82 / 360
第2章 2 男として、俺は先にいくよ
どんだけ好きなんだよ
しおりを挟む
すぐに飛び起きて、ミライから離れる。
親指は真っ赤に染まっていた。
血じゃなくてインクで。
ミライが俺の指を押しつけていたのは、おっぱいじゃなくて朱肉だった。
「なにって」
ミライは俺の態度の急変の意味がわかっていないのか、呆然としている。
「借金借用書に本人印を」
「だからなにやってんだよ!」
ミライの横を見ると、すでに何十枚と紙が積まれていた。
失明中の十分間、ずっとやられてたんだからそりゃそうだよね。
他人に借金を背負わせるなんて、『人がゴミのよう』じゃなくて『ゴミのような人』じゃん。
「勝手に借金させるとか正気の沙汰じゃねぇぞ! 葬式にだけきて遺産をむさぼる親族よりたち悪いからな!」
「それは違います!」
ミライにきっぱりと否定される。
いや……違う要素がなにかあった?
「借金借用書だけじゃなく、スイン水の契約書もあります!」
「ミライはどんだけスイン水好きなんだよ!」
「でも誠道さんは言いました! 好きなようにしてくださいと! 非常に情けない言葉で!」
「それについては思い出さないで!」
もはや黒歴史だから!
あの情けなさは、俺の勘違いが生んだ化け物だから。
「どうしてですか? ひとつになりたいって、一緒になりたいって、誠道さんだって言ってたじゃないですか! ひどいです。私を弄ぶだけ弄んで」
「勘違いしてたからだよ! いや勘違いさせるようなことをお前がしてたからだよ!」
「もしかして、こんなことしなくても、そもそも借金は二人のものって、そういうことですか?」
「都合のいい解釈しすぎだろ」
「でも、まだこんなにあるんですよ?」
ミライが持ってきていた鞄の中身を見せつけてくる。
そこにはまだまだびっしりと紙が詰まっていた。
「俺にどんだけ借金させるつもりだったんだよ!」
そんじょそこらの闇金会社よりヤバいことしてるよこのメイド。
「お願いします。私は、誠道さんと同じになりたいのです」
ミライが目に涙を浮かべて、俺に縋りつくようにして懇願してくる。
「私はすべてを共有したいのです。一緒がいいのです。ですから、誠道さんが借金すれば、私たちは借金を背負うもの同士、ずっと一緒です!」
「そんなんで一緒になりたくねぇわ!」
借金という言葉がなければ、ものすごくいいセリフ、恋愛映画のクライマックスばりのシーンなんだけどなぁ。
「誠道さん。お願いします」
「どれだけ頼まれたって無駄だ」
俺は女の涙に負けず、きっぱりと断る。
「そもそも、『私は誠道さんと同じになりたい』から俺に借金させるのっておかしいからな。ミライが借金をすべて返済することが『私は誠道さんと同じになりたい』なんだよ」
俺は借金なんてしてないんだから。
「じゃあ、誠道さんは私と同じになりたがっているんです!」
「俺が借金したがってるみたいに言うんじゃねぇ!」
「え? 違うんですか?」
「ここまでのやり取りをどう解釈したらその結論に至るんだよ!」
「誠道さんもやったじゃないですか。イツモフさん直伝のポジティブシンキングですよ」
「あれはただの希望的観測。実用性皆無なんだよ!」
「もう、ああ言えばこう言う。とにかく! そんなつまらない理論はどうでもいいので、私と同じ額の借金をして、私と同じ気持ちを味わうことで、私とひとつになりましょうよ」
「そのトンデモ理論を理解できる頭を俺は持ってないから、俺とお前が一緒の気持ちになることはないの」
「どうしてわかってくれないんですか。一緒に借金して一緒に気持ちよくなりましょうよ」
「俺も同じ気持ちだよ」
……って、待てよおい!
「一緒に気持ちよくなりたいって、お前ついに借金することに気持ちよさ感じはじめたのかよ! やっぱり今すぐ依存症治しにいかなきゃ!」
「まったくもう、誠道さんのいくじなし」
ミライは胸の前で人差し指同士をツンツンさせている。
「さっきまであんなにやる気に満ちあふれていたのに。いざとなったら躊躇して。私は覚悟していたんですよ」
あのねミライさん。
そうやって恥じらったって、やる気とかいう言葉使われたって、もう全然エロくもなんともないからね。
だって全部借金の話だから。
「借金することを躊躇わなくなったら終わりだから!」
「ちっ!」
この人、今舌打ちしたよ!
ってことは確信犯だよ!
「しょうがないですねぇ。わかりました。じゃあこれまでに押してもらった分で我慢します!」
「全部、破棄だよ!」
「そんな、せめてスイン水だけはぁ」
「だからどんだけスイン水好きなんだよ!」
親指は真っ赤に染まっていた。
血じゃなくてインクで。
ミライが俺の指を押しつけていたのは、おっぱいじゃなくて朱肉だった。
「なにって」
ミライは俺の態度の急変の意味がわかっていないのか、呆然としている。
「借金借用書に本人印を」
「だからなにやってんだよ!」
ミライの横を見ると、すでに何十枚と紙が積まれていた。
失明中の十分間、ずっとやられてたんだからそりゃそうだよね。
他人に借金を背負わせるなんて、『人がゴミのよう』じゃなくて『ゴミのような人』じゃん。
「勝手に借金させるとか正気の沙汰じゃねぇぞ! 葬式にだけきて遺産をむさぼる親族よりたち悪いからな!」
「それは違います!」
ミライにきっぱりと否定される。
いや……違う要素がなにかあった?
「借金借用書だけじゃなく、スイン水の契約書もあります!」
「ミライはどんだけスイン水好きなんだよ!」
「でも誠道さんは言いました! 好きなようにしてくださいと! 非常に情けない言葉で!」
「それについては思い出さないで!」
もはや黒歴史だから!
あの情けなさは、俺の勘違いが生んだ化け物だから。
「どうしてですか? ひとつになりたいって、一緒になりたいって、誠道さんだって言ってたじゃないですか! ひどいです。私を弄ぶだけ弄んで」
「勘違いしてたからだよ! いや勘違いさせるようなことをお前がしてたからだよ!」
「もしかして、こんなことしなくても、そもそも借金は二人のものって、そういうことですか?」
「都合のいい解釈しすぎだろ」
「でも、まだこんなにあるんですよ?」
ミライが持ってきていた鞄の中身を見せつけてくる。
そこにはまだまだびっしりと紙が詰まっていた。
「俺にどんだけ借金させるつもりだったんだよ!」
そんじょそこらの闇金会社よりヤバいことしてるよこのメイド。
「お願いします。私は、誠道さんと同じになりたいのです」
ミライが目に涙を浮かべて、俺に縋りつくようにして懇願してくる。
「私はすべてを共有したいのです。一緒がいいのです。ですから、誠道さんが借金すれば、私たちは借金を背負うもの同士、ずっと一緒です!」
「そんなんで一緒になりたくねぇわ!」
借金という言葉がなければ、ものすごくいいセリフ、恋愛映画のクライマックスばりのシーンなんだけどなぁ。
「誠道さん。お願いします」
「どれだけ頼まれたって無駄だ」
俺は女の涙に負けず、きっぱりと断る。
「そもそも、『私は誠道さんと同じになりたい』から俺に借金させるのっておかしいからな。ミライが借金をすべて返済することが『私は誠道さんと同じになりたい』なんだよ」
俺は借金なんてしてないんだから。
「じゃあ、誠道さんは私と同じになりたがっているんです!」
「俺が借金したがってるみたいに言うんじゃねぇ!」
「え? 違うんですか?」
「ここまでのやり取りをどう解釈したらその結論に至るんだよ!」
「誠道さんもやったじゃないですか。イツモフさん直伝のポジティブシンキングですよ」
「あれはただの希望的観測。実用性皆無なんだよ!」
「もう、ああ言えばこう言う。とにかく! そんなつまらない理論はどうでもいいので、私と同じ額の借金をして、私と同じ気持ちを味わうことで、私とひとつになりましょうよ」
「そのトンデモ理論を理解できる頭を俺は持ってないから、俺とお前が一緒の気持ちになることはないの」
「どうしてわかってくれないんですか。一緒に借金して一緒に気持ちよくなりましょうよ」
「俺も同じ気持ちだよ」
……って、待てよおい!
「一緒に気持ちよくなりたいって、お前ついに借金することに気持ちよさ感じはじめたのかよ! やっぱり今すぐ依存症治しにいかなきゃ!」
「まったくもう、誠道さんのいくじなし」
ミライは胸の前で人差し指同士をツンツンさせている。
「さっきまであんなにやる気に満ちあふれていたのに。いざとなったら躊躇して。私は覚悟していたんですよ」
あのねミライさん。
そうやって恥じらったって、やる気とかいう言葉使われたって、もう全然エロくもなんともないからね。
だって全部借金の話だから。
「借金することを躊躇わなくなったら終わりだから!」
「ちっ!」
この人、今舌打ちしたよ!
ってことは確信犯だよ!
「しょうがないですねぇ。わかりました。じゃあこれまでに押してもらった分で我慢します!」
「全部、破棄だよ!」
「そんな、せめてスイン水だけはぁ」
「だからどんだけスイン水好きなんだよ!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる