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第16話 誰かに否定されたくらいで、俺は揺れない
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堂本家の応接室は、思ったよりも静かで重たい空気だった。
重厚なソファと、無駄に広い空間。
そこにいるだけで、試されている気がする。
「……緊張してる?」
隣で囁く遥に、俺は小さく首を振った。
「してない。……ていうか、してる暇ない」
「ふふ、頼もしいな」
数分後。
扉の向こうから、重たい足音が響いた。
現れたのは――遥の父、堂本重継(しげつぐ)。
鋭い眼光、隙のないスーツ姿。
まさに“この家のすべてを支配してきた男”という雰囲気を纏っていた。
「……遥。連れてきたのが、その“彼”か」
「はい。春翔です。俺の恋人で、これから共に生きていく人間です」
一切の迷いがない声だった。
堂本重継は、ちらりと俺に視線を向ける。
「……ふん。肩書きも、家柄も、何もない男だな」
その一言で、部屋の空気が一気に冷えた。
「春翔は、そんなことで測れる人間じゃありません」
「だが、社会は“そんなこと”で測るぞ。
君が何を失ったか、自覚しているのか?」
遥が何かを言おうとした、その時だった。
「俺は、彼の隣に立てるだけのものを、自分で手に入れるつもりです」
静かに、でもしっかりと声に出した俺に、堂本重継の視線が再び刺さる。
「言ったな。……その覚悟、試されても知らんぞ」
「誰かに否定されたくらいで、俺は揺れない。
俺が選んだのは、“この人”だから」
数秒の沈黙。
そして――遥の父は、ふっと鼻で笑った。
「……まぁ、口先だけではなさそうだ。
どうせ反対しても、遥は聞かん。……好きにしろ」
遥が、ほっとしたように息を吐いた。
それでも、油断はできない。まだ、“認められた”わけじゃない。
部屋を出たあと、遥は俺の手を強く握った。
「……ありがとう。俺、今日……本当に、嬉しかった」
「勝手に突っ走ってんの、お前の方だろ」
「でも、お前は追いかけてきてくれた。俺の隣に、ちゃんと立ってくれた」
その言葉が、何よりの“勲章”だった。
重厚なソファと、無駄に広い空間。
そこにいるだけで、試されている気がする。
「……緊張してる?」
隣で囁く遥に、俺は小さく首を振った。
「してない。……ていうか、してる暇ない」
「ふふ、頼もしいな」
数分後。
扉の向こうから、重たい足音が響いた。
現れたのは――遥の父、堂本重継(しげつぐ)。
鋭い眼光、隙のないスーツ姿。
まさに“この家のすべてを支配してきた男”という雰囲気を纏っていた。
「……遥。連れてきたのが、その“彼”か」
「はい。春翔です。俺の恋人で、これから共に生きていく人間です」
一切の迷いがない声だった。
堂本重継は、ちらりと俺に視線を向ける。
「……ふん。肩書きも、家柄も、何もない男だな」
その一言で、部屋の空気が一気に冷えた。
「春翔は、そんなことで測れる人間じゃありません」
「だが、社会は“そんなこと”で測るぞ。
君が何を失ったか、自覚しているのか?」
遥が何かを言おうとした、その時だった。
「俺は、彼の隣に立てるだけのものを、自分で手に入れるつもりです」
静かに、でもしっかりと声に出した俺に、堂本重継の視線が再び刺さる。
「言ったな。……その覚悟、試されても知らんぞ」
「誰かに否定されたくらいで、俺は揺れない。
俺が選んだのは、“この人”だから」
数秒の沈黙。
そして――遥の父は、ふっと鼻で笑った。
「……まぁ、口先だけではなさそうだ。
どうせ反対しても、遥は聞かん。……好きにしろ」
遥が、ほっとしたように息を吐いた。
それでも、油断はできない。まだ、“認められた”わけじゃない。
部屋を出たあと、遥は俺の手を強く握った。
「……ありがとう。俺、今日……本当に、嬉しかった」
「勝手に突っ走ってんの、お前の方だろ」
「でも、お前は追いかけてきてくれた。俺の隣に、ちゃんと立ってくれた」
その言葉が、何よりの“勲章”だった。
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