81 / 86
21.5-6 アルバーストのドラゴン
しおりを挟む
北の大陸にある、懐かしい拠点の書斎。
あの状況から、自分を引っ張り出した小柄な人間の女性の姿をした魔族は、何も迷い無く自分をここに連れてきた。
まるで、ここが自分の実家だと言うかのように。
南の魔神や彼らはいないらしい。
北の大陸に派遣された、南の魔神の眷族達とは会ったことはない。けれど、目の前の魔族が自分を知っているかのように、連続的に話しかけてくる。
派遣された眷族なのだろうか。
ならば、この行動原理はなんなのだろうか。
書斎に到着すると「ああ~。走り疲れました」と言って、纏っていた服装が一瞬で変わった。
北の大陸に不釣り合いな袖無しでたぼったい上衣に、太股部の中央より短く動きやすい下衣の服装。絶対に凍死する格好である。
魔族に体温という概念がないと南の大陸で知ったが、見ているこっちが大丈夫かと不安になってくる。
怠惰感と言っていいのか、抜けすぎていると言っていいのか、なんとも言えないだらしなさを感じた。服装などの見た目にこだわりが強い、南の魔神が口うるさいせいか。南の魔神の拠点では、だらしない見た目の魔族は全くいなかった。
けれど、人間の言葉を話せる魔族はほとんどいない。人間と会話する理由がないが1番の理由だと聞いている。南の大陸では、魔神が人間の言葉を話すことを推奨しており、拠点にいる上級魔族は話せている。魔神が推奨するのは、とても珍しいことらしい。
人間の言葉を話せる魔族であり、南の魔神のことを知っているのなら、南の魔神の眷族という答えしかない。しかし、その答えに納得できない自分がいた。
南の魔神の眷族なのかと尋ねようとするも、それより先に魔族が話をすすめてしまう。
「びっくりしましたよ!! 雪見大福食べに行ったらまさかいるんですよ!!」
「あ。雪見大福を冷凍箱に入れてくるので座っててください」
「紅茶飲みますかー?」
「ちょっと小腹が空いたので簡単なお菓子用意しますねー」
「クリームとメイプルと蜂蜜とフルーツソー・・・・・・面倒なのでそっちに全部持っていきますねー。お盆によいしょ、と」
途中から簡易キッチンの方へ行ってしまい、声だけが飛んできた。
自分は言われたとおりに椅子に座っていた。
この椅子に座って、復讐計画を練ったり、魔神から色々学んだ。それらが、遠い昔のように感じた。
懐かしさに浸っていると、目の前に大きなお盆に置かれたものが上から下に遮り、視覚から阻害してきた。
「おまたせしました!! プチホットケーキの山盛りとトッピング達です!!」
自分の顔より大きい白い皿の上に、その皿と同じ大きさの丸いパンケーキが塔のように積まれていた。厚みはほとんどないから、地層と呼んでもいいかもしれない。
プチの要素は皆無。写真で見るような通常の大きさなんて呼べない。
これは、巨大パンケーキであった。
今は座っているが、椅子から立ち上がってこの食べれる塔を見上げても、天辺が見えないだろう。
「トッピングはこちらから生クリーム、バタークリーム、カスタード、カスタードクリーム、クリームチーズ、ゴルゴンゾーラ、バター、粒あん、こしあん、きな粉、小豆クリーム、きな粉クリーム、ずんだ、パンデミック、醤油クリーム、抹茶ソース、ミミミーミ、フルーツクリーム、フルーツソース、ピーナッツクリーム、フルーツジャム、パンルット、シナモンシュガー、ポッピングキャンディー、メイプル、シラカバ蜜、蜂蜜、ブラックチョコソース、ミルクチョコソース、ホワイトチョコソース、蜂蜜チョコソース、パラメルソース、キャラメルソース、トリックフラワーソース、パンプキンソース、キャロットソース、アイスクリーム、シナモンアップル、チョコチップ、ドライフルーツ、クルミ、アーモンド・・・・・・あ。珈琲ソースと紅茶のクリームがありませんでした!!」
魔族はそう言って、簡易キッチンの方に戻っていった。
あと、本当に申し訳ない。
解読不能の呪文にしか聞こえない。
「ふたたびお待たせしました!! では食べましょう!!」
これ、自分も食べないといけないのだろうが。そう本気で不安になった。
お腹は空いていない。むしろ、食欲がない。
それでも、用意してくれたからお辞儀という形でお礼は伝えた。
「いえいえ。私もお腹空いているので!!」
魔神は嬉しそうに言いながら、1番上の巨大ホットケーキを手に取った。
「プチホットケーキの良いところは、片手で食べられるお手軽さですよね~」
生クリームに粒あん、さらに抹茶ソースにアイスを乗せて、「あーん」と幸せそうに言いながらぱくりと食べた。
小さな一口に見えたが、パンケーキは半分ほど消えていた。
どうしたらそうなると疑問を抱いたが、魔族だからそんなものかと察した。そう思うことにした。
プチという概念は、この魔族の基準だったらしい。
ここまでもてなされてから、誰なのかと尋ねていいのかわからなくなってしまった。
「ところで」
ホットケーキの塔が半分を下回った時に、219枚目のホットケーキにトッピングを乗せながら魔族が切り出した。
「雪見大福買っている間に南の魔神さんに連絡しましたら・・・・・・めっちゃ驚いてましたけど、なぜでしょうか?」
南の大陸にいるはずの自分が、北の大陸にいれば当然の反応だ。
事情を説明しようと、メモ帳とペンを取り出して文字を書いていく。
丁寧に説明していたら時間が足りないので、簡素に伝えた。
簡素と言っても、説明を始めたら、予想以上に時間がかかってしまった。
「・・・・・・なるほど。事情はわかりました!」
自分が伝えている間に、224枚目を完食していた。
「それとは別に、声帯がないって不便すぎますね! 正直、相手している私がしんどいです!」
はっきりと言った。しかも、真顔である。
自分も不便だと思っている。南の大陸の魔族達にも同じことを言われた。
人間にとって言いにくいことでも、踏み込んでいくのが魔族であり、慣れた。
「黒いリボンに刻んだ術式でも対象外だったのですね! 南の魔神さん風に言えば、良い勉強になりました!」
225枚目のホットケーキに手を伸ばす魔族に、自分が制止した。
今、聞き捨てならない言葉があったからだ。
黒いリボンに刻んだ術式。
思い浮かぶのは、南の魔神が髪留めとして自分に結んだあのリボンだ。
目が覚めたときになくなっていたから、あの1件で朽ちていく肉と共に落ちたのだと思った。
あのリボンになにか魔法がかけられていたのなら、意識を手放す前に聞こえたあのほどけた音はそれになる。
是が非でも話を聞かないと。自分は焦る気持ちで手が震えたが筆談で尋ねた。
あの1件で、自分は声帯を失った。
雪の上に落ちた声帯は自分の体から離れた状態だったからか、首は他の部分と同じように治っても、擦れた音すら出なくなっていた。
筆談は出なくなった声の変わりの手段だ。
質問をしても、魔族はトッピングを乗せるのに夢中でこちらを見てくれない。
それでも諦めずに、メモ帳を開いたまま見せ続ける。メモ帳を叩いてみたりもしたが、全然気づいてくれなかった。
ようやくこちらを見て、メモ帳にも気付いてくれた。
「・・・・・・・・・・・・。んー? ああ! わかりにくかったんですね!!」
頬張った分を胃に落としてから、魔族は勝手に解釈した。
魔族に胃があるかはわからないが、狼の姿の分身体は魔物を食べていたから、似たような器官はあるのだろう。
「あのリボンは、身につけた対象と攻撃してきた相手の状態を交換する魔法を施していました。交換や置換の魔法が得意なのでその応用です!」
魔族はそう言って残りを頬張った。右手にチョコソースの容器を、左手にアーモンドが入った容器を持った。
素材は同じでも大きさや形が違う容器、さらには液体と固体と全く違う。けれど、自分の目の前で、右手に持つ容器の中にアーモンドが、左手に持つ容器の中にチョコソースが、瞬きの間に入れ替わっていた。
持っていた容器を置き、生クリームを掬う木製のスプーンを掴んだ。そのスプーンも瞬きの間に木彫りの可愛らしい猫の人形に変わった。これは先程のスプーンだと示唆するように、頭の上に生クリームがついていた。帽子を被っているかのように見えた。
純粋に、尊敬にまで達する魔法だ。変わっていく行程がない分、現象として魔法を扱う魔族の凄さを再認識してしまった。
交換では、どれを対象にするかの基準や予備動作がない。触れていた容器が交換したのではないから触れることは必要条件ではない。
これが規模関係なく使えるなら、毒殺だって簡単に行えてしまう。肉体を持つ生物なら、臓器と石を交換することだって可能だろう。
置換も同じだ。素材そのものに変化はない。だが、どのような形にするかを選ぶのはこの魔族にしかわからない。今は猫の形だったが、これが凶器だったら、形が変わるまでわからないままだ。鎚かと思って身構えていても、槍のように先端が鋭い凶器に切り替えることも可能だ。
魔神や眷族の魔法の使い方も人間ではありえない凄さがあるが、それとはまた違う意味がそこにあった。
使い方次第で、人間や魔族を簡単に殺せる。
持てる力の底知れ無さ。本物の怪物。それが自分の感想だ。
「これは序の口です。自分の吐息を、別の魔族が扱うブレスという吐息攻撃に交換することだってできてしまうのですよ!!」
もうやりたい放題である。
南の魔神の拠点にいる下級や中級の魔族のように感じたが、彼らは上級魔族より技術や能力が発展中もあって、まだ対応することが出来た。
こんな上級の魔族が好き勝手に暴れたら、止めるのも大変だ。
「んん~!! アルゴンスペシャル美味しいです!! 次はドラバーストスペシャルにしましょう!!」
いつの間に乗せたと思うほど、全てのトッピングを乗せたホットケーキを頬張っていた。
「・・・・・・・・・・・・。で、黒いリボンは南の魔神さんから頼まれて作ったんですよ。「俺がそれやろうとすると怪しまれるから」とか「発動までは気付かれないようにするのも施しておいて欲しいとか」と、なんかわかんないこと言っていました。まぁ。報酬のお菓子貰えれば別にいいので理由は聞いていません!!」
脳天気というより、本当に報酬以外に興味が無い。そんな雰囲気を感じた。
「対象は、黒いリボンを付けている存在と解く前に攻撃として触れた存在ですね」
魔族が226枚目のホットケーキを手にして、カスタードをたっぷりと盛っていく。
「器という表面を交換する程度を設定していましたので、まさか君みたいな中途半端な存在に使うとは思っていませんでした。戻ってきた南の魔神さんは慌てて、君の本当の臓器持ってきて接合始めますし、その後に眷族の皆さんと言い合いを始めますし、すごく騒がしかったですよ!! たくさん暴れて疲れていたので、お菓子作って貰おうとした私はとばっちりです!!」
魔族は怒っていると言うかのように両の頬を膨らませながら、先程中身を交換したアーモンドが入った容器を持った。
1瞬で中身が空っぽになり、アーモンドは上から降るかのようにカスタードの上に落ちた。
ホットケーキに塗ったカスタードより上の空気と交換したのかと考えながら、出てきた言葉に驚愕して耳を疑った。
自分の本当の臓器。なら、あの時消えていった臓器は一体何なのか、と。
肉体を持つ生命体の体は複雑だから魔法で補うのは危険。そう魔神は言っていた。あの言葉を信じるなら、自分を生かし続けるために活動していたあれらは……。
そう考えて、わからなくなって、気持ち悪くなっていった。
見ず知らずの相手の臓器を使っていた。死んだ人間の臓器を使っていた。そんな不気味な発想が出てきたからだ。
詳しく聞きたいと思う反面、出てきた真実によっては絶対に後悔すると確信があった。どうすべきかと考える間に、魔族は雪山で起きた大きな雪崩のように愚痴りだした。
「その前から大変だったんですよ!! 南の魔神さんのお菓子食べたいなぁって思っても、南の魔神さん大変そうだったので、南の魔神さんが北の魔神に頼んでいた魔物潰しを引き受ければそっちに派遣したら、すぐに終わってお菓子作ってくれるかなぁて軽い気持ちで思って、北の魔神に直接交渉して王都以外を引き受けたら、他の魔族達も今こそ魔物に逆襲だって勝手に参戦して、あちこちでてんわやんわになりますし、連携取れてなくて無駄に怪我する魔族増えますし、魔族の皆さんは皆さんですぐにこっちに頼ってきますし!! 本当に大変だったんですよ!! 猫姿の南の魔神さんが、魔族の彼らに人海戦術の基礎を教えていなかったら、あの中級の魔族が連絡取れる能力じゃなかったら、目が回って倒れてそのまま消滅するかと思いましたよ!! 君と一緒にいた魔族の彼らにナッツの蜂蜜付けを添えて頼まれたので期限付きで北の魔神の眷族になったらなったらで、即行で北の魔神は消滅してますし、眷族として預かっていた魔力変換機関を返して、時間かけてようやく元の姿に戻った北の魔神はお礼のお菓子無しで当然のように「じゃ、もう一度行うぞ」って言って、こっちが怒った数日後には「頼む。眷族になってくれ」って先日の無礼とお願いのお菓子を忘れて頭下げてきますし、ふざけるなーって怒鳴りたくなりましたよ!!」
この世の全てを恨むかのように、魔族はきっと目をつり上げた。
怒りに任せた早口もあって、お菓子に強い執着がある以外、何言っているのか聞き取れなかった。とても大事なことを言っているのはわかったから、もう1度繰り返して欲しい。
聞き取れなかった自分の愚かさに、思わず頭を抱えてしまった。
「飴と鞭ではなく、飴と飴でないと動かないのが私ですよ!!」
「その飴を用意したのは俺だぁよ」
聞き覚えのある声に、思わず顔を上げた。
「ぎゃー!! その手でぐりぐりだけは止めてくださーい!!」
悲鳴を上げる魔族の背後に、白骨姿の南の魔神が立っていた。
魔神は眼窩の上下中央を持ち上げるほど怒っていた。ごつごつした白骨の手で拳を作り、魔族の左右のこめかみに押したり回したりしていた。
大げさに痛がっているように見えてしまうが、実際に痛いのかもしれない。それは受けている魔族にしかわからないことだ。
「お前がこうやって菓子食っていられるのは、俺が北の魔神に眷族としての仕事を振らないようにしてくれって口添えしてっからだよぉ。頼み方は俺の部下達からのアドバイスだからなぁ」
「痛いです!! あの石頭ならぬ氷頭が、魔神じゃない存在を頼るなんてありえません!!」
「眷族ならではのアドバイスってもんがあるからなぁ」
「止めてください!! 本当に止めてください!! 頭が横から割れちゃいます!! お菓子の神様お願いです!! 愚かなドラゴンは痛いのじゃなくて甘いのがいいです!! 北の魔神を悪く言ったの謝りますから!!」
「ああ? お前が喋りすぎているからこうしているだけだが?」
「ぎにゃー!! 力を加えないでくださいー!!」
「ま。そろそろ教えてくれって思っていた頃だろぉ? これ以上伸ばして変な推測立てるのがお前の癖だし」
この魔神の言葉が、自分に向けられているものだとすぐに気付かなかった。ようやく気付いたら、気まずいという緊張で体が強張った。
「そう身構えるなって。アルバーストのドラゴンにも同席して貰うからよ」
今、南の魔神はなんと言った。
どこにその怪物がいるのかと、自分は周囲を見渡した。
「なんで私まで聞かないといけないのですかー!?」
悲鳴混じりで非難の声を上げたのは、魔神に折檻されている魔族だった。
この魔族が、あの怪物であるアルバーストのドラゴン。
自分の内心でそう確認したら、思考へと繋がる神経が妨げられるように、脳が動かなくなった。
「気まずいからに決まってから」
南の魔神の声は聞こえた。
けれど、自分は目の前にいるアルバーストのドラゴンと呼ばれる魔族の哀れな姿を見て、何かを考えたりできないほど、驚きを超えて放心してしまった。
あの状況から、自分を引っ張り出した小柄な人間の女性の姿をした魔族は、何も迷い無く自分をここに連れてきた。
まるで、ここが自分の実家だと言うかのように。
南の魔神や彼らはいないらしい。
北の大陸に派遣された、南の魔神の眷族達とは会ったことはない。けれど、目の前の魔族が自分を知っているかのように、連続的に話しかけてくる。
派遣された眷族なのだろうか。
ならば、この行動原理はなんなのだろうか。
書斎に到着すると「ああ~。走り疲れました」と言って、纏っていた服装が一瞬で変わった。
北の大陸に不釣り合いな袖無しでたぼったい上衣に、太股部の中央より短く動きやすい下衣の服装。絶対に凍死する格好である。
魔族に体温という概念がないと南の大陸で知ったが、見ているこっちが大丈夫かと不安になってくる。
怠惰感と言っていいのか、抜けすぎていると言っていいのか、なんとも言えないだらしなさを感じた。服装などの見た目にこだわりが強い、南の魔神が口うるさいせいか。南の魔神の拠点では、だらしない見た目の魔族は全くいなかった。
けれど、人間の言葉を話せる魔族はほとんどいない。人間と会話する理由がないが1番の理由だと聞いている。南の大陸では、魔神が人間の言葉を話すことを推奨しており、拠点にいる上級魔族は話せている。魔神が推奨するのは、とても珍しいことらしい。
人間の言葉を話せる魔族であり、南の魔神のことを知っているのなら、南の魔神の眷族という答えしかない。しかし、その答えに納得できない自分がいた。
南の魔神の眷族なのかと尋ねようとするも、それより先に魔族が話をすすめてしまう。
「びっくりしましたよ!! 雪見大福食べに行ったらまさかいるんですよ!!」
「あ。雪見大福を冷凍箱に入れてくるので座っててください」
「紅茶飲みますかー?」
「ちょっと小腹が空いたので簡単なお菓子用意しますねー」
「クリームとメイプルと蜂蜜とフルーツソー・・・・・・面倒なのでそっちに全部持っていきますねー。お盆によいしょ、と」
途中から簡易キッチンの方へ行ってしまい、声だけが飛んできた。
自分は言われたとおりに椅子に座っていた。
この椅子に座って、復讐計画を練ったり、魔神から色々学んだ。それらが、遠い昔のように感じた。
懐かしさに浸っていると、目の前に大きなお盆に置かれたものが上から下に遮り、視覚から阻害してきた。
「おまたせしました!! プチホットケーキの山盛りとトッピング達です!!」
自分の顔より大きい白い皿の上に、その皿と同じ大きさの丸いパンケーキが塔のように積まれていた。厚みはほとんどないから、地層と呼んでもいいかもしれない。
プチの要素は皆無。写真で見るような通常の大きさなんて呼べない。
これは、巨大パンケーキであった。
今は座っているが、椅子から立ち上がってこの食べれる塔を見上げても、天辺が見えないだろう。
「トッピングはこちらから生クリーム、バタークリーム、カスタード、カスタードクリーム、クリームチーズ、ゴルゴンゾーラ、バター、粒あん、こしあん、きな粉、小豆クリーム、きな粉クリーム、ずんだ、パンデミック、醤油クリーム、抹茶ソース、ミミミーミ、フルーツクリーム、フルーツソース、ピーナッツクリーム、フルーツジャム、パンルット、シナモンシュガー、ポッピングキャンディー、メイプル、シラカバ蜜、蜂蜜、ブラックチョコソース、ミルクチョコソース、ホワイトチョコソース、蜂蜜チョコソース、パラメルソース、キャラメルソース、トリックフラワーソース、パンプキンソース、キャロットソース、アイスクリーム、シナモンアップル、チョコチップ、ドライフルーツ、クルミ、アーモンド・・・・・・あ。珈琲ソースと紅茶のクリームがありませんでした!!」
魔族はそう言って、簡易キッチンの方に戻っていった。
あと、本当に申し訳ない。
解読不能の呪文にしか聞こえない。
「ふたたびお待たせしました!! では食べましょう!!」
これ、自分も食べないといけないのだろうが。そう本気で不安になった。
お腹は空いていない。むしろ、食欲がない。
それでも、用意してくれたからお辞儀という形でお礼は伝えた。
「いえいえ。私もお腹空いているので!!」
魔神は嬉しそうに言いながら、1番上の巨大ホットケーキを手に取った。
「プチホットケーキの良いところは、片手で食べられるお手軽さですよね~」
生クリームに粒あん、さらに抹茶ソースにアイスを乗せて、「あーん」と幸せそうに言いながらぱくりと食べた。
小さな一口に見えたが、パンケーキは半分ほど消えていた。
どうしたらそうなると疑問を抱いたが、魔族だからそんなものかと察した。そう思うことにした。
プチという概念は、この魔族の基準だったらしい。
ここまでもてなされてから、誰なのかと尋ねていいのかわからなくなってしまった。
「ところで」
ホットケーキの塔が半分を下回った時に、219枚目のホットケーキにトッピングを乗せながら魔族が切り出した。
「雪見大福買っている間に南の魔神さんに連絡しましたら・・・・・・めっちゃ驚いてましたけど、なぜでしょうか?」
南の大陸にいるはずの自分が、北の大陸にいれば当然の反応だ。
事情を説明しようと、メモ帳とペンを取り出して文字を書いていく。
丁寧に説明していたら時間が足りないので、簡素に伝えた。
簡素と言っても、説明を始めたら、予想以上に時間がかかってしまった。
「・・・・・・なるほど。事情はわかりました!」
自分が伝えている間に、224枚目を完食していた。
「それとは別に、声帯がないって不便すぎますね! 正直、相手している私がしんどいです!」
はっきりと言った。しかも、真顔である。
自分も不便だと思っている。南の大陸の魔族達にも同じことを言われた。
人間にとって言いにくいことでも、踏み込んでいくのが魔族であり、慣れた。
「黒いリボンに刻んだ術式でも対象外だったのですね! 南の魔神さん風に言えば、良い勉強になりました!」
225枚目のホットケーキに手を伸ばす魔族に、自分が制止した。
今、聞き捨てならない言葉があったからだ。
黒いリボンに刻んだ術式。
思い浮かぶのは、南の魔神が髪留めとして自分に結んだあのリボンだ。
目が覚めたときになくなっていたから、あの1件で朽ちていく肉と共に落ちたのだと思った。
あのリボンになにか魔法がかけられていたのなら、意識を手放す前に聞こえたあのほどけた音はそれになる。
是が非でも話を聞かないと。自分は焦る気持ちで手が震えたが筆談で尋ねた。
あの1件で、自分は声帯を失った。
雪の上に落ちた声帯は自分の体から離れた状態だったからか、首は他の部分と同じように治っても、擦れた音すら出なくなっていた。
筆談は出なくなった声の変わりの手段だ。
質問をしても、魔族はトッピングを乗せるのに夢中でこちらを見てくれない。
それでも諦めずに、メモ帳を開いたまま見せ続ける。メモ帳を叩いてみたりもしたが、全然気づいてくれなかった。
ようやくこちらを見て、メモ帳にも気付いてくれた。
「・・・・・・・・・・・・。んー? ああ! わかりにくかったんですね!!」
頬張った分を胃に落としてから、魔族は勝手に解釈した。
魔族に胃があるかはわからないが、狼の姿の分身体は魔物を食べていたから、似たような器官はあるのだろう。
「あのリボンは、身につけた対象と攻撃してきた相手の状態を交換する魔法を施していました。交換や置換の魔法が得意なのでその応用です!」
魔族はそう言って残りを頬張った。右手にチョコソースの容器を、左手にアーモンドが入った容器を持った。
素材は同じでも大きさや形が違う容器、さらには液体と固体と全く違う。けれど、自分の目の前で、右手に持つ容器の中にアーモンドが、左手に持つ容器の中にチョコソースが、瞬きの間に入れ替わっていた。
持っていた容器を置き、生クリームを掬う木製のスプーンを掴んだ。そのスプーンも瞬きの間に木彫りの可愛らしい猫の人形に変わった。これは先程のスプーンだと示唆するように、頭の上に生クリームがついていた。帽子を被っているかのように見えた。
純粋に、尊敬にまで達する魔法だ。変わっていく行程がない分、現象として魔法を扱う魔族の凄さを再認識してしまった。
交換では、どれを対象にするかの基準や予備動作がない。触れていた容器が交換したのではないから触れることは必要条件ではない。
これが規模関係なく使えるなら、毒殺だって簡単に行えてしまう。肉体を持つ生物なら、臓器と石を交換することだって可能だろう。
置換も同じだ。素材そのものに変化はない。だが、どのような形にするかを選ぶのはこの魔族にしかわからない。今は猫の形だったが、これが凶器だったら、形が変わるまでわからないままだ。鎚かと思って身構えていても、槍のように先端が鋭い凶器に切り替えることも可能だ。
魔神や眷族の魔法の使い方も人間ではありえない凄さがあるが、それとはまた違う意味がそこにあった。
使い方次第で、人間や魔族を簡単に殺せる。
持てる力の底知れ無さ。本物の怪物。それが自分の感想だ。
「これは序の口です。自分の吐息を、別の魔族が扱うブレスという吐息攻撃に交換することだってできてしまうのですよ!!」
もうやりたい放題である。
南の魔神の拠点にいる下級や中級の魔族のように感じたが、彼らは上級魔族より技術や能力が発展中もあって、まだ対応することが出来た。
こんな上級の魔族が好き勝手に暴れたら、止めるのも大変だ。
「んん~!! アルゴンスペシャル美味しいです!! 次はドラバーストスペシャルにしましょう!!」
いつの間に乗せたと思うほど、全てのトッピングを乗せたホットケーキを頬張っていた。
「・・・・・・・・・・・・。で、黒いリボンは南の魔神さんから頼まれて作ったんですよ。「俺がそれやろうとすると怪しまれるから」とか「発動までは気付かれないようにするのも施しておいて欲しいとか」と、なんかわかんないこと言っていました。まぁ。報酬のお菓子貰えれば別にいいので理由は聞いていません!!」
脳天気というより、本当に報酬以外に興味が無い。そんな雰囲気を感じた。
「対象は、黒いリボンを付けている存在と解く前に攻撃として触れた存在ですね」
魔族が226枚目のホットケーキを手にして、カスタードをたっぷりと盛っていく。
「器という表面を交換する程度を設定していましたので、まさか君みたいな中途半端な存在に使うとは思っていませんでした。戻ってきた南の魔神さんは慌てて、君の本当の臓器持ってきて接合始めますし、その後に眷族の皆さんと言い合いを始めますし、すごく騒がしかったですよ!! たくさん暴れて疲れていたので、お菓子作って貰おうとした私はとばっちりです!!」
魔族は怒っていると言うかのように両の頬を膨らませながら、先程中身を交換したアーモンドが入った容器を持った。
1瞬で中身が空っぽになり、アーモンドは上から降るかのようにカスタードの上に落ちた。
ホットケーキに塗ったカスタードより上の空気と交換したのかと考えながら、出てきた言葉に驚愕して耳を疑った。
自分の本当の臓器。なら、あの時消えていった臓器は一体何なのか、と。
肉体を持つ生命体の体は複雑だから魔法で補うのは危険。そう魔神は言っていた。あの言葉を信じるなら、自分を生かし続けるために活動していたあれらは……。
そう考えて、わからなくなって、気持ち悪くなっていった。
見ず知らずの相手の臓器を使っていた。死んだ人間の臓器を使っていた。そんな不気味な発想が出てきたからだ。
詳しく聞きたいと思う反面、出てきた真実によっては絶対に後悔すると確信があった。どうすべきかと考える間に、魔族は雪山で起きた大きな雪崩のように愚痴りだした。
「その前から大変だったんですよ!! 南の魔神さんのお菓子食べたいなぁって思っても、南の魔神さん大変そうだったので、南の魔神さんが北の魔神に頼んでいた魔物潰しを引き受ければそっちに派遣したら、すぐに終わってお菓子作ってくれるかなぁて軽い気持ちで思って、北の魔神に直接交渉して王都以外を引き受けたら、他の魔族達も今こそ魔物に逆襲だって勝手に参戦して、あちこちでてんわやんわになりますし、連携取れてなくて無駄に怪我する魔族増えますし、魔族の皆さんは皆さんですぐにこっちに頼ってきますし!! 本当に大変だったんですよ!! 猫姿の南の魔神さんが、魔族の彼らに人海戦術の基礎を教えていなかったら、あの中級の魔族が連絡取れる能力じゃなかったら、目が回って倒れてそのまま消滅するかと思いましたよ!! 君と一緒にいた魔族の彼らにナッツの蜂蜜付けを添えて頼まれたので期限付きで北の魔神の眷族になったらなったらで、即行で北の魔神は消滅してますし、眷族として預かっていた魔力変換機関を返して、時間かけてようやく元の姿に戻った北の魔神はお礼のお菓子無しで当然のように「じゃ、もう一度行うぞ」って言って、こっちが怒った数日後には「頼む。眷族になってくれ」って先日の無礼とお願いのお菓子を忘れて頭下げてきますし、ふざけるなーって怒鳴りたくなりましたよ!!」
この世の全てを恨むかのように、魔族はきっと目をつり上げた。
怒りに任せた早口もあって、お菓子に強い執着がある以外、何言っているのか聞き取れなかった。とても大事なことを言っているのはわかったから、もう1度繰り返して欲しい。
聞き取れなかった自分の愚かさに、思わず頭を抱えてしまった。
「飴と鞭ではなく、飴と飴でないと動かないのが私ですよ!!」
「その飴を用意したのは俺だぁよ」
聞き覚えのある声に、思わず顔を上げた。
「ぎゃー!! その手でぐりぐりだけは止めてくださーい!!」
悲鳴を上げる魔族の背後に、白骨姿の南の魔神が立っていた。
魔神は眼窩の上下中央を持ち上げるほど怒っていた。ごつごつした白骨の手で拳を作り、魔族の左右のこめかみに押したり回したりしていた。
大げさに痛がっているように見えてしまうが、実際に痛いのかもしれない。それは受けている魔族にしかわからないことだ。
「お前がこうやって菓子食っていられるのは、俺が北の魔神に眷族としての仕事を振らないようにしてくれって口添えしてっからだよぉ。頼み方は俺の部下達からのアドバイスだからなぁ」
「痛いです!! あの石頭ならぬ氷頭が、魔神じゃない存在を頼るなんてありえません!!」
「眷族ならではのアドバイスってもんがあるからなぁ」
「止めてください!! 本当に止めてください!! 頭が横から割れちゃいます!! お菓子の神様お願いです!! 愚かなドラゴンは痛いのじゃなくて甘いのがいいです!! 北の魔神を悪く言ったの謝りますから!!」
「ああ? お前が喋りすぎているからこうしているだけだが?」
「ぎにゃー!! 力を加えないでくださいー!!」
「ま。そろそろ教えてくれって思っていた頃だろぉ? これ以上伸ばして変な推測立てるのがお前の癖だし」
この魔神の言葉が、自分に向けられているものだとすぐに気付かなかった。ようやく気付いたら、気まずいという緊張で体が強張った。
「そう身構えるなって。アルバーストのドラゴンにも同席して貰うからよ」
今、南の魔神はなんと言った。
どこにその怪物がいるのかと、自分は周囲を見渡した。
「なんで私まで聞かないといけないのですかー!?」
悲鳴混じりで非難の声を上げたのは、魔神に折檻されている魔族だった。
この魔族が、あの怪物であるアルバーストのドラゴン。
自分の内心でそう確認したら、思考へと繋がる神経が妨げられるように、脳が動かなくなった。
「気まずいからに決まってから」
南の魔神の声は聞こえた。
けれど、自分は目の前にいるアルバーストのドラゴンと呼ばれる魔族の哀れな姿を見て、何かを考えたりできないほど、驚きを超えて放心してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる