が透明に浄化、そして蒸発して消えていった。
イカ墨が消えるとすかさずユーリがイカの大群に突っ込んで行き、一気に斬りかかる。ユーリが逃したイカはマーク様が倒していくという連携プレーが見事であっという間にイカの大群は倒されて行った。
「これ気持ち悪いんだけど……。お持ち帰りした方が良い?」
「とりあえず洞窟の外に転移させたらどうだ?」
「そうですね。一応調べてみますので、そうして頂けますか?」
あたり一面に倒れているイカ。イカは好きだったけど、しばらく食べるの嫌になりそうな光景だった。すぐさま洞窟の外をイメージしてイカを転移させると、やっと新鮮な空気を吸うことが出来る。
「お前さっきの浄化を使えばあんな紙使わなくても毒の無効化が出来るんじゃないか?」
「確かにっ! その手もありかも知れないわね」
「ですがそれはユリ殿がいる時しか成り立たないので、試験紙もやはり重要ですよ。ですが今はそんなことより先に進みましょうか」
そう言ってマーク様が先程の道を指す。この先に何が待っているか分からない。まだ気を抜いては駄目だ。
「この先からは何か聞こえるか?」
「いえ、先程のような音はしません。むしろ何も聞こえないので恐らく魔物も居ないと思いますよ」
「よし、じゃあ行くか」
先程と同じようにユーリを先頭に右側の道を進んでいく。コツコツと私達が歩く音だけがあたりに響き渡り、魔物は一切出てこない。そして暫く進んで行くと、岩の扉が現れた。
「怪しい扉だな。開くぞ、気をつけろよ」
そう言ってユーリが開こうとするのだが、ビクともしない。ユーリに代わってマーク様が代わるが同じく開く気配がない。
「何か仕掛けがあるのでしょうか?」
「ダンジョン内にそんな仕掛け扉があるなんて聞いたことがないぞ。どうすれば良いんだよ。力技じゃ無理だとすると魔法か? ユリ何かやってみろよ」
魔法と聞いたら私の番だ。ユーリが期待を込めた目で見てくれるのなら、その期待に応えなければいけない。
「うーーん、『開け!』」
「……何も反応ないな。まぁそうだろうな。開けで開いたら苦労しない」
「そんなことないわよ! 私の世界では開けもちゃんとした呪文だったのよ! 『開けゴマ!』」
ズズズズズズ……。
「本当に開いた……」
期待半分、冗談半分であったのだが、開けゴマに反応したようで岩の扉が開き奥の部屋が見えた。
「見ろよ。お前の言う通りだった。本当にあったんだな」
「これは……。とにかく今は何も触れずにミラー様に報告をしましょう。これは私達だけで手に負える代物ではありません」
扉の奥には小さな部屋があり、その中央にある台座に大きな魔石が置かれていた。しかしその魔石は赤黒い禍々しい色をしており、その魔石周辺にも同じ魔力が渦巻いていた。その部屋から流れてくる空気もどこか重苦しい。
「そうだな。あの人も来るんだろ? 一度見てもらってからじゃないとアレは何が起こるか分からないな。ユリ、この扉を閉める事できるか?」
「うん。多分大丈夫だと思う『閉じよゴマ』」
私がそう唱えると再び扉は動き、閉じられた。良かった。あの部屋から流れてくる空気を吸うだけで心身共に凍ってしまうような感覚がしていた。とても冷たくて重苦しいのだ。あの部屋に入るには相当の覚悟が必要だ。
扉が閉じられたのを確認すると、私達はまた先程のイカの大群と戦った場所まで戻ってくる。
「ユリ、ここにワープ先の設定をしてくれ。ダンジョンの入り口と繋げて」
「分かったわ」
実は冒険をする中でワープを作ること覚えたのだ。ゲームでもよくボス戦の前に一旦引き返せるようなワープとかあるアレだ。普段は最深部まで一気に行って強い魔物と鍛錬出来る様に使ってるので、こういった本来の意味でのワープポイントを作るのは初だ。
「ワープポイントですか? それは他のダンジョンにも作っているのですか?」
「ああ。次回来た時にここまで一気に来れるようになる。だが他の奴らには危険に巻き込まれるかも知れないから俺たちだけに分かるようにしている」
「なるほど。確かに実力がないものがいきなり最深部まで行くのは危険ですからね」
勝手にワープポイントを作って咎められるかと思ったが違ったようで良かった。私はいつも通り壁に『YU』の文字を掘ると、そこにワープの魔法を込めるようイメージして手をかざす。文字が一瞬光ったらワープポイントの完成だ。
こうやって壁に文字を掘るのは冒険者に良くある事なのだ。ここまで来たぞっていう記念で名前を掘る。だから私が掘った文字もそういった名前に埋もれてしまうから目立たないのだ。
「じゃあそのワープ使って入り口に戻るか」
「次来た時はまたあのイカの大群が復活してるのかな?」
「さぁ、どうでしょう。普通魔物によって出現スピードが決まっていると言いますが。あの魔石の影響もあるだろうしないとは言い切れませんね。その時はもう一度戦うしかないでしょう」
「ですよね。ガンバリマス」
こうして調査を終えた私達は宿に戻り、ミラー様に報告をすることにした。
洞窟の外に出した大量のイカの魔物は、外で待っていたマーク様の部下達が速やかに船へと積み込み作業を終えていおり、嫌なものを見なくて済んだ。みんな本当に優秀なのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!
弥生 真由
恋愛
何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった!
せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!
……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです!
※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;
行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~
柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。
そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。
クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。
さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる