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第15話 俺は、お前の“隠し場所”になんかならない
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翌朝、遥の部屋を出る前に、彼はひとつだけ、重い口を開いた。
「今日、実家に顔を出すことになった」
「……例の、“会長”とやらか?」
「ああ。俺の父親だ」
堂本家。遥の父は、グループ企業を束ねる本家の当主。
遥自身も次期社長候補とされていた、いわば“跡取り”だった。
「付き添おうか?」
そう言った俺に、遥は首を横に振った。
「……いや。君には関係ない話だ」
その一言が、妙に突き刺さった。
まるで俺が“外側の人間”みたいな言い方に。
「関係ないって……どういう意味だよ」
「言葉のあやだ。気にしないでくれ」
誤魔化すように笑ったその顔が、ひどく遠かった。
――まだ、全部を見せてくれないんだな。
その日の夜。
遥は父親との面会を終えて帰ってきたが、顔色は優れなかった。
「どうだった?」
「……想像より厄介だった」
リビングに座り込んだ遥は、ゆっくりと口を開いた。
「正式に“家を出る”って伝えた。
会社の後継も、縁談も、全部断った。……その代償は小さくない」
「代償?」
「たとえば、今の役職。……明日には外されるかもしれない」
言葉を失った。
遥は、それだけのことを――俺との関係のために背負ったのだ。
「……なんで、そこまで」
「君を守るためだよ」
「……違うだろ」
遥がハッとしたように顔を上げた。
「俺は、守られるだけの存在じゃない。
お前と、対等でいたい。――お前の“隠し場所”になんか、なりたくない」
静かな怒気を孕んだ声に、遥は目を見開いて、そして――ふっと笑った。
「……そうだな。君は、そういう人だった」
「だから次は、俺も行く。
お前の家と向き合うなら、俺も一緒に向かい合う」
その瞬間、遥の表情が変わった。
驚き。感動。そして――安堵。
「……ありがとう。春翔」
遥が俺の手を強く握る。
温かくて、震えていて。
だけどその手を、俺はもう、絶対に離さないと決めた。
「今日、実家に顔を出すことになった」
「……例の、“会長”とやらか?」
「ああ。俺の父親だ」
堂本家。遥の父は、グループ企業を束ねる本家の当主。
遥自身も次期社長候補とされていた、いわば“跡取り”だった。
「付き添おうか?」
そう言った俺に、遥は首を横に振った。
「……いや。君には関係ない話だ」
その一言が、妙に突き刺さった。
まるで俺が“外側の人間”みたいな言い方に。
「関係ないって……どういう意味だよ」
「言葉のあやだ。気にしないでくれ」
誤魔化すように笑ったその顔が、ひどく遠かった。
――まだ、全部を見せてくれないんだな。
その日の夜。
遥は父親との面会を終えて帰ってきたが、顔色は優れなかった。
「どうだった?」
「……想像より厄介だった」
リビングに座り込んだ遥は、ゆっくりと口を開いた。
「正式に“家を出る”って伝えた。
会社の後継も、縁談も、全部断った。……その代償は小さくない」
「代償?」
「たとえば、今の役職。……明日には外されるかもしれない」
言葉を失った。
遥は、それだけのことを――俺との関係のために背負ったのだ。
「……なんで、そこまで」
「君を守るためだよ」
「……違うだろ」
遥がハッとしたように顔を上げた。
「俺は、守られるだけの存在じゃない。
お前と、対等でいたい。――お前の“隠し場所”になんか、なりたくない」
静かな怒気を孕んだ声に、遥は目を見開いて、そして――ふっと笑った。
「……そうだな。君は、そういう人だった」
「だから次は、俺も行く。
お前の家と向き合うなら、俺も一緒に向かい合う」
その瞬間、遥の表情が変わった。
驚き。感動。そして――安堵。
「……ありがとう。春翔」
遥が俺の手を強く握る。
温かくて、震えていて。
だけどその手を、俺はもう、絶対に離さないと決めた。
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