胃袋

鱗

　やるせなく、そこに転がったムクロのようだった。
　ぽつねんとそこにあって、何を言うでもなくこちらに顔を向ける、何かがいた
　その何かに、名をつけようか、意味を籠めようか
　これに形をつけようか…
　形をつけたが最後、こいつは焦点のあわない目を向けて、闇より深い口を開けて
　吞み込まんと、舌を伸ばすだろう。
　これはそういう「何か」なのだ
　何か不吉な塊か？不幸を知らせる予兆か？
　いや、これは元からあった私の皮だ
　脱ぎ散らかし、剥いで捨てた、私の皮だ
　ぬらぬら光る鱗の皮。黒く淀んだもぬけの皮
　紫と黒の部屋に沈む、私のとぐろなのだ