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閑話
カイルとリゼルの姫初め<大切なもの・前>R18
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*コメディ調です。
その日、宮殿ではカイルとリゼル、そして両家の両親らが新しい年を迎えて初めて、顔を合わせて食事会をしていた。
両家の6人は、丸い大きな円卓を囲むように座っている。さぞや和気藹々と話が弾んで・・・と言いたいところだが、旧知の付き合いである皇帝一家と宰相達を囲むテーブルには、カチャカチャとナイフとフォークの奏でる音だけが響いている。
カイルはリゼルの隣に座りリゼルの方にずっと体を向けて、時折その唇についたソースを「ほら、ソースついてるよ」と甘ったるく指で舐めとっている。
カイルの正面にはリゼルの父ダークフォール宰相が、不快感も露わにむっつりとして黙々と食事をしていた。
せっかくの新年に両家が揃う食事会だというのに、この気まずい雰囲気は…、そう思ったカイルの母は、リゼルに話しかけた。
「リゼルちゃん、最近はお妃にも慣れてきて毎日、二人とも楽しそうでよかったわ。私たちも安心しているのよ。二人がこんなに愛し合って信頼し合っているんですものね」
その言葉にダークフォール宰相が、赤い汁の滴る肉にフォークをブスリと突き立てた。
あら、私、何かまずいこと言った・・・?
皇后はダークフォール宰相を恐る恐る見ると、仇敵の肉を噛みちぎっているようなそんな表情に思わず背筋がゾクッとした。
「いえ、皇后様。まだまだです。私はカイル様に信頼されるように努めなければいけないんです」
「そんなことないだろう。私はリゼルのこと、誰より信頼してるよ」
カイルはリゼルの艶やかな漆黒の髪の毛の先をつまんでくるくると自分の指に絡めると、鼻先にもっていてその甘い匂いを吸い込んだ。
ダークフォールが、無言で今度はウズラのローストにナイフをブスリと突き立てる。
「だって、私はまだ、カイル様の大切なものを見せてもらっていないもの」
リゼルが、ちょっと甘えた拗ねたような声で言う。
「え? 私の大切なもの?」
リゼルは、カイルを恨めしそうな目で見上げると、コクリと頷いた。
「カイル様の持っているもので…、硬くて、太くて、長いもの。それをまだ見せてもらっていないから…」
そう言うと、ぽっと顔を赤らめた。
そのリゼルの言葉に、一同が硬直したように動きを止めた。
皇后とリゼルの母は、呑みこもうとしていたスープをぐっと喉に詰まらせ、ダークフォール宰相は、最近、王都で話題の魔術師ミスター・メリックのように、持っていたフォークをぐにゃりと曲げた。
サーブしていた給仕でさえも、動きが固まった。
……私の持ち物で、硬くて太くて長いもの? って、オレのアレのこと?
カイルの股間の息子がピコっと反応した。
「なんじゃ、カイル。お前も朴念仁じゃのう~。リゼルちゃんにまだアレをちゃんと見せていないとは。ぐほっ…!」
一人だけ動揺もせずに平常心で食事をしていた皇帝に、隣に座っていた皇后が夫の脇腹を肘で思い切りつついた。
「いや、リゼ、なにを今さら。毎晩見てるじゃ…うっ…!」
今度は、皇后がカイルの耳をギュムっと引っ張った。
「…実は、フィオナ様から聞いたの。殿方は、みんな硬くて太くて長いものをお持ちなんですって。でも、それを誰にでも見せるわけではないらしいの。家族にも気安く見せたりしないんですって。心を許して、信頼している相手にしか見せないそうなの…。なんでもそれを女性が撫でたり擦ったりすると、とても喜んでもらえるんですって」
あのバカ息子が王女になんてことを…というダークフォール宰相の呪い声のような呟きが聞こえる。
「わしは若い頃は、特に信頼していなくても見せびらかしていたがの。ぐっ…!」
皇后が皇帝の足を靴のヒールで思い切り踏みつけた。
「フィオナ様は、お兄様からとっくにそれを見せてもらって、触らせてもらったんですって。お兄様が持っているのは、びっくりするほど長いそうなの。人によってそれぞれ形が違うものを持っているんですって。フィオナ様はもう見せてもらえたなんて、なんだか羨ましい…」
リゼルは両頬に掌を当てて、羨ましそうにほうっとため息をついた。
その様子にカイルの心に男としての対抗心がムクムクと沸く。
「私のは、長さではランスロットに負けるかもしれないが、硬さと太さには自信がある!うっ…!」
そう断言すると、皇后がカイルの耳をギュムムッッ!とひねり上げ、カイルを睨みつけた。
この場を取り成すように、とでもいうふうに、顎をしゃくってくる。
「あー、こほん。リゼル。今の君のままで、私は十分、リゼルのことを信頼している。他人は気にするな」
そう言われてリゼルはしゅんとなった。
きっと、私はまだまだお妃として頼りないのだろう。
早く申し分のないお妃になって、カイル様の大切な太くて長くて硬いものを見せて欲しい…。
リゼルは、新年早々、悪い占いが出たかのように気持ちが落ち込んだ。
二人で部屋に戻った後も、泣きたいような気持ちにもなるし、カイルに対してちょっと剥(むく)れてしまう。
「リゼ…」
寝室で二人きりになったカイルが、リゼルに口づけしようとすると、ふいっと顔を背けた。
「リゼル…?」
そんな、つらそうな顔をしないで。
私には大切なものを見せてくれないのに。
信用されていないのに。
甘いキスでごまかそうとしないで……
リゼルはまだ信用されていない自分が歯がゆくて、カイルを見上げると涙がこみ上げてきた。
「な、なに? どうしたの?」
カイルが慌てて、リゼルの両頬を挟んで覗き込む。
「やっぱり、私じゃまだダメ? そんなに信頼に足りないの?」
涙声で言うと、カイル様は苦しそうに上を向いて目を瞑り、何事かを考えている。
「わかったよ、リゼル。そんなに見たいなら、今から見せよう。ただし、驚かないこと」
「え…? 本当に…!?」
リゼルが期待に満ちた声をあげる。
「絶対に、驚いてはいけないよ」
リゼルがゴクリと頷くと、カイルは上着をばさりと脱ぎ捨て、身軽なシャツだけになった。
リゼルの勘違いを正さなければ……
結婚後は、毎夜のようにそれをさらけ出しているわけで、改めてそれだけを「見せる」というのは気恥ずかしいが、それでリゼルが納得するのであれば致し方ない。
カイルは、トラウザーズの合わせに手をかけるが、イチモツがすでに硬く張りつめてて、なかなか合わせが外れない。
先ほど期待に上ずった声を上げたリゼルだが、なぜかカイルがトラウザーズに手をかけたのを見て、不審そうに眉根を寄せる。
そんなリゼルを気にも留めずに、カイルは自身の股間のホックと格闘する。
おっ、やっと外れた。
「リゼル、ほら。見せるよ」
トラウザーズから勢い良く、私の硬くて、太くて、長いもの(多分)が天を向いてそそり勃った。
「い、いやぁぁぁ…!カイル様の馬鹿っ……」
リゼルは、どんっ!と思い切りカイルを突き飛ばすと、バタバタと扉を開け放し駆け出して行った。
思い切り突き飛ばされたカイルは、ずり下がったトラウザーズのせいで尻餅をついて倒れこんだ。
「で、殿下一体、何ごとっ……ひっ…!?」
扉の外にいた近衞が慌てて入ってくると、尻餅をついている私と目があった。
そして、私の股間を凝視する。
カイルのアレが剥き出しのまま、未だ勢い良くそそり勃っていた。
「失せろ…!」
腹の底からでるような声で、唸るように言うと、近衞は見てはいけないものを見てしまったかのように、慌てて扉の外に戻った。
これは、まずい…。
まるで、真昼間から欲情するあまり、妻に逃げられた変態夫のようである。
カイルは、急いで身だしなみをきっちり整えると扉の外に向かった。
「お前、所属と名前を言え」
先ほど入ってきた近衞をジロリとみて、自分の最も威厳のある声で問いただした。
「は、第一近衛師団のアンリ・シャルルでございます」
アンリ・シャルルとやらは、自分と目を合わせようとせず、怯えるように目を泳がせた。
それが、私が皇太子だからなのか、変態だと思って逸らしたのか…どうやら後者のような気がしてならない。
「アンリ・シャルル。いい名前だ。お前の顔と名は覚えたぞ。言っておくが、今、先ほど見たことは口外無用だ。よいな?」
「は、はいぃ」
「では今から特別にお前に剣の稽古をつけてやる。中庭に来い」
カイルはアンリ・シャルルを相手に、リゼルへの鬱屈した思いを晴らすかのように午後を思い切り剣の稽古に費やした。
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お読みいただきありがとうございます。
後半は、2/20(月)7時に投稿します。
(らぶらぶなR18モード入ります)
その日、宮殿ではカイルとリゼル、そして両家の両親らが新しい年を迎えて初めて、顔を合わせて食事会をしていた。
両家の6人は、丸い大きな円卓を囲むように座っている。さぞや和気藹々と話が弾んで・・・と言いたいところだが、旧知の付き合いである皇帝一家と宰相達を囲むテーブルには、カチャカチャとナイフとフォークの奏でる音だけが響いている。
カイルはリゼルの隣に座りリゼルの方にずっと体を向けて、時折その唇についたソースを「ほら、ソースついてるよ」と甘ったるく指で舐めとっている。
カイルの正面にはリゼルの父ダークフォール宰相が、不快感も露わにむっつりとして黙々と食事をしていた。
せっかくの新年に両家が揃う食事会だというのに、この気まずい雰囲気は…、そう思ったカイルの母は、リゼルに話しかけた。
「リゼルちゃん、最近はお妃にも慣れてきて毎日、二人とも楽しそうでよかったわ。私たちも安心しているのよ。二人がこんなに愛し合って信頼し合っているんですものね」
その言葉にダークフォール宰相が、赤い汁の滴る肉にフォークをブスリと突き立てた。
あら、私、何かまずいこと言った・・・?
皇后はダークフォール宰相を恐る恐る見ると、仇敵の肉を噛みちぎっているようなそんな表情に思わず背筋がゾクッとした。
「いえ、皇后様。まだまだです。私はカイル様に信頼されるように努めなければいけないんです」
「そんなことないだろう。私はリゼルのこと、誰より信頼してるよ」
カイルはリゼルの艶やかな漆黒の髪の毛の先をつまんでくるくると自分の指に絡めると、鼻先にもっていてその甘い匂いを吸い込んだ。
ダークフォールが、無言で今度はウズラのローストにナイフをブスリと突き立てる。
「だって、私はまだ、カイル様の大切なものを見せてもらっていないもの」
リゼルが、ちょっと甘えた拗ねたような声で言う。
「え? 私の大切なもの?」
リゼルは、カイルを恨めしそうな目で見上げると、コクリと頷いた。
「カイル様の持っているもので…、硬くて、太くて、長いもの。それをまだ見せてもらっていないから…」
そう言うと、ぽっと顔を赤らめた。
そのリゼルの言葉に、一同が硬直したように動きを止めた。
皇后とリゼルの母は、呑みこもうとしていたスープをぐっと喉に詰まらせ、ダークフォール宰相は、最近、王都で話題の魔術師ミスター・メリックのように、持っていたフォークをぐにゃりと曲げた。
サーブしていた給仕でさえも、動きが固まった。
……私の持ち物で、硬くて太くて長いもの? って、オレのアレのこと?
カイルの股間の息子がピコっと反応した。
「なんじゃ、カイル。お前も朴念仁じゃのう~。リゼルちゃんにまだアレをちゃんと見せていないとは。ぐほっ…!」
一人だけ動揺もせずに平常心で食事をしていた皇帝に、隣に座っていた皇后が夫の脇腹を肘で思い切りつついた。
「いや、リゼ、なにを今さら。毎晩見てるじゃ…うっ…!」
今度は、皇后がカイルの耳をギュムっと引っ張った。
「…実は、フィオナ様から聞いたの。殿方は、みんな硬くて太くて長いものをお持ちなんですって。でも、それを誰にでも見せるわけではないらしいの。家族にも気安く見せたりしないんですって。心を許して、信頼している相手にしか見せないそうなの…。なんでもそれを女性が撫でたり擦ったりすると、とても喜んでもらえるんですって」
あのバカ息子が王女になんてことを…というダークフォール宰相の呪い声のような呟きが聞こえる。
「わしは若い頃は、特に信頼していなくても見せびらかしていたがの。ぐっ…!」
皇后が皇帝の足を靴のヒールで思い切り踏みつけた。
「フィオナ様は、お兄様からとっくにそれを見せてもらって、触らせてもらったんですって。お兄様が持っているのは、びっくりするほど長いそうなの。人によってそれぞれ形が違うものを持っているんですって。フィオナ様はもう見せてもらえたなんて、なんだか羨ましい…」
リゼルは両頬に掌を当てて、羨ましそうにほうっとため息をついた。
その様子にカイルの心に男としての対抗心がムクムクと沸く。
「私のは、長さではランスロットに負けるかもしれないが、硬さと太さには自信がある!うっ…!」
そう断言すると、皇后がカイルの耳をギュムムッッ!とひねり上げ、カイルを睨みつけた。
この場を取り成すように、とでもいうふうに、顎をしゃくってくる。
「あー、こほん。リゼル。今の君のままで、私は十分、リゼルのことを信頼している。他人は気にするな」
そう言われてリゼルはしゅんとなった。
きっと、私はまだまだお妃として頼りないのだろう。
早く申し分のないお妃になって、カイル様の大切な太くて長くて硬いものを見せて欲しい…。
リゼルは、新年早々、悪い占いが出たかのように気持ちが落ち込んだ。
二人で部屋に戻った後も、泣きたいような気持ちにもなるし、カイルに対してちょっと剥(むく)れてしまう。
「リゼ…」
寝室で二人きりになったカイルが、リゼルに口づけしようとすると、ふいっと顔を背けた。
「リゼル…?」
そんな、つらそうな顔をしないで。
私には大切なものを見せてくれないのに。
信用されていないのに。
甘いキスでごまかそうとしないで……
リゼルはまだ信用されていない自分が歯がゆくて、カイルを見上げると涙がこみ上げてきた。
「な、なに? どうしたの?」
カイルが慌てて、リゼルの両頬を挟んで覗き込む。
「やっぱり、私じゃまだダメ? そんなに信頼に足りないの?」
涙声で言うと、カイル様は苦しそうに上を向いて目を瞑り、何事かを考えている。
「わかったよ、リゼル。そんなに見たいなら、今から見せよう。ただし、驚かないこと」
「え…? 本当に…!?」
リゼルが期待に満ちた声をあげる。
「絶対に、驚いてはいけないよ」
リゼルがゴクリと頷くと、カイルは上着をばさりと脱ぎ捨て、身軽なシャツだけになった。
リゼルの勘違いを正さなければ……
結婚後は、毎夜のようにそれをさらけ出しているわけで、改めてそれだけを「見せる」というのは気恥ずかしいが、それでリゼルが納得するのであれば致し方ない。
カイルは、トラウザーズの合わせに手をかけるが、イチモツがすでに硬く張りつめてて、なかなか合わせが外れない。
先ほど期待に上ずった声を上げたリゼルだが、なぜかカイルがトラウザーズに手をかけたのを見て、不審そうに眉根を寄せる。
そんなリゼルを気にも留めずに、カイルは自身の股間のホックと格闘する。
おっ、やっと外れた。
「リゼル、ほら。見せるよ」
トラウザーズから勢い良く、私の硬くて、太くて、長いもの(多分)が天を向いてそそり勃った。
「い、いやぁぁぁ…!カイル様の馬鹿っ……」
リゼルは、どんっ!と思い切りカイルを突き飛ばすと、バタバタと扉を開け放し駆け出して行った。
思い切り突き飛ばされたカイルは、ずり下がったトラウザーズのせいで尻餅をついて倒れこんだ。
「で、殿下一体、何ごとっ……ひっ…!?」
扉の外にいた近衞が慌てて入ってくると、尻餅をついている私と目があった。
そして、私の股間を凝視する。
カイルのアレが剥き出しのまま、未だ勢い良くそそり勃っていた。
「失せろ…!」
腹の底からでるような声で、唸るように言うと、近衞は見てはいけないものを見てしまったかのように、慌てて扉の外に戻った。
これは、まずい…。
まるで、真昼間から欲情するあまり、妻に逃げられた変態夫のようである。
カイルは、急いで身だしなみをきっちり整えると扉の外に向かった。
「お前、所属と名前を言え」
先ほど入ってきた近衞をジロリとみて、自分の最も威厳のある声で問いただした。
「は、第一近衛師団のアンリ・シャルルでございます」
アンリ・シャルルとやらは、自分と目を合わせようとせず、怯えるように目を泳がせた。
それが、私が皇太子だからなのか、変態だと思って逸らしたのか…どうやら後者のような気がしてならない。
「アンリ・シャルル。いい名前だ。お前の顔と名は覚えたぞ。言っておくが、今、先ほど見たことは口外無用だ。よいな?」
「は、はいぃ」
「では今から特別にお前に剣の稽古をつけてやる。中庭に来い」
カイルはアンリ・シャルルを相手に、リゼルへの鬱屈した思いを晴らすかのように午後を思い切り剣の稽古に費やした。
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お読みいただきありがとうございます。
後半は、2/20(月)7時に投稿します。
(らぶらぶなR18モード入ります)
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