17 / 32
第17話 「普通」の幸せを、君とひとつずつ
しおりを挟む
翌日の午後。
堂本家との一件を終えた俺たちは、人気のない裏通りのカフェに来ていた。
「久しぶりに落ち着いたな」
「うん。空気、うまい」
遥は珍しく、深く息を吸って、やわらかく笑った。
「……いつも、こんな普通の休日が過ごせたらいいのにな」
「いや、お前の“普通”は十分バグってる」
「それでも、お前といる時間は……ちゃんと“普通”にしたいって思うんだよ」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
コーヒーを飲みながら、ふたりでなんてことない会話をした。
テレビの話、仕事の話、好きなスイーツ、他愛もないこと。
こんな時間が、いちばん欲しかったのかもしれない。
「……なぁ、春翔」
「ん?」
「俺たちってさ、“会社ではどうする”って決めた方がいいよな」
遥の声は穏やかだったけど、目は真剣だった。
「今はまだ、関係を公にしてないけど……これからどうしたい?」
「俺は……隠したままじゃ、苦しくなる気がする」
「だよな」
「でも、それでお前の立場が不利になるなら……」
遥はゆっくり首を振った。
「それを理由に、君との関係を隠すような未来は、選びたくない」
まっすぐな言葉に、俺は、何も言えなくなった。
「堂本家の名も、跡継ぎの肩書きも全部置いてきた。
俺が欲しいのは、“君とのこれから”だけだ」
窓から差し込む光が、遥の横顔を照らしていた。
その横顔が、やけに眩しかった。
「……だったら、もうちょっとだけ、“ふたりの時間”にしてくれ」
「ん?」
「誰にも見られずに、こうやって並んでコーヒー飲んだり、バカみたいに映画見たり……
そういうの、ひとつずつ味わってから、ちゃんと向き合いたい」
遥は驚いたように目を丸くして、それから――笑った。
「……了解。じゃあまずは、ふたりでベタなデートプランでも考えるか」
「マジで?」
「もちろん。だって、君と“普通の幸せ”を味わうって、俺の夢だから」
その言葉に、思わず目をそらす。
でも、口元が勝手に緩んだのは止められなかった。
堂本家との一件を終えた俺たちは、人気のない裏通りのカフェに来ていた。
「久しぶりに落ち着いたな」
「うん。空気、うまい」
遥は珍しく、深く息を吸って、やわらかく笑った。
「……いつも、こんな普通の休日が過ごせたらいいのにな」
「いや、お前の“普通”は十分バグってる」
「それでも、お前といる時間は……ちゃんと“普通”にしたいって思うんだよ」
その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
コーヒーを飲みながら、ふたりでなんてことない会話をした。
テレビの話、仕事の話、好きなスイーツ、他愛もないこと。
こんな時間が、いちばん欲しかったのかもしれない。
「……なぁ、春翔」
「ん?」
「俺たちってさ、“会社ではどうする”って決めた方がいいよな」
遥の声は穏やかだったけど、目は真剣だった。
「今はまだ、関係を公にしてないけど……これからどうしたい?」
「俺は……隠したままじゃ、苦しくなる気がする」
「だよな」
「でも、それでお前の立場が不利になるなら……」
遥はゆっくり首を振った。
「それを理由に、君との関係を隠すような未来は、選びたくない」
まっすぐな言葉に、俺は、何も言えなくなった。
「堂本家の名も、跡継ぎの肩書きも全部置いてきた。
俺が欲しいのは、“君とのこれから”だけだ」
窓から差し込む光が、遥の横顔を照らしていた。
その横顔が、やけに眩しかった。
「……だったら、もうちょっとだけ、“ふたりの時間”にしてくれ」
「ん?」
「誰にも見られずに、こうやって並んでコーヒー飲んだり、バカみたいに映画見たり……
そういうの、ひとつずつ味わってから、ちゃんと向き合いたい」
遥は驚いたように目を丸くして、それから――笑った。
「……了解。じゃあまずは、ふたりでベタなデートプランでも考えるか」
「マジで?」
「もちろん。だって、君と“普通の幸せ”を味わうって、俺の夢だから」
その言葉に、思わず目をそらす。
でも、口元が勝手に緩んだのは止められなかった。
13
あなたにおすすめの小説
この冬を超えたら恋でいい
天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。
古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。
そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。
偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。
事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。
一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。
危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。
冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。
大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。
しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。
それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。
一方、鷹宮は気づいてしまう。
凪が笑うだけで、胸が満たされることに。
そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、
凪を遠ざけてしまう。
近づきたい。
けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。
互いを思うほど、すれ違いは深くなる。
2人はこの冬を越えることができるのかーー
曖昧な関係
木嶋うめ香
BL
笹川蛍(ささがわけい)はリモートワーク勤務の会社員。
高校からの友達である中村拓(なかむらたく)と一緒に暮らしている。
会社支給のパソコンの交換のため久し振りに会社に出ていた蛍は、コンビニで明日の朝食用の食材と一緒に買ったコーヒーとドーナツを車の中で食べながら、拓と暮らす部屋ではドーナツなんて食べたことなかったなと気がついた。
Xのルクイユ・アートフェスティバル(@RecueilArtFest)様の素敵企画『ルクイユのおいしいごはんBL』に参加中です。
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる