うちのメイドがウザかわいい! 転生特典ステータスがチートじゃなくて【新偉人(ニート)】だったので最強の引きこもりスローライフを目指します。

田中ケケ

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第2章 2 男として、俺は先にいくよ

名探偵ミライ!

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 とりあえず、ミライが持ってきていた借金承諾証もスイン水の契約書もすべてビリビリに破り捨てた。

「ああ、私の貯金がぁ」

「借金を貯金って言い出したらもう終わりだからね」

「まったく誠道さんは、人のお金をこんな紙屑にして。少しは物の価値を考えてください」

「ただの紙屑の方が借金承諾書よりましだろうが。しかもその承諾証がお金になったとしても、それはミライのお金じゃなくて、まさに人のお金だから」

「わかりました。今回はそういうことにしてあげます」

「今回だけじゃなくて今後もダメだから」

 きちんと忠告しておいたが、これがミライの心に届いているかは怪しい。

 なんか神妙そうな顔をしてはいるから、もしかしたらこれを機に借金をやめ――

「そんなことは置いといて、誠道さん」

 るわけなかったよ!

 借金をそんなこととしてわきに置かれちゃったよ!

「実は私、さっきのやり取りでずっと気になっていたことがあるのですが、質問してもいいでしょうか?」

 急に真剣モードになったミライ。

 メイド然とした高貴な立ち姿に思わず見惚れる。

 風が、彼女の髪とスカートの裾を優雅に靡かせていた。

「いいけど、なんだよ?」

「たしか誠道さんは、『勘違いしていたからだよ! いやお前が勘違いさせるようなことをしたからだよ』と私を叱責しましたが、私の発言で、どんな勘違いをしていたのですか? なにを思い浮かべていたのですか?」

 誠実な回答を期待します、とその真っすぐな目に書かれている。

 でも。

 えっちなことができると期待してました、なんてバカ正直に言えるわけがない。

「ごめん、さっきはちょっと頭に血が上ってたからあんまり覚えてないんだよ。記憶にございません」

 俺は、『記憶にございません作戦』を発動させる。

 閣僚や総理大臣もこの言葉をよく使っているしね。

 だってこの魔法の言葉を言いさえすれば、過去のあらゆる愚行をなかったことにできるんだもん。

「誠道さん。そんな言いわけは通用しませんよ」

 野党の議員のように追及してくるミライ。

 週刊誌の記者に追われる芸能人もこんな気持ちだったのかなぁ。

「だって私と誠道さんは、先程のやりとりのなかで絶妙な勘違いをしていたわけですから。しかもほんの五分ほど前。確実に記憶に残っているはずです」

「たしかにそうだけど、覚えてないもんは覚えてないから」

「この名探偵ミライ、一度気になったことは寝ても覚めてもそんなに気になりません」

「いや気になれよ。そもそも名探偵なら自分で推理しろよ」

「すみません。そうですよね。訂正します。ちょっと考えます」

 ミライが目を閉じて真剣に考えている。

 そうだ。

 それが成長の第一歩である。

 人に聞く前に自分で考える。

 社会に出たらなによりも大切――――ちょっと待てよ?

 俺も人に聞く前に自分で考えてみよう。

 ミライが今考えているのは、俺たちの間でなぜ勘違いが起きたか、俺がなにを想像していたか、だ。

 そして、その答えはずばり、ミライとえっちなことができると思っていた――

「待て、ミライ」

 これ、当てられた方が困るやつだったよぉ。

「もうそんなに考えなくても。俺が教えてやるから」

 なにかいい嘘を考えて乗り切ろう………とした、がときすでに遅し。

「あっ! わかりました!」

 しまった。

 ミライが結論に至ってしまった。

 これはやばい。

 今後ミライから変態引きこもり呼ばわりされる可能性が……。

「実は私は、メイ探偵はメイ探偵でも迷う方の迷探偵なんです! どうですか! これで自分で考える必要はなくなりました!」

「一休さんもびっくりのとんちだな!」

 はぁ。

 真剣に考えていた俺がバカらしい。

 俺の緊迫感を返せ。

 ……だが、ここで気が抜けてしまったのが運の尽きだった。

「ったく。わかったよ」

 頭の後ろをぼりぼりと手でかきながら、俺はつづける。

「俺が考えていたのはミライとえっちなことを…………あ」

 つい口が滑ってしまった。

 ヤバい。

 本当にヤバい。

「誠道さん」

 ミライは、それはそれは綺麗な笑みを浮かべて。

「聞き間違いかもしれないのでもう一度よろしいですか?」

「いやぁ……ははは、その……」

「もしかして、私でえっちい妄想を繰り広げていたのですか?」

 からかいまくれる対象を見つけたと言わんばかりに、嬉しそうに尋ねてくる。

「まあ、それは……結局勘違いだったわけだし」

「あれ? ミライさんに誠道くん。こんなところでどうしたんですか?」

 ちょうどそのとき、女の人の背後から声がした。

 知り合いの声だったので、助かったぁ思いながら俺は振り返る。
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