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邂逅。ー雪乃
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………………気まずい、わね…………。
私―白峰 雪乃は、レモンティーに口をつけながら、対面にいる彼女―墨森 望乃夏を観察する。
思い出すのは入学前に荷物を持って寮に引っ越してきた時。墨森さんは一足先に着いて先にこの部屋にいた。その時のことは、今でもよく覚えてる。
『…………あなたが、私のルームメイト…………?』
『ええ…………そうよ』
『そう………………これから、よろしく』
………………何だか、会話が続かないわね…………まぁ、私の性格もあるんでしょうけど。とにかく、私は形式的な挨拶を手早く済ませて早く荷物を片付けたかったからそれ以上は何も話さなかったけど、あの時もっと話してれば…………なんて後悔が、今でも時々私を苛む。
…………話を戻すと、あの後、背中合わせにふたつ並んだ机の、何も置いていない方にバックの中から身の回りのものを取り出して置いていると、私の手が小さなボール箱に触れる。あら、見つからないと思っていたらこんな所に埋まってたのね。
そういえば…………と後ろを振り返ると、給湯室の電気ポットが目に入る。よかった、高等部の寮にも給湯室はあるのね。ちょうどティーカップも見つかったので、私はボール箱―リ〇トンのレモンティーのティーバッグ―を持って給湯室に入ると、思わぬことに先客がいた。
「あっ………………」
「あら………………」
気になる彼女が、ポットを持ってティーカップにお湯を注いでいた。
「その箱………………あなたも、紅茶、飲む、の?」
そう問いかける彼女の傍らには、ちょっと高そうなアールグレイの箱。
「…………ええ。専らレモンティーだけど」
「…………そう、なんだ。………………お湯、使う?」
「…………使わせて、もらうわ」
彼女からポットを受け取って、カップを温める。…………こんなもんかしらね、とお湯を捨てて、今度はティーバッグと一緒にお湯を注ぐ。そしてソーサーで蓋をして蒸らして…………そろそろね。
ソーサーを外すと、仄かにレモンの香りが漂う。まあまあ、ね。
少しの間香りを楽しむ私の横から、スティックシュガーが差し出される。
「………………いる? 前の住人の残り物だけど」
「…………貰おうかしら」
前の持ち主が置いていったもの、という所で不安にはなったけど。
「なら…………あっちで、一緒に、飲まない?」
指さした方向を見ると、机とは別に小さなテーブルが置いてあった。私が小さく頷くと、彼女は何も言わずにそちらに歩いていく。…………小脇にミルクとお菓子を抱えながら。
「ん」
私が床に座ると、テーブルの反対側に座った彼女がスティックシュガーといくつかのお菓子を渡してくる。
「………………ありがと」
シュガーを溶かして一口。甘みと酸っぱさが互いに自己主張して、不思議な感じ。向かい合う彼女も、ミルクと砂糖を溶かしこんで一口一口飲んでいた。と、急にその手が止まって、
「………………ごめん。まだ、自己紹介、してなかった。私…………墨森 望乃夏」
…………いや、遅すぎよ。
「私は白峰 雪乃」
簡潔にそれだけを伝える。…………どうせ3年だけの他人だし、それだけで充分、だなんてこの時は思ってて。
「…………よろしく」
それだけ言うと、お互いにまたティーカップの中身に口を付け始めた。
これが、私たちの『始まり』だった。
そんなことを思い出しながら、目の前の墨森さんを眺める。…………あの時、もっとよく話してれば―紅茶という共通の趣味もあるんだし―今頃は、もっと仲良くなれてたかもしれない………………なんであの時、いや、あの時だけじゃない、今までいつも。なんであんな素っ気ない答えばっかりだったんだろう………………。
そんな私を、いつの間にか墨森さんが眺めていた。
「………………どう、したの?」
「…………何でも、ないわ」
………………これじゃあ当分、仲良くなれそうにないわね…………。
私―白峰 雪乃は、レモンティーに口をつけながら、対面にいる彼女―墨森 望乃夏を観察する。
思い出すのは入学前に荷物を持って寮に引っ越してきた時。墨森さんは一足先に着いて先にこの部屋にいた。その時のことは、今でもよく覚えてる。
『…………あなたが、私のルームメイト…………?』
『ええ…………そうよ』
『そう………………これから、よろしく』
………………何だか、会話が続かないわね…………まぁ、私の性格もあるんでしょうけど。とにかく、私は形式的な挨拶を手早く済ませて早く荷物を片付けたかったからそれ以上は何も話さなかったけど、あの時もっと話してれば…………なんて後悔が、今でも時々私を苛む。
…………話を戻すと、あの後、背中合わせにふたつ並んだ机の、何も置いていない方にバックの中から身の回りのものを取り出して置いていると、私の手が小さなボール箱に触れる。あら、見つからないと思っていたらこんな所に埋まってたのね。
そういえば…………と後ろを振り返ると、給湯室の電気ポットが目に入る。よかった、高等部の寮にも給湯室はあるのね。ちょうどティーカップも見つかったので、私はボール箱―リ〇トンのレモンティーのティーバッグ―を持って給湯室に入ると、思わぬことに先客がいた。
「あっ………………」
「あら………………」
気になる彼女が、ポットを持ってティーカップにお湯を注いでいた。
「その箱………………あなたも、紅茶、飲む、の?」
そう問いかける彼女の傍らには、ちょっと高そうなアールグレイの箱。
「…………ええ。専らレモンティーだけど」
「…………そう、なんだ。………………お湯、使う?」
「…………使わせて、もらうわ」
彼女からポットを受け取って、カップを温める。…………こんなもんかしらね、とお湯を捨てて、今度はティーバッグと一緒にお湯を注ぐ。そしてソーサーで蓋をして蒸らして…………そろそろね。
ソーサーを外すと、仄かにレモンの香りが漂う。まあまあ、ね。
少しの間香りを楽しむ私の横から、スティックシュガーが差し出される。
「………………いる? 前の住人の残り物だけど」
「…………貰おうかしら」
前の持ち主が置いていったもの、という所で不安にはなったけど。
「なら…………あっちで、一緒に、飲まない?」
指さした方向を見ると、机とは別に小さなテーブルが置いてあった。私が小さく頷くと、彼女は何も言わずにそちらに歩いていく。…………小脇にミルクとお菓子を抱えながら。
「ん」
私が床に座ると、テーブルの反対側に座った彼女がスティックシュガーといくつかのお菓子を渡してくる。
「………………ありがと」
シュガーを溶かして一口。甘みと酸っぱさが互いに自己主張して、不思議な感じ。向かい合う彼女も、ミルクと砂糖を溶かしこんで一口一口飲んでいた。と、急にその手が止まって、
「………………ごめん。まだ、自己紹介、してなかった。私…………墨森 望乃夏」
…………いや、遅すぎよ。
「私は白峰 雪乃」
簡潔にそれだけを伝える。…………どうせ3年だけの他人だし、それだけで充分、だなんてこの時は思ってて。
「…………よろしく」
それだけ言うと、お互いにまたティーカップの中身に口を付け始めた。
これが、私たちの『始まり』だった。
そんなことを思い出しながら、目の前の墨森さんを眺める。…………あの時、もっとよく話してれば―紅茶という共通の趣味もあるんだし―今頃は、もっと仲良くなれてたかもしれない………………なんであの時、いや、あの時だけじゃない、今までいつも。なんであんな素っ気ない答えばっかりだったんだろう………………。
そんな私を、いつの間にか墨森さんが眺めていた。
「………………どう、したの?」
「…………何でも、ないわ」
………………これじゃあ当分、仲良くなれそうにないわね…………。
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