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蛇
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薄暗がりの、夕も暮れて夜の紫をひたした部屋で蝋を灯す。
小さく頼りのない明かりはユラユラと揺れて小さな輪郭を浮かばせる。
重くのしかかる紫と黒。伸びる壁がどこまでも続いているように見えた。
ああ、そこに蛇が見えた。
小さなとぐろを巻く、大きくなりきれなかった蛇だ。
黒と紫に同化する蛇は弱々しく首をもたげ、静かに目を閉じた。
近くに甘い匂いのする水があったからだ。
蛇は知っていた。甘い匂いのする水はとても苦く、苦しい味しかしない。
蛇は腹が空いていた。飢えを凌ぐために水を飲んだ。
すぐに苦しくなって水を吐き出す。
まだ腹は空く。
苦しくても蛇は水を飲み干した。苦しくても飲み干した。
飲み下してのたうち回った。
紫と黒の中をひたすらもがいて牙をたてた。
水は蛇の腹が空くと思い出したようにかぐわしい匂いを放って蛇をなまめかしく誘惑する。
苦しい水ばかりを飲み下した蛇は大きくなることを辞めてしまった。
獲物を捕らえる術を知らぬ蛇はひたすらそこでとぐろを巻いて、腹が空いたら苦しい水を飲む。
蛇は子供が飲むべき苦汁を飲まずに子供を過ぎた。
反対に子供が飲まなくていい苦汁を舐め続けた。
蛇はいつまでたっても子供だった。
大人を過ぎてもどこまでも子供になり切れず、大人にもなれない子供だった。
ゆらり、と蛇が首をもたげる。甘く苦しい水はもう無かった。
ユラユラと揺れる灯りを蛇は飲み下した。
苦しくのたうち回って、牙をむいて、やがて本当の暗がりがおちた。
蛇は、黒の中に同化した。
小さく頼りのない明かりはユラユラと揺れて小さな輪郭を浮かばせる。
重くのしかかる紫と黒。伸びる壁がどこまでも続いているように見えた。
ああ、そこに蛇が見えた。
小さなとぐろを巻く、大きくなりきれなかった蛇だ。
黒と紫に同化する蛇は弱々しく首をもたげ、静かに目を閉じた。
近くに甘い匂いのする水があったからだ。
蛇は知っていた。甘い匂いのする水はとても苦く、苦しい味しかしない。
蛇は腹が空いていた。飢えを凌ぐために水を飲んだ。
すぐに苦しくなって水を吐き出す。
まだ腹は空く。
苦しくても蛇は水を飲み干した。苦しくても飲み干した。
飲み下してのたうち回った。
紫と黒の中をひたすらもがいて牙をたてた。
水は蛇の腹が空くと思い出したようにかぐわしい匂いを放って蛇をなまめかしく誘惑する。
苦しい水ばかりを飲み下した蛇は大きくなることを辞めてしまった。
獲物を捕らえる術を知らぬ蛇はひたすらそこでとぐろを巻いて、腹が空いたら苦しい水を飲む。
蛇は子供が飲むべき苦汁を飲まずに子供を過ぎた。
反対に子供が飲まなくていい苦汁を舐め続けた。
蛇はいつまでたっても子供だった。
大人を過ぎてもどこまでも子供になり切れず、大人にもなれない子供だった。
ゆらり、と蛇が首をもたげる。甘く苦しい水はもう無かった。
ユラユラと揺れる灯りを蛇は飲み下した。
苦しくのたうち回って、牙をむいて、やがて本当の暗がりがおちた。
蛇は、黒の中に同化した。
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