乙女ゲーの世界に落ちましたが、目の前には推しのご先祖様!?異世界チートで魔王を倒すはずが、いつの間にか恋に落ちていました。

高崎 恵

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イカが嫌いになりそうです。

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「キャーー! どうするのよこれ!?」

 ユーリが右側の道に一歩踏み入れた瞬間出てきたのはイカの大群だ。あのイカほどは大きくないけど、私たちの背丈くらいはある。そしてどれも頭部には赤い魔石が埋め込まれている。きっとあの巨大イカと同じ種類の魔物だ。


「だから待ってと言ったのですよ! 魔物がうじゃうじゃいる音がすると!」

「それを先に言えよ!! 不味い!! アレに当たるなよ!!」

 ユーリがそう言った瞬間にイカの大群から一斉に例のイカ墨が飛んでくる。当たるなと言ってもまるで雨のように降ってくるイカ墨に当たらないことなど不可能だ!

「そんなこと言っても無理よーー!! イカ墨の雨なんてどうすれば良いのよ!!」

 イカ墨は私達の数メートル先で落ちて嫌な臭いを発している。そうしている間にもイカはこちらに近づいてきており、次にアレが飛び出したら思いっきりかかってしまうに違いない。

「魔法でどうにかならないのですか!?」

「どうなにかってどうすればっ」

「浄化しろ! 浄化するイメージをするんだ!!」

「そんな無茶振り! 浄化なんてしたことないのに!!」

「とにかくやるしかない!! あのイカ墨さえどうにかしてくれればアイツらは俺が倒す!」

「……もう! 絶対だからね!」

 覚悟を決めると差し出されたユーリの剣に稲妻を纏わせる。イカの大群が先程と同じようにイカ墨を吐き出す体勢に入ったのを確認すると私は浄化のイメージをする。浄化なんてやったことないし分からない。もうアレを雨だと思い込もう。汚染された雨を浄化するの。綺麗にして、蒸発させて天に戻す。うん、きっと出来る!

「来るぞ!!」

「任せて!! キレイニナ~~レ~~」

 私の呪文にユーリが一度ガクッとした気がするが無視。イカ墨の雨に向かって魔法を放つと、黒ずんでいた雫が透明に浄化、そして蒸発して消えていった。
 イカ墨が消えるとすかさずユーリがイカの大群に突っ込んで行き、一気に斬りかかる。ユーリが逃したイカはマーク様が倒していくという連携プレーが見事であっという間にイカの大群は倒されて行った。


「これ気持ち悪いんだけど……。お持ち帰りした方が良い?」

「とりあえず洞窟の外に転移させたらどうだ?」

「そうですね。一応調べてみますので、そうして頂けますか?」

 あたり一面に倒れているイカ。イカは好きだったけど、しばらく食べるの嫌になりそうな光景だった。すぐさま洞窟の外をイメージしてイカを転移させると、やっと新鮮な空気を吸うことが出来る。

「お前さっきの浄化を使えばあんな紙使わなくても毒の無効化が出来るんじゃないか?」

「確かにっ! その手もありかも知れないわね」

「ですがそれはユリ殿がいる時しか成り立たないので、試験紙もやはり重要ですよ。ですが今はそんなことより先に進みましょうか」

 そう言ってマーク様が先程の道を指す。この先に何が待っているか分からない。まだ気を抜いては駄目だ。

「この先からは何か聞こえるか?」

「いえ、先程のような音はしません。むしろ何も聞こえないので恐らく魔物も居ないと思いますよ」

「よし、じゃあ行くか」

 先程と同じようにユーリを先頭に右側の道を進んでいく。コツコツと私達が歩く音だけがあたりに響き渡り、魔物は一切出てこない。そして暫く進んで行くと、岩の扉が現れた。

「怪しい扉だな。開くぞ、気をつけろよ」

 そう言ってユーリが開こうとするのだが、ビクともしない。ユーリに代わってマーク様が代わるが同じく開く気配がない。

「何か仕掛けがあるのでしょうか?」

「ダンジョン内にそんな仕掛け扉があるなんて聞いたことがないぞ。どうすれば良いんだよ。力技じゃ無理だとすると魔法か? ユリ何かやってみろよ」

 魔法と聞いたら私の番だ。ユーリが期待を込めた目で見てくれるのなら、その期待に応えなければいけない。

「うーーん、『開け!』」

「……何も反応ないな。まぁそうだろうな。開けで開いたら苦労しない」

「そんなことないわよ! 私の世界では開けもちゃんとした呪文だったのよ! 『開けゴマ!』」

 ズズズズズズ……。

「本当に開いた……」

 期待半分、冗談半分であったのだが、開けゴマに反応したようで岩の扉が開き奥の部屋が見えた。

「見ろよ。お前の言う通りだった。本当にあったんだな」

「これは……。とにかく今は何も触れずにミラー様に報告をしましょう。これは私達だけで手に負える代物ではありません」

 扉の奥には小さな部屋があり、その中央にある台座に大きな魔石が置かれていた。しかしその魔石は赤黒い禍々しい色をしており、その魔石周辺にも同じ魔力が渦巻いていた。その部屋から流れてくる空気もどこか重苦しい。

「そうだな。あの人も来るんだろ? 一度見てもらってからじゃないとアレは何が起こるか分からないな。ユリ、この扉を閉める事できるか?」

「うん。多分大丈夫だと思う『閉じよゴマ』」

 私がそう唱えると再び扉は動き、閉じられた。良かった。あの部屋から流れてくる空気を吸うだけで心身共に凍ってしまうような感覚がしていた。とても冷たくて重苦しいのだ。あの部屋に入るには相当の覚悟が必要だ。
 扉が閉じられたのを確認すると、私達はまた先程のイカの大群と戦った場所まで戻ってくる。

「ユリ、ここにワープ先の設定をしてくれ。ダンジョンの入り口と繋げて」

「分かったわ」

 実は冒険をする中でワープを作ること覚えたのだ。ゲームでもよくボス戦の前に一旦引き返せるようなワープとかあるアレだ。普段は最深部まで一気に行って強い魔物と鍛錬出来る様に使ってるので、こういった本来の意味でのワープポイントを作るのは初だ。

「ワープポイントですか? それは他のダンジョンにも作っているのですか?」

「ああ。次回来た時にここまで一気に来れるようになる。だが他の奴らには危険に巻き込まれるかも知れないから俺たちだけに分かるようにしている」

「なるほど。確かに実力がないものがいきなり最深部まで行くのは危険ですからね」

 勝手にワープポイントを作って咎められるかと思ったが違ったようで良かった。私はいつも通り壁に『YU』の文字を掘ると、そこにワープの魔法を込めるようイメージして手をかざす。文字が一瞬光ったらワープポイントの完成だ。
 こうやって壁に文字を掘るのは冒険者に良くある事なのだ。ここまで来たぞっていう記念で名前を掘る。だから私が掘った文字もそういった名前に埋もれてしまうから目立たないのだ。

「じゃあそのワープ使って入り口に戻るか」

「次来た時はまたあのイカの大群が復活してるのかな?」

「さぁ、どうでしょう。普通魔物によって出現スピードが決まっていると言いますが。あの魔石の影響もあるだろうしないとは言い切れませんね。その時はもう一度戦うしかないでしょう」

「ですよね。ガンバリマス」

 こうして調査を終えた私達は宿に戻り、ミラー様に報告をすることにした。
 洞窟の外に出した大量のイカの魔物は、外で待っていたマーク様の部下達が速やかに船へと積み込み作業を終えていおり、嫌なものを見なくて済んだ。みんな本当に優秀なのだ。

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