落ちこぼれ予言者と、世界を救うただの少年

春夜夢

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闇を纏う者、再臨

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塔が深く震えたあと、空気が変わった。
 まるで重力が増したかのように、空間が息苦しくなる。

 そして──扉が、音もなく開いた。

 そこに立っていたのは、漆黒の外套に身を包んだ男。
 銀色の仮面、その奥に光る鋭い眼。

「……ようやく、核心まで辿り着いたか」

「ゼイン……!」

 フィノが身構える一方、レントはその姿を静かに見つめていた。

「君たちが“器と導き手として目覚めた”瞬間、この塔は開かれた。
 だが、選ばれるだけでは意味がない。
 ──その力を、誰のために使うかが問題だ」

「だからって、僕を“回収”するために、村を……!」

「……あれは、お前のせいではない。
 いや、むしろ“お前を守るため”に、ああするしかなかったのだ」

 ゼインの声が静かに揺れた。
 仮面の奥の目が、レントの胸元に宿る“記憶石の輝き”を見つめていた。

「俺は、元は神殿預言派のひとりだった。
 だが神の命に背き、“エルセリア派”の情報を隠蔽した咎で、“視る力”を封じられた」

「じゃあ……あなたも“信じた”人間だったの?」

「かつては、な。だが何もかもが滅び、器は失われ、導き手は姿を消した──。
 希望など、世界には残らなかった」

 ゼインの外套が、まるで意志を持つようにうねる。
 その背後には、塔の結界に亀裂が走っていた。

「俺は、“この世界が裁定されること”を望む者だ。
 何度も延命され、何度も愚行を繰り返すこの世界に、終わりの刻を告げるために──」

「……それでも、私は希望を捨てたくない!」

 フィノが叫んだ。

「未来がどう転ぶかなんて、分からないからこそ選べるんだよ。
 レントが、その意志を持っているなら、私はその選択を信じる!」

 沈黙。
 だが次の瞬間──

「ならば、力で証明してみせろ。
 “希望”とやらが、“世界の選別”より価値があるかを」

 ゼインが腕を振り下ろす。
 塔の第二層が、戦闘用の空間へと姿を変えた。

 フィノとレントは、同時に前に出る。

「レント、いける?」

「……うん。もう逃げない。今度は、僕が“未来を変える力”になる」
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