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またまた新たな物が見えてしまったようです。
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「では例のやつを見せてくれますか?」
そうリア様に促されて鏡の前に立つ。
リア様の部屋に化粧台はなかったのだが、クローゼットの内側に鏡がついていたので、扉を開けてみんなでその鏡を覗くような形になる。
「はい、では見せますね。鏡よ鏡、魔王の魔石のある場所を映しておくれ」
「お前の呪文にしてはいつもよりまともだな」
「ああ。初めて呪文らしい文言に多少はなっているね」
私が鏡と向かい合っている後ろで何やら失礼なことを言っているのが聞こえるが無視する。
私が唱え終えると、鏡の中が波内、ある映像が映し出される。
「これは……森の中かな?」
「え?」
確かに今映し出されているのは森の中のようだ。
周りが木に囲まれている中、洞窟のような入口が奥に見える。そしてその入り口からはドス黒い魔力が漏れてきている。
「……これは一体どこなんだ!?」
ユーリがそう言って私を見るが、何も答えられない。私が昨日見たのはこの場所ではないから。
でもそこで映っている景色に見覚えがある。
確か魔王との最後の戦いは森の中だったはず……。
「ユリ殿? ここがどこか、何を意味しているのか分かるか?」
「いえ……。ただここにもあの魔王の魔石があることは確かだと思います。もしかしたら魔王本体も……。でも昨日私が見た光景はこれではないんです」
困惑しながら答えると、みんな黙り込んで考え込む。
昨日見たことを相談したかったのに、さらに問題を抱えてしまった。
「色々不明なことが多い。今この件について考えても答えは出ないだろう。もう一度昨日みたという光景を映せるかやってみてくれるかい?」
どうしようかと思っているとミラー様が仕切ってくれて安心する。私もあの森については分かっていることが少ないから助かった。もう一度鏡に向かって問いかける。
「鏡よ鏡よ鏡さん、魔王の魔石がある別の場所を映し出してちょうだい」
そう唱えると先ほどの森の景色が歪み、一度波打ったかと思うと別の景色が映し出される。
「これは……嘘だろう。父上……?」
「どういうことだよ。国王が裏切っているってことか!? おいっ!!」
そう、わたしが昨日見たのは国王がある部屋で、魔石に祈りを捧げている姿だったのだ。この魔石から魔王へ魔力を供給しているか分からないが、神殿を疑ってかかっているからには、この光景を見て黙っているわけには行かなかた。
「……僕は知らない。この部屋も見たことがない」
「そんな訳があるかっつ!!」
「本当だ!! こんな特徴的な部屋見たらすぐ分かる!!」
確かにその部屋は特徴的だ。王城の部屋にしてはかなり狭い。王城で借りていた部屋のクローゼットくらいの広さだ。人が2、3人入ればいっぱいになってしまうくらい。
そして部屋の中央に祭壇と魔石があるだけで、その他には何もない。そう、何もないのだ。その部屋には照明もない。それでも王様だと分かったのは、天井から月明かりがさしているから。
「天窓で月明かりが入ってきているのか……地下ではない」
「そうですね。ミラー様も知らないとなると……やはり南の塔の最上階ではないかと」
「……そうだろうな」
「なんだよその南の塔って。お前が知らないことがあるはずないだろう!」
リア様とミラー様の話にまだ興奮気味のユーリがくってかかる。
「南の塔は王族の生活区域だ。一般の人はおろか、使用人でさえ入れるものが必要最低限に限られている」
「だがお前は関係ないだろう」
「その塔の中でも最上階はこの国の王とその後継者しか入れないんだ。そういう魔法が掛かっている」
「だからお前はその後継者じゃねぇか!!」
「……ミラー様は王太子ではありませんからね。王太子を断り、未だにただの王子です」
リア様の言葉にユーリもハッとしたように黙り込む。
そうだ。ミラー様は死ぬ運命だからと王太子にはなっていないという話だったはず。
「そこにその魔石があるとしたら……。もしその魔石から魔王へ魔力が供給されていたら……」
「俺らの敵は魔王だけじゃないってことか」
苦虫を噛み潰したような顔でユーリが告げる。その一言に誰も何も発することが出来ない。
ただでさえ大きな未知の敵を相手にしているのに、何を信じてやっていけば良いか分からない状況なのだ。
「……とにかくこの件に関しては僕が調査する。その部屋に僕が入れないか、そこに何があるのか確認しようと思う」
「そうですね。貴方にしか出来ませんから。あそこは秘密の魔法が掛けられていて、流石に私も外から中の様子を確認することすら出来ませんから」
「そんな魔法が掛けられているのに覗けてしまうんだからな。ユリ殿の魔法のなんと強いことか」
「……いえ、そんな極秘の場所を覗いてしまいすみません……」
そう恐縮しながら内心はバクバクだ。ほんの軽い気持ちで見たら、ミラー様も知らない極秘事項を目撃してしまったのだ。
今度から鏡への聞き方も良く考えなきゃいけない。これが軍事に関することや、本当に国を揺るがす内容についてだったら私は殺されてたっておかしくないんだ。
そう考えるとガタガタ震えそうになったのだが、ポンと肩を叩かれる。顔を上げるとそこには優しく微笑むミラー様がいた。
「ユリ殿はあの魔石について調べてくれようとしたんだろう? それで秘密を覗いたことを罪に問うことはしないさ」
「ミラー様……」
優しい言葉にホッとして、緊張が緩んでいく。
「王にも上手く言っておくから安心して。そもそも最初から直球勝負では行かないよ。一応国王だからね。息子の僕にも容赦ないからなかなか手強いんだ」
そう言って笑うミラー様につられて私もクスッと笑ってしまう。
こんな状況で笑うのは不謹慎だと思うのだが、私が笑うとミラー様もさらに笑みを深める。
「それで? 話はまだだぞ。結局今後はどうしていくんだ?」
少し和んだ空気を出していたらユーリが口を出す。
「ユーリ殿とリア殿は変わらず神殿側を監視と調査してくれ。一度祈りは辞めるようにもう伝えてますよね?」
「ええ、今朝伝えています。調査が終わるまで祈りはしないようにと」
「分かった。僕は王城に戻り王に話す。暫くは向こうに滞在しないといけないと思うから、連絡は通信機で行ってくれ」
「分かりました」
「念のため連絡を取る際はユリ殿に盗聴を防ぐ魔法を掛けてもらって」
「はい! 大丈夫です」
「あの森に関してはまだ不明なことが多いが、なるべくそちらも情報がないか調べていこう」
「承知致しました」
細かい点をミラー様とリア様で話し合い、ミラー様を私の転移魔法で王城へ飛ばす。王城のイメージは問題ないので、今回はちゃんとした場所は転移している……はずだ。
「では私も調べごとがあるので失礼します。ユーリ殿、ユリ殿を送ってあげて下さい。ユリ殿、念の為あまり1人にならないようにして下さいね」
「分かりました。ありがとうございます」
そうしてリア様に見送られて2人並んで廊下を歩く。
まだ興奮しているのか、ユーリは無言で少し先を歩いている。久々に2人だけなのに気軽に声を掛けることも憚られる。
そうしている間にすぐに自分の部屋の前へと着いてしまった。
そうリア様に促されて鏡の前に立つ。
リア様の部屋に化粧台はなかったのだが、クローゼットの内側に鏡がついていたので、扉を開けてみんなでその鏡を覗くような形になる。
「はい、では見せますね。鏡よ鏡、魔王の魔石のある場所を映しておくれ」
「お前の呪文にしてはいつもよりまともだな」
「ああ。初めて呪文らしい文言に多少はなっているね」
私が鏡と向かい合っている後ろで何やら失礼なことを言っているのが聞こえるが無視する。
私が唱え終えると、鏡の中が波内、ある映像が映し出される。
「これは……森の中かな?」
「え?」
確かに今映し出されているのは森の中のようだ。
周りが木に囲まれている中、洞窟のような入口が奥に見える。そしてその入り口からはドス黒い魔力が漏れてきている。
「……これは一体どこなんだ!?」
ユーリがそう言って私を見るが、何も答えられない。私が昨日見たのはこの場所ではないから。
でもそこで映っている景色に見覚えがある。
確か魔王との最後の戦いは森の中だったはず……。
「ユリ殿? ここがどこか、何を意味しているのか分かるか?」
「いえ……。ただここにもあの魔王の魔石があることは確かだと思います。もしかしたら魔王本体も……。でも昨日私が見た光景はこれではないんです」
困惑しながら答えると、みんな黙り込んで考え込む。
昨日見たことを相談したかったのに、さらに問題を抱えてしまった。
「色々不明なことが多い。今この件について考えても答えは出ないだろう。もう一度昨日みたという光景を映せるかやってみてくれるかい?」
どうしようかと思っているとミラー様が仕切ってくれて安心する。私もあの森については分かっていることが少ないから助かった。もう一度鏡に向かって問いかける。
「鏡よ鏡よ鏡さん、魔王の魔石がある別の場所を映し出してちょうだい」
そう唱えると先ほどの森の景色が歪み、一度波打ったかと思うと別の景色が映し出される。
「これは……嘘だろう。父上……?」
「どういうことだよ。国王が裏切っているってことか!? おいっ!!」
そう、わたしが昨日見たのは国王がある部屋で、魔石に祈りを捧げている姿だったのだ。この魔石から魔王へ魔力を供給しているか分からないが、神殿を疑ってかかっているからには、この光景を見て黙っているわけには行かなかた。
「……僕は知らない。この部屋も見たことがない」
「そんな訳があるかっつ!!」
「本当だ!! こんな特徴的な部屋見たらすぐ分かる!!」
確かにその部屋は特徴的だ。王城の部屋にしてはかなり狭い。王城で借りていた部屋のクローゼットくらいの広さだ。人が2、3人入ればいっぱいになってしまうくらい。
そして部屋の中央に祭壇と魔石があるだけで、その他には何もない。そう、何もないのだ。その部屋には照明もない。それでも王様だと分かったのは、天井から月明かりがさしているから。
「天窓で月明かりが入ってきているのか……地下ではない」
「そうですね。ミラー様も知らないとなると……やはり南の塔の最上階ではないかと」
「……そうだろうな」
「なんだよその南の塔って。お前が知らないことがあるはずないだろう!」
リア様とミラー様の話にまだ興奮気味のユーリがくってかかる。
「南の塔は王族の生活区域だ。一般の人はおろか、使用人でさえ入れるものが必要最低限に限られている」
「だがお前は関係ないだろう」
「その塔の中でも最上階はこの国の王とその後継者しか入れないんだ。そういう魔法が掛かっている」
「だからお前はその後継者じゃねぇか!!」
「……ミラー様は王太子ではありませんからね。王太子を断り、未だにただの王子です」
リア様の言葉にユーリもハッとしたように黙り込む。
そうだ。ミラー様は死ぬ運命だからと王太子にはなっていないという話だったはず。
「そこにその魔石があるとしたら……。もしその魔石から魔王へ魔力が供給されていたら……」
「俺らの敵は魔王だけじゃないってことか」
苦虫を噛み潰したような顔でユーリが告げる。その一言に誰も何も発することが出来ない。
ただでさえ大きな未知の敵を相手にしているのに、何を信じてやっていけば良いか分からない状況なのだ。
「……とにかくこの件に関しては僕が調査する。その部屋に僕が入れないか、そこに何があるのか確認しようと思う」
「そうですね。貴方にしか出来ませんから。あそこは秘密の魔法が掛けられていて、流石に私も外から中の様子を確認することすら出来ませんから」
「そんな魔法が掛けられているのに覗けてしまうんだからな。ユリ殿の魔法のなんと強いことか」
「……いえ、そんな極秘の場所を覗いてしまいすみません……」
そう恐縮しながら内心はバクバクだ。ほんの軽い気持ちで見たら、ミラー様も知らない極秘事項を目撃してしまったのだ。
今度から鏡への聞き方も良く考えなきゃいけない。これが軍事に関することや、本当に国を揺るがす内容についてだったら私は殺されてたっておかしくないんだ。
そう考えるとガタガタ震えそうになったのだが、ポンと肩を叩かれる。顔を上げるとそこには優しく微笑むミラー様がいた。
「ユリ殿はあの魔石について調べてくれようとしたんだろう? それで秘密を覗いたことを罪に問うことはしないさ」
「ミラー様……」
優しい言葉にホッとして、緊張が緩んでいく。
「王にも上手く言っておくから安心して。そもそも最初から直球勝負では行かないよ。一応国王だからね。息子の僕にも容赦ないからなかなか手強いんだ」
そう言って笑うミラー様につられて私もクスッと笑ってしまう。
こんな状況で笑うのは不謹慎だと思うのだが、私が笑うとミラー様もさらに笑みを深める。
「それで? 話はまだだぞ。結局今後はどうしていくんだ?」
少し和んだ空気を出していたらユーリが口を出す。
「ユーリ殿とリア殿は変わらず神殿側を監視と調査してくれ。一度祈りは辞めるようにもう伝えてますよね?」
「ええ、今朝伝えています。調査が終わるまで祈りはしないようにと」
「分かった。僕は王城に戻り王に話す。暫くは向こうに滞在しないといけないと思うから、連絡は通信機で行ってくれ」
「分かりました」
「念のため連絡を取る際はユリ殿に盗聴を防ぐ魔法を掛けてもらって」
「はい! 大丈夫です」
「あの森に関してはまだ不明なことが多いが、なるべくそちらも情報がないか調べていこう」
「承知致しました」
細かい点をミラー様とリア様で話し合い、ミラー様を私の転移魔法で王城へ飛ばす。王城のイメージは問題ないので、今回はちゃんとした場所は転移している……はずだ。
「では私も調べごとがあるので失礼します。ユーリ殿、ユリ殿を送ってあげて下さい。ユリ殿、念の為あまり1人にならないようにして下さいね」
「分かりました。ありがとうございます」
そうしてリア様に見送られて2人並んで廊下を歩く。
まだ興奮しているのか、ユーリは無言で少し先を歩いている。久々に2人だけなのに気軽に声を掛けることも憚られる。
そうしている間にすぐに自分の部屋の前へと着いてしまった。
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