落ちこぼれ予言者と、世界を救うただの少年

春夜夢

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神の記録と、欺かれた歴史

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塔の第二層へと続く階段を登った先、そこは書庫のような空間だった。
 壁一面に刻まれた浮き彫り。天井からは光が差し込み、中央には円盤型の装置が浮かんでいた。

「ここは……“神の記録室”?」

 フィノの声に応えるように、装置が淡く輝き始めた。

『認証完了。器と導き手、共に到達を確認。
 記録再生──開始』

 光が広がり、空間が“幻影の歴史”で満たされていく。

 そこに映し出されたのは、はるか昔。
 まだ人も国もなかった“原初の世界”。

 空には七柱の神々が並び立ち、地を創り、命を与えた。
 しかし──

『やがて神々は、“人間の進化”に脅威を感じるようになった』

 人が言葉を持ち、火を操り、集い、考え始めた時、
 神々の一柱・アレムが提唱した。

『愚かな進化を止めるには、“選別”が必要だ』

 神々は協議の末、人間を定期的に「試練にかける」ことを決定。
 その実行を担う存在として、“裁定者”と“器”が創られた。

 レントは固唾をのんで映像を見つめる。

「じゃあ……僕は最初から、“人類を淘汰するため”に……?」

 フィノは強く首を振った。

「違う。見て、ここからが“隠された歴史”よ」

 映像はさらに進む。
 中には、神々の命令に反対した一柱──“エルセリア”が現れる。

『私は、人間に希望を見た。だから器に“意志”を与えるべきだと主張した』

 彼女は密かに、ひとつの因子を器に組み込んだ。

 ──それが、“自我”という名の選択。

『器が心を持ち、導き手と出会い、世界を“選ぶ”未来があると信じて。
 たとえ神に背いても』

 記録の終わり、最後に残された言葉はこうだった。

 『この記録を見た君たちへ。
 君たちが選ぶ未来こそが、神々の支配を超える唯一の道。
 ……世界を、信じて』

 静かに光が消え、部屋は再び静寂に包まれた。
 レントは、しばらくの間その場から動けなかった。

 「僕は……神のために作られた。だけど、エルセリア様は“僕の意思”を信じてくれたんだね」

「うん。そしてその意思を、“一人じゃなくて、誰かと一緒に選んでほしい”って思ったんだよ」

 フィノの言葉に、レントはゆっくりと頷いた。

 「だったら僕は、選ぶ。“滅び”じゃなくて、“未来”を──」

 そのとき。

 塔の外から、重い振動が響いた。

 ──ゴオオオオッ……!

「……誰かが、外から干渉してきてる!? でもこの結界、突破できるのは──!」

 浮かんだのは、一人の名前。

「ゼイン……!」
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