番ではなく、あなたを選ぶと決めた──王太子と平民の契約から始まる恋

春夜夢

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第23話「ふたりの未来」

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制度改革の布告から数日。
 王都は今、かつてないほど“言葉”と“意見”にあふれていた。

 ある者は祝福し、ある者は反発し――
 変化とは、いつだって痛みを伴う。

 そんな中、セイルは城内の書庫にいた。

 誰もいない静寂の中、彼は古い文献をひとつ、またひとつと読み漁っていた。

(レイグランの隣に立つなら、僕も“知る”努力をしなきゃいけない)

 王族の傍らに立つとは、ただ愛されるだけで済む話じゃない。
 彼はすでにそれを理解していた。

 その夜、執務を終えたレイグランが自室に戻ると、
 机にうつ伏せたまま眠るセイルの姿があった。

「……こんな時間まで」

 肩に掛かっていた上着をそっと脱がせ、ブランケットをかける。

「本当に……変わったな、君は」

 愛しさが胸を満たす。
 守られる側だったはずの青年は、いつの間にか、並んで歩く存在になっていた。

 しかしその翌日。
 ある密書が、王太子のもとへ届いた。

『制度改革の撤回を求める。さもなくば“あの者”を再び奪う』

 差出人の名はなかった。だが――

 レイグランは、かすかに眉を寄せる。

「……クラウス卿の残党、か」

 セイルを囮に再び揺さぶろうという目論見は、
 王政を否定する最後の抵抗だ。

 そして夜更け。

 セイルは、城外の使者宿舎にある倉庫で目を覚ました。
 手足は縛られ、口も布で塞がれていた。

 (また……繰り返すのか……)

 力が入らない身体。
 だが、心は、もう折れていなかった。

 ――どんなに縛られても、奪われても、彼はきっと来てくれる。

 一方、報を受けたレイグランは、すでに剣を帯びて馬を駆っていた。

 闇夜を裂くように、ただ一直線に――

「手を出したら最後だ。貴様らに、“王の怒り”というものを見せてやる」

 やがて、倉庫の扉が破られ、月明かりと共に彼が現れた。

「セイル……! もう大丈夫だ」

 剣を抜き、敵を制圧したあと、
 レイグランは跪いてセイルを抱き寄せた。

「すまない。……また、君を危険に晒してしまった」

「でも、君は……来てくれた。信じてた」

 ふたりは静かに額を寄せ合い、言葉のいらない想いを交わす。

 もう、誰にも引き裂かせはしない。
 制度がどうであれ、運命がどうであれ――

 “選ぶ”という意志の前には、何ものも敵わない。

 その夜、セイルはレイグランの腕の中で眠った。
 夢の中でも、きっとふたりは、同じ未来を見ていた。
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