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第15話~意味深な書類
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「きゃあっ!!」
窓の破片がカルラの身体に降ってくる。
足首と左の二の腕を切ってしまったようだ。
「カルラ!?大丈夫!?何があったのよ?」
激しい音を聞いてマクシルが駆けつけてきた。
ニコラスは何も言わないが、カルラの前に立ち、窓の外を警戒しているようだった。
「………何もいない」
「ニコラスっ!迂闊に近づくのは危ない。俺はここにいるからカルラを連れてボスに知らせてこい!」
「了解」
ニコラスはカルラをひょいと抱き上げ、ダッシュで部屋を出た。
「あっ………マクシルは!?マクシル一人じゃ危ないよっ!」
「………大丈夫。マクシルはオカマだけど、いざとなると誰よりも男らしくて強いんだ」
ニコラスは全速力で走りながら息も乱さずに答えた。
「でも……」
やっぱり、マクシルが心配。
「………………」
ニコラスは呆れるように小さくため息を吐いた。
「……会って数分のオカマによくそんなに感情移入できるね。大体君、ここに来てまだ四日とかでしょ。そんなお人好し、殺しには向いてない」
ニコラスは冷たく言い放った。
カルラは何も言い返せない。
「……この仕事は犠牲が出て当然の仕事なんだ。自分の命なんて紙くず同然だ。その覚悟をみんながしてる。僕はその覚悟を知ってるから置いてきた」
「……わかった」
廊下には誰もいない。みんな任務に行っているようだ。
そんな中全速力で駆けていたニコラスがピタリと止まった。
「…………?」
カルラがどうしたのか聞こうとした瞬間、ニコラスは自分の羽織っていた服をカルラに被せた。
「………これは?」
突然の謎の行動にカルラは戸惑った。
すると、ニコラスはカルラの方を見ないようにしながら、カルラを指さした。
「…………その格好で恥ずかしくないの?」
「え………?」
カルラは視線を下に落とした。上にレベッカから貰ったパーカーは着ているのだが、下にスカートを履いていない。パンツはパーカーが大きいお陰でギリギリ見えてはいないが、かなり大胆な格好をしていた。
「あっ………えっと…………恥ずかしいけど……今はそれどころじゃないから………大丈夫……です」
うう、顔が熱いよぉ……
「……………そう」
ニコラスは再び全速力で走りだした。
それからすぐにボス(今はレベッカ)の部屋に着いた。
起こったことを説明すると、レベッカはすぐに向かうから、ニコラスは先に戻ってマクシルの手伝いをするように言った。
「カルラはここにいてちょうだい。これ、あのスカートと同じものよ。念のため買っておいたの。着たらここで待っててね。電話がきても出なくていいわ」
最低限のことを言い残し、レベッカはすぐさまニコラスとマクシルの元へと向かった。
一人残されたカルラ。
ボスの部屋に来るのは二回目だ。
一回目に来たのはかつて母親だった女が出ていった日。
カルラはその女に対して会いたいとか寂しいとかいう感情を抱いたことはなかった。
名前で呼んでくれたことすらないかもしれない。
しかし、そんなんでよく八年も育ててくれたな、と思う。
もっと物心つく前に殺すでもしてくれれば良かったのに。
そしたら、この人達に会うこともなかったのかな。
そう考えると、ここまで生かしてくれたあの女にほんの少し感謝できるような気がした。
今、何してるかな。
誰かと幸せに暮らしているのだろうか。
だからといって、祝福の気持ちもないし、憎しみもない。
自分の体や心をボロボロにした女だ。
普通は憎むのかもしれないが、カルラはそれですらバカバカしかった。
こんな人に自分の人生の邪魔をされたくない。
カルラは鳥籠に入れられて自由を奪われていた数日前の鳥を見下した。
自分が非力であったために招いた結果。
強くなりたい。
年齢という壁に囚われないで、誰かを守れるようになりたい。
カルラは彼らに出会って、自分がまだ子供であることを嫌というほど思い知らされた。
「………でも、やっぱ子供だもんな」
自分の小さな手を眺めて、ため息をついた。
ふと机の上を見ると、文字がびっしり書いてある書類の中、ほぼ文字が書かれていない書類が一枚だけ混じっていた。
「これって……」
気になって手にとってみると、たった八文字だけが記されていた。
『私を殺して下さい』
宛名は不明。連絡先もわからない。なんだかわからないが、妙に引っかかる。たった八文字なのに、カルラは書類から目を離すことができなかった。
「………誰なんだろう、これ。ただの冷やかしかな」
気になったものの、手がかりがないために何もできない。
あったとしても何もできないが。
カルラはスカートをはいて、書類を眺めながら、レベッカ達の帰りを待っていた。
窓の破片がカルラの身体に降ってくる。
足首と左の二の腕を切ってしまったようだ。
「カルラ!?大丈夫!?何があったのよ?」
激しい音を聞いてマクシルが駆けつけてきた。
ニコラスは何も言わないが、カルラの前に立ち、窓の外を警戒しているようだった。
「………何もいない」
「ニコラスっ!迂闊に近づくのは危ない。俺はここにいるからカルラを連れてボスに知らせてこい!」
「了解」
ニコラスはカルラをひょいと抱き上げ、ダッシュで部屋を出た。
「あっ………マクシルは!?マクシル一人じゃ危ないよっ!」
「………大丈夫。マクシルはオカマだけど、いざとなると誰よりも男らしくて強いんだ」
ニコラスは全速力で走りながら息も乱さずに答えた。
「でも……」
やっぱり、マクシルが心配。
「………………」
ニコラスは呆れるように小さくため息を吐いた。
「……会って数分のオカマによくそんなに感情移入できるね。大体君、ここに来てまだ四日とかでしょ。そんなお人好し、殺しには向いてない」
ニコラスは冷たく言い放った。
カルラは何も言い返せない。
「……この仕事は犠牲が出て当然の仕事なんだ。自分の命なんて紙くず同然だ。その覚悟をみんながしてる。僕はその覚悟を知ってるから置いてきた」
「……わかった」
廊下には誰もいない。みんな任務に行っているようだ。
そんな中全速力で駆けていたニコラスがピタリと止まった。
「…………?」
カルラがどうしたのか聞こうとした瞬間、ニコラスは自分の羽織っていた服をカルラに被せた。
「………これは?」
突然の謎の行動にカルラは戸惑った。
すると、ニコラスはカルラの方を見ないようにしながら、カルラを指さした。
「…………その格好で恥ずかしくないの?」
「え………?」
カルラは視線を下に落とした。上にレベッカから貰ったパーカーは着ているのだが、下にスカートを履いていない。パンツはパーカーが大きいお陰でギリギリ見えてはいないが、かなり大胆な格好をしていた。
「あっ………えっと…………恥ずかしいけど……今はそれどころじゃないから………大丈夫……です」
うう、顔が熱いよぉ……
「……………そう」
ニコラスは再び全速力で走りだした。
それからすぐにボス(今はレベッカ)の部屋に着いた。
起こったことを説明すると、レベッカはすぐに向かうから、ニコラスは先に戻ってマクシルの手伝いをするように言った。
「カルラはここにいてちょうだい。これ、あのスカートと同じものよ。念のため買っておいたの。着たらここで待っててね。電話がきても出なくていいわ」
最低限のことを言い残し、レベッカはすぐさまニコラスとマクシルの元へと向かった。
一人残されたカルラ。
ボスの部屋に来るのは二回目だ。
一回目に来たのはかつて母親だった女が出ていった日。
カルラはその女に対して会いたいとか寂しいとかいう感情を抱いたことはなかった。
名前で呼んでくれたことすらないかもしれない。
しかし、そんなんでよく八年も育ててくれたな、と思う。
もっと物心つく前に殺すでもしてくれれば良かったのに。
そしたら、この人達に会うこともなかったのかな。
そう考えると、ここまで生かしてくれたあの女にほんの少し感謝できるような気がした。
今、何してるかな。
誰かと幸せに暮らしているのだろうか。
だからといって、祝福の気持ちもないし、憎しみもない。
自分の体や心をボロボロにした女だ。
普通は憎むのかもしれないが、カルラはそれですらバカバカしかった。
こんな人に自分の人生の邪魔をされたくない。
カルラは鳥籠に入れられて自由を奪われていた数日前の鳥を見下した。
自分が非力であったために招いた結果。
強くなりたい。
年齢という壁に囚われないで、誰かを守れるようになりたい。
カルラは彼らに出会って、自分がまだ子供であることを嫌というほど思い知らされた。
「………でも、やっぱ子供だもんな」
自分の小さな手を眺めて、ため息をついた。
ふと机の上を見ると、文字がびっしり書いてある書類の中、ほぼ文字が書かれていない書類が一枚だけ混じっていた。
「これって……」
気になって手にとってみると、たった八文字だけが記されていた。
『私を殺して下さい』
宛名は不明。連絡先もわからない。なんだかわからないが、妙に引っかかる。たった八文字なのに、カルラは書類から目を離すことができなかった。
「………誰なんだろう、これ。ただの冷やかしかな」
気になったものの、手がかりがないために何もできない。
あったとしても何もできないが。
カルラはスカートをはいて、書類を眺めながら、レベッカ達の帰りを待っていた。
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