君に二度、恋をした。

春夜夢

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第20話 この手を、世界のど真ん中で握ると決めた

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今夜の会場は、高層ビルの最上階。
 堂本グループ主催のビジネスパーティ。関係企業やマスコミ関係者も顔を揃える、大きな社交の場だった。

 

 「……ほんとに、俺が行っていいのか?」

 会場へ向かうエレベーターの中、俺は何度目かの確認をした。

 

 「もちろん。君は“同伴者”じゃない。“俺のパートナー”として連れていく」

 

 遥は一切の迷いなく言った。
 その言葉が嬉しい半面、胃の奥が重くなる。

 

 ――俺は今から、“遥の隣”に立つ。大勢の前で。

 

 ガラス張りの会場は、煌びやかな照明と音楽に満ちていた。
 誰もが上等なスーツに身を包み、シャンパン片手に微笑んでいる。

 完全に“場違い”だった。
 そう思ったその瞬間――

 

 「春翔」

 

 遥が、俺の手をとった。
 その手はあたたかくて、震えていなかった。

 

 「大丈夫。俺が、堂々と“君を選んだ”って顔をするから。
  ……だから、君も胸を張って、俺の隣にいてくれ」

 

 その言葉に、背筋が伸びた。

 

 (俺は今、自分の意思でここに立ってる。誰のせいでもない。誰にも譲らない)

 

 遥は堂々と、会場の中央へ進んだ。

 そして、壇上のスポットライトの下、
 堂本家の人間としてではなく、一人の男としてマイクを取った。

 

 「皆さま、本日はお越しいただきありがとうございます。
 本日、個人的に皆さまに紹介したい“最も信頼する人間”がいます。
 彼は――俺の人生のパートナーです」

 

 静まり返る会場の中、遥は俺の手を引いた。
 スポットライトの中に、俺の姿が晒される。

 

 けれど、怖くはなかった。

 

 俺は、この手を――世界のど真ん中で握ると決めた。

 

 遥が俺の肩を抱き、ゆっくりと囁く。

 

 「ありがとう。……君を誇りに思う」

 

 涙なんて、似合わない夜だった。
 けれど胸の奥が、何か大きなものでいっぱいになっていた。

 もう、誰にどう見られようとも構わない。

 

 この人の隣で、これからを生きていく。
 そう、心から思えた瞬間だった。
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