召喚先は腕の中〜異世界の花嫁〜

クリム

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三章 命の在処

23 僕とスエヒロガリ

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 ジーンはパンツを穿いているのにどうして僕だけ裸なんですか、ジーン。

 テレサさんは僕を椅子に座らせるとしゃがみ込み左足からストッキングを履かせてくれる。

「殿下が描き起こしたものが再現できているか分かりませんが、ガーターストッキングです。腰でストッキングを止めてから、ティーバックの下着を穿きます。ビスチェはレースでカバーしましたが、腹実がいますのであまり締めません」

 やっとパンツ……小さくないですか、ジーン。ジーンはにこにこしながら、小さなパンツの具合を見ている。なんか色んなものがはみ出そうです、ジーンってば。かろうじて性器が隠れるお尻が丸見えのパンツを穿いてから、ビスチェっていう胸とお腹をカバーする下着を付けて少しだけ締められた。それから真っ白のフリルセーラー服に袖を通す。ぷっくり袖だなあ今日は。キュロットもバルーンで、腰のところから幅広リボンがついていてその下にレースが床を掃除していた。

「バッスルトレーンはスエヒロガリの八メートルにしましたが、いかがですか?長すぎますか?」

「構わないよ。ヴェールもしっかり長くていいね。靴は少しヒールがあるけれど大丈夫だね」

 ジーン、ジーン……これって……

「ちょっとしたお祝いだよ。おっと私も服を着ないと」

 ジーンも白い軍服に着替えて僕と手を繋いだ。

 廊下を出ると花が敷き詰められていて僕は踏んでしまったけれど、ジーンがマナでレースが汚れないように少し浮かべてくれる。大広間に行くと、ジーンの家族とラメタル王族の人がいた。

 タークさんがお相撲で優勝した時に渡される優勝トロフィーみたいな物を持っていて、僕はジーンがパールバルト王国をまとめ上げたお祝いにくれるのかなと思っていた。

「アキラくん。アキラくんの結婚式を行いますよ。この銀杯は王族系譜が刻まれたものです。今からこちらの銀杯に二人で触れてください」

 やっぱり結婚式だ……ジーンを見上げるとジーンが片目を閉じてウィンクしてくるから、知っていて黙っていたんだ。

 タークさんが抱っこされながら銀杯を僕とジーンに手渡し、僕が銀杯の取手に触れるとじわりと字が浮かび上がり刻まれる。字が読めない僕には分からないのが残念でたまらない。

「パールバルト王国『世界を調整する寵児』と二つ名を刻まれました。ガルド神が喜んでいます。ガルド神の依代タイタン国のタークの子ジーンの伴侶として認められましたよ」

 ジーンが僕の肩を抱きしめ、ナファさんが何故かガッツポーズをした。

「やっとこれで列車が通ります!ガルドバルドとユグドガルドを繋ぐ列車が!!大地にまで浸透していたマナの歪みがやっと調整されたのです。まさに大陸の架け橋ですよ!」

「しーっ、ナファ。誓いのキスがまだだぜ。末っ子の勇姿を見届けよう」

 レームさんが獣面に人差し指を立ててナファさんを制した。そこでジーンのお母さんが声を出す。

「ではガルド神の許しも出ましたし、誓いの口付けをしてください」

 え、え、えーっ、みんなが見ているのに……。

「だいじょーぶ、だいじょーぶだよー、アキラくーん。獣人族の婚儀礼じゃないからね~。唇にちょんっでいいよー」

 僕の横には何故かイベールさんがいて、大きな耳をぴこぴこ、ぶんぶん尻尾を振っていた。ジーンがイベールさんから僕を隠すようにベールを上げると、唇を合わせて来る。ちょんのはずが舌を入れてきてびっくりした。

「……ひどいです、ジーン」

「はははっ、アキラが綺麗すぎて自分が止まらなかったよ」

 ジーンが上機嫌で驚いた。

「ジーンってばえっちだねえ。はい、ジーンとアキラの指輪。小人族のおじーちゃんから預かってきたよー」

 ジーンがイベールさんから指輪を受け取ると、僕に手渡して

「私の左薬指につけてくれないかな」

と手を伸ばすから僕は慌ててつけると節でつっかえてはまらなくて、結局ジーンが少し直してはめた。

「マナ文字でアキラの名前が入ってるんだよ」

 拍手と頭から花びらがいっぱい降ってくる。

「アキラくん、アキラくんが生きていてくれてほんとーーによかった。もう痛いことも苦しいこともありません。ええ、あってたまるもんですか、僕が保証しますからね、絶対に幸せになりますよ。ーーだから僕の生徒になってください!」

「母上……それ、今言うことですか?」

 ガリウスさんによく似たベクルさんが頭を押さえた。

「はい。勉強したいです。僕にもこちらの言葉の読み書きが出来ますか?」

 タークさんに聞いてみると、満面の笑顔になる。

「ええ、日本語をマスターしている僕らにとってはかなり簡単ですよ。では、今日から僕はアキラくんの先生であり、お義母さんです。学校ではターク先生と呼んでください」

「はいっ、ええと……お、お義母さん……」

 少し恥ずかしいです、ジーン。

「少しぎこちないですねぇ。もう一度どうぞ」

「お義母さん」

 ジーンのお母さんが近づいてきた。そしてジーンに抱っこされると、ジーンの腕の中のタークさんに頭を撫でられて僕は喉が詰まるような感じがする。前にも何度も撫でてくれた小さくて温かい手。

「はい、アキラくん、いえ、アキラ」

 ジーンのお母さんの声が優しくて胸が締め付けられる。まさかもう一度『おかあさん』と呼ぶ人ができるなんて思ってもいなかった僕は再び呼んだ。

「お義母さん……おかあ……」

 我慢できなくなって泣き出してしまう。

「おかあさぁぁん……おかあさぁぁぁん……っ」

 タークさん……お義母さんは僕を抱きしめて頭を抱きしめてくれた。

「本当によく頑張りましたね、アキラくん。ねえ、アキラ、これからはあなたの本当のお母さんの分まで僕が甘やかしちゃいますよ。覚悟していてくださいね」

 涙が止まらなくて止まらなくて、ジーンがもう片方の腕を伸ばして抱きしめてくれた。   

 ジーンとお義母さんは僕の涙が止まるまで優しく抱きしめてくれて、その周りで僕の大家族が見守っていてくれる。

 その涙がなんなのか僕には全くわからなくてでも泣き切ったら、なんとなく世界が明るくてジーンにしがみついた。

 ジーンはお義母さんを差し伸べられたガリウス様の手の中に降ろすと、僕の肩を引き寄せて抱き上げる。

「母上。アキラの腹実については明日聞きます」
 
 大広間から出て行くジーンと僕に、

「おめでとう、アキラ!」

とお義母さんが大声を掛けてくれた。
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