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膝枕をかけた戦い
宮田下銀の過去①
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俺は幼いころからテレビアニメの世界に憧れていた。九歳のとき、両親から声優というお仕事があると教えてもらってから、すぐに将来の夢は声優になった。
「明日、書類審査の結果が返ってくるんだぁ。それから一週間後に実技審査があって、それに受かったら最終面接なんだよ」
まだ幼かった俺は、公園のベンチに座って自慢げにこれからの予定を語っていた。
相手は、その公園で知り合った女の子の宮本さん。名前は……なんだったっけ? 宮本ですとしか自己紹介されていなかった気がする。
いつもひとりで遊んでいた彼女に、俺の演技を見てもらおうと声をかけたのだ。俺には独りぼっちの彼女が楽しくなさそうに見え、俺の魅力的な演技を見て笑ってもらいたかった。
自分のことを魅力的というあたり、俺がいかに自信家な子供だったかがうかがえる。
突然話しかけられたからか、宮本さんは最初かなり動揺していた。俺がテレビで見たアニメのキャラクターの真似をしたり、自分で作り出したキャラクターを彼女の前で演じて見せたりしているうちに笑顔になって、
「すごい。宮田下くんってなんにでもなれるんだね」
と喜んでくれた。
その言葉をもらったときのぞくぞくはいまでも覚えている。
それから俺はその公園に行くたびに、宮本さんと一緒に過ごすようになった。
俺がいろんな役になりきっているのを宮本さんが見てくれる。たったひとりだったけど観客がいて、その観客の心を動かすことができている。それがたまらなく嬉しかった。
「すごいね。宮田下くんなら絶対受かるよ」
オーディション応募の報告を受けた宮本さんは、初めて会ったときと同じように笑ってくれた。
「でもいまからすごい緊張してるんだよね。実技審査ってなにやるんだろ?」
俺は有名マンガを原作にしたアニメに出てくる子供キャラクターの公開オーディションに応募している。それを見つけた瞬間、
俺の声優人生の第一歩目はこれだっ!
と思った。すぐに履歴書とボイスサンプルを指定された応募先に送った。
それから三週間がたち、ようやく明日、合否のメールが届く。
「なにが来てもいいようにいまから練習しておく?」
「宮本さんが好きなの言ってよ。なんでもやってあげるよ」
「ほんと? じゃあねぇ」
俺は宮本さんの提案通り、いろんな種類の役を演じて見せた。そのたびに宮本さんは「すごいすごい」と喜んでくれた。
「んじゃ、また明日な」
「うん。また明日」
夕方五時を知らせるチャイムが鳴り始めたので、俺たちは公園を後にした。
その日は夜も眠れなかった。
ようやく声優としてデビューできるんだ!
夢が叶うんだ!
そう思うとドキドキが止まらなかったのだ。
でも、現実は常に残酷である。
メールには『不合格』と書かれていいた。
当然受かる、なんなら最終審査まで当然のように通過すると思っていた俺は、その三文字を信じることができなかった。
ショックというより絶望。
心の中でなにかがぽっきりと折れた音がした。
自分がこれまでやってきたことがすべて否定されたような気がした。
あなたのこれまでの努力は意味がなかったですよ、実際に会ってその演技を見るまでもありません、あなたはその程度の才能ですよ、と宮田下銀という存在を全否定された気がした。
あれほどまでになりたいと思っていたはずだったのに、『不合格』を見た瞬間から、役者になるという気持ちなど初めからなかったかのように、いままで誰かを演じてきた自分がバカらしくなった。
「明日、書類審査の結果が返ってくるんだぁ。それから一週間後に実技審査があって、それに受かったら最終面接なんだよ」
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「すごい。宮田下くんってなんにでもなれるんだね」
と喜んでくれた。
その言葉をもらったときのぞくぞくはいまでも覚えている。
それから俺はその公園に行くたびに、宮本さんと一緒に過ごすようになった。
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「すごいね。宮田下くんなら絶対受かるよ」
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「でもいまからすごい緊張してるんだよね。実技審査ってなにやるんだろ?」
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と思った。すぐに履歴書とボイスサンプルを指定された応募先に送った。
それから三週間がたち、ようやく明日、合否のメールが届く。
「なにが来てもいいようにいまから練習しておく?」
「宮本さんが好きなの言ってよ。なんでもやってあげるよ」
「ほんと? じゃあねぇ」
俺は宮本さんの提案通り、いろんな種類の役を演じて見せた。そのたびに宮本さんは「すごいすごい」と喜んでくれた。
「んじゃ、また明日な」
「うん。また明日」
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その日は夜も眠れなかった。
ようやく声優としてデビューできるんだ!
夢が叶うんだ!
そう思うとドキドキが止まらなかったのだ。
でも、現実は常に残酷である。
メールには『不合格』と書かれていいた。
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