はーとふるクインテット

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第三章 アレな波乱の幕開け

幸野の日常と一人で仕事してみるクロ

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「よーし、また報奨金入ったし武器買いに行こっと」


「こんにちは、おじさん」
「おう幸坊、毎度どうも。すっかりお前も常連だな」
「ふふ、そうだね」

「で、今回はどんなの買ってくんだい」
「うーん。僕最近かなり筋力付いて来たし、重量級の武器買おうかな。流石にドラゴン殺しみたいな大剣は無理だけど」
「ははは、まあ流石にアイツは無理だろうな。俺も実用性ねえから作らねえしよ」
「うん、やっぱおじさんも商売あるもんね」


「あーでも、昔ネタで馬鹿でかい長剣作って店のカウンターの上に飾っておいたら、物好きな武芸者っぽい身なりの兄ちゃんが買ってった事はあるな。材料費かなりかかったんで結構な値段だったのに即決で買ってってよ」
「ふーん。物好きな人もいるもんだね」

「ああ、で、その長剣、どうもアレ気味な鋼使ったせいか意思があるっぽくてな。引き取られた事をすごく喜んでたよ」
「へー、買ってもらえて良かったね」
「そうだな。きっと今もその武芸者と上手くやってるだろ。で、大剣ならこの青龍刀程度なら扱えるだろ」

「あー、確かに良いね。うーんでも鈍器も捨てがたいなー」

「おう、じゃあこのモーニングスターなんてどうだ。この程度なら扱えるだろ」

「あ、それも良いね。撲殺楽しいし。じゃあそれちょうだい」

「おっし。じゃあ悪いがこれ結構な自信作で手間もかかったし、12万円な。高額ですまんな」
「うん、良いよ。僕結構稼いでるし、ユニット活動も順調でかなり貯金あるしさ」

「ああ、それなら良かった。おし、いつもニコニコ現金払いだな。まいど。気を付けて持ってきな」
「ありがとね。大丈夫だよ」


「あ、あとポイント一杯になったな。スタンプカード新しいの作っとくな。何か交換するか?」
「うーん。最近手榴弾の気分じゃ無いし、銃弾はまだ十分あるしなー。どうしようかな」

「ふむ。じゃあこのえげつない暗器なんかどうだ。ちょっと割に合わねえが高額商品買ってくれたしおまけしてやるよ」
「あ、それ良いね。えげつないってどんな感じ?」

「ああ、かすると麻痺と毒と混乱と眠りが同時発動し最悪失禁嘔吐するぞ」
「うわー。ほんとえげつないね。扱い気を付けなきゃ」
「まあ、幸坊毒耐性もかなりあるし大丈夫だろ」
「そうだね。たまに無理のない範囲で毒薬飲んだりして慣れるようにしてるし」

「ああ、鍛錬を欠かさないのは良い事だな。そういやこの暗器の兄弟作、この前お前と同じくらいの闇討ちや暗殺得意そうな子が買ってったんだよな」
「ふーん。その子も仕事人かな。会ってみたいな」

「まあ、お前もう結構有名人だしその内会えるだろ。じゃあ毎度あり」
「うん、また来るね」


そう僕はうきうきとモーニングスターを担ぎ自宅へ置きに行った。(真っ昼間なのに叔父さんと叔母さんがまたアレなプレイをしていたのですぐに自室に戻った)

「うーん。もう武器買いすぎて部屋もいっぱいになって来たな。流石に生活スペース侵害するのは嫌だしなー」

「あ、でもこここういう町だし、アレな貸倉庫とかいくらでもあるしそこ使うか。近所にアレな倉庫に長年監禁されてた闇の深い子がやってるレンタル倉庫あるし。あの子も大変だったけど良い子だよね。今は確かゆういちクンの施設で暮らしてるんだっけ」


「ん、LINE来てる。お夏くんからか。ふーん。佑真くんが最近頑張って慣れたいから、お仕事見学させて欲しいんだ。気弱なのにえらいね」

「じゃあいつでも良いよー、っと。ちょうど新しい武器試したいし、まだ昼過ぎだし何なら今日明日にでも良いし」


そして早速その日の夜。(叔父さん夫婦はアレなプレイが盛り上がりまだやってたので軽く声だけ掛けておいた)


「佑真くん、急な呼び出しなのにごめんね」
「…いえ、俺も急な申し出でしたし。色々アレな物早く見慣れておきたいですし」

「そっか、良い事だと思うよ。あ、僕2年だけど別にタメ口で良いよ。ゆういちクンもそんな感じだしさ」
「あ、そうですか。…えっと、じゃあよろしく」

「うん、よろしくね。じゃあ早速行こうね。ちょっと遠いからタクシー使おう。僕が全額払うから気にしなくて良いよ」
「えっと、流石にそれは悪いんで少し払うよ。俺もそんなに金持ちじゃないから数千円程度で悪いけど」
「そっか、まあ悪いけど君あんまり売れてる方じゃないもんね。じゃあ千円くらいで良いよ」
「うん、ごめんね」


そして僕は配車アプリで佑真くんと合流前に頼んでおいたアレ気味なタクシーに乗り込み、目的地を伝え法定速度を違反しない程度に急いでもらった。(なおこういうアレな国なので緊急事態で政府から許可が出れば最大300キロくらいは許可される。町中では流石に120キロ程度だが)

「…で、今回はどんな相手なの」
「うん。今回は山奥のいかにも特撮とかで使われそうな廃病院なんだけど、表向きは廃業してるけど地下では絶賛稼働中で、毎日毎晩それはもうアレな実験をしまくってるの」
「う、うわあ」

「で、近くを歩いてた罪も無い人をさらったり、この国では珍しいけど貧民層で売り飛ばされたり行方不明になっても誰も気にしないような可哀想な人達を実験台にしてるの。許せないから速攻成敗しようと思ってさ」
「それは酷いね。でも本当に、この国で貧民な人なんているんだ?」

「うん、やっぱたまにはね。ゆういちクンの家庭みたいにクソな事されてて行き場のない子とか、あとほら、戦争で負けた国の捕虜が帰れなくて、そのまま居ついた家の子孫とかさ」
「…ああ、そういう人達いるもんね」


「うん、いくら敗戦国とはいえ人権はあるから最低限の生活は保障されるけどやっぱり相当差別されるし、よっぽど良い家に引き取られたとか天才的な才能があるとかじゃなきゃ、まともな職にありつけないし。可哀想だよね」
「…それは本当可哀想だね。俺の地域はシェルターで厳重に守られてたし、配慮されてそういう人ほとんどいなかったけどさ」
「そうだね。佑真くんはこの国の中では相当恵まれてる方だと思うよ。今生では僕もそうだけどさ」

「…そうだね。俺もここ来て相当怖いし後悔してるけど、それを知れたのは良かったと思う」


「うん、世界を広げるのはすごく良い事だと思うよ。で、そういう現場だからかなりえぐい物見ると思うし、エチケット袋用意しておいた方が良いよ。持って来た?」
「…うん。この前盛大に吐いたから持って来た」
「それが良いよ。最悪タクシーにも付いてるけどさ。僕も初めて前世思い出した時吐きまくったし、慣れてない頃はまた思い出しちゃったりアレな死体見た時はたまに吐く事あったし」

「…ゆ、幸野君でもそうなんだ…」
「まあどうしても人間慣れがあるしね。1年くらいやってたらもう慣れっこになったけど。君もその内慣れるよ」
「…う、うんありがと。…ってか今更だけどタクシー内でこんなアレな話してて良いの」

「ああ、このタクシー会社さんもかなりアレだし平気だよ。全体的にこの国の交通会社アレ気味だし」
「…そ、そう言われればそうだね」


タクシーの運転手が運転には気を付けつつ振り向いて口を挟んだ。

「ああ、私もこう見えてそれなりに場慣れしてるし、君達みたいな仕事人の子よく乗せるしさ。たまにアレなクソ客が乗って来た時には首へし折って葬儀場へ直送するしさ」
「ひ、ひい」

「よし、坊や達。そろそろ着くよ。山奥だし80キロくらい出してるしね」
「は、早いと思ったらそんなに出してたんですか」
「うん、この車特殊改造してあるから本気出せばしばらく飛べるし」
「す、すごい」

「じゃあ着いたよ。仕事終わるまで待ってるから。気を付けて頑張ってね」
「はい、ありがとうございます。ここなら平気だと思うけど運転手さんも一応気を付けてください」
「ああ、君達降りたら電磁シールド張っておくから平気だよ。数時間ならバッテリ―上がる事もないしね」
「ほ、ほんとすごいですねこの車」


そう僕達は運転手さんにお礼を言い、廃病院の門をくぐった。


「じゃあたぶん庭には出ないと思うけど、建物内入ったら何があるか分からないからエチケット袋と護身具は常に用意しといて。今回は何持って来たの?」
「えーと、またサバイバルナイフとペン型スタンガン。あとこの前報奨金少し分けてもらったから、閃光弾も持って来た」
「うん、良いと思うよ。じゃあ僕から絶対離れないでね。…あれ、誰かいる。関係者じゃなさそうだし」

「…あれ、クロじゃん。こんな時間にこんな所でどしたの」


「…うん、たまには一人で仕事してみようと思って」
「あー、良いんじゃないかな。気分転換必要だもんね」
「うん、最近クロ色々試してて偉いね。良いと思うよ」

「…うん。なんか最近、急にそういう事してみたくなって」

「そっか。じゃあクロいるなら力強いよ。たぶん僕一人でも何とかなると思うけど、数時間帰らなかったら救援呼んでもらうよう運転手さんにも頼んでたしさ。ここ結構アレな生物兵器とかいるらしいし」
「うん、僕の力、そういう相手にも効くし任せて。…僕もある意味生物兵器みたいなものだけど」

「…ああ、そうだね。ごめんね」


「…ううん、別に良いよ。…あのさ、ありえないんだけど。…僕てうてうになる前は、もっと嫌な兵器だったような気がするんだ」

「…そっか。でも、そんな事無いと思うよ。クロが軍に引き取られたの、かなり小さい頃だし。いくらアレな国で戦時中とはいえ、そんな子供兵器にするはずが無いよ」
「…うん、きっと気のせいだよ」

「…そうだね。ありがとう。じゃあ行こう」


そう僕達は少ししんみりとして、表向き廃病院の割れたドアを開けた。

「キシャアアアアア」

「あー、やっぱかなりえぐい生物兵器いる。まあこの程度ホラー映画レベルだけどさ。佑真くんも流石にこれなら平気でしょ?」
「…う、うん。かなり気持ち悪いけど」

「…じゃあ僕、狂わせるから」

そうしてクロは綺麗な黒い羽を開き、きらきらと鱗粉を舞わせ、アレな生物兵器たちをあっという間に無力化した。


「よーし。じゃあ僕これで頭ぶっ潰すから。佑真くん、無理そうなら見ない方が良いよ」
「…うん。これはちょっと駄目かもだから見ないでおく」

佑真くんが後ろを向いたのを確認した後、僕は担いでいたモーニングスターの鉄球を倒れてぴくぴくと痙攣している生物兵器たちの頭に振り下ろしていった。


「よし、全部ぶっ潰した。佑真くん終わったよ。なるべく足元は見ないようにしてね」
「う、うん。お疲れ様」
「…じゃあ、行こう」

僕達は強力なライトを手に、廃病院の地下階段を探し下りていった。
やっぱり施錠されていたがモーニングスターでぶっ壊した。


そしていかにもな雰囲気の薄暗い廊下(どんなウィルスや細菌がいるか分からないので佑真くんには持参していた小型ガスマスクをしてもらった)を通り、最奥部のもう嫌な予感しかしない手術室のドアを開けた。

「ウボアアアアアア」
「…おや、我々の秘密の実験室に何の用だい。君達そういう仕事の子かな」
「はーい、そうでーす。お前らみたいな鬼畜外道ぶっ殺しに来ましたー」
「…うん。僕も組織で捕虜の人こういう事されてるの見て来たから、嫌い」

「…ごめんマジで無理。吐く。ボエエエエエエ」

「あーうん、これは仕方ないね。危ないし手術室出て待ってて」
「…お水あげる。落ち着いたら飲んで」

「…あ、ありがとクロ」


ペットボトルを受け取り、吐きまくりながらよろよろと佑真くんは出て行った。

「よし、じゃあさっさと殺ろ。クロ、僕の事は気にしないで狂わせまくって」
「…うん、そうするね」

そうしてクロが強烈に狂わせまくってくれたので(マッドな奴でも狂わせは効く)、あっという間に決着はついた。


「よし終わり。クロありがとね」
「…うん。僕こういうの大嫌いだし、良いよ」

「…奥の保存されてる人達は大丈夫そうだけど、可哀想だけどこの人はもう無理だね」
「…うん、そうだね。僕が苦しくないよう狂わせるから、介錯してあげて」

「…ありがとね、クロ。お前本当に優しいよね」
「…こういう狂わせ、ずっとしたかったから」


クロは優しく鱗粉を舞わせ、その可哀想な人を包んでいった。

「…ああ、なんて綺麗な蝶々なんだ。…でも、どうしてこんなに悲しいんだろう」

「…幸野君、もう良いよ」

「…うん、分かった」

僕はモーニングスターでは何だか可哀想なので、懐に持っていたえげつない暗器で優しく頸動脈を切り裂いてとどめを刺した。

「…可哀想だね。…たぶん顔つきから言って、この人もそういう国の血の人だろうね」
「…そうだね。僕の肌の色と似てるし、僕の生まれた国の人かも。…どこで生まれたのか、僕知らないけど」
「…そっか。…でも、知らない方が良いんだと思う」
「…うん、そんな気がする」

「じゃあ戻ろう。佑真くんもたぶんその辺で待ってるだろうし」


そしてアレな廊下をしばらく歩くと、廊下の長椅子にぐったりと横たわった佑真くんがいた。

「あ、佑真くん終わったよ。かなりきつそうだけど大丈夫?」
「…ごめん、かなり大丈夫じゃない。吐き気止め持ってくれば良かった」
「あー、ごめんね。僕もそれは持って来てないや」

「…じゃあ、僕が気分良くなるよう狂わせるね。…変なものじゃないから大丈夫だよ」

「…あ、ありがとねクロ。お願い」

そうしてまた、クロは綺麗な鱗粉を佑真くんに舞わせていった。

「…どう?」
「あーうん、だいぶ気分良くなって来た。ありがとね。…でも何か、ちょっと悲しいね」

「…ごめん。僕が狂わせると、優しくてもそうなっちゃうみたい」
「…ああ、そうなんだ。まあクロすごく悲しい目に遭ったからそうかもね」
「…うん、仕方ないよ。…あんな事あったらそうなっちゃうよ」

「…そっか」


そうして僕等は廃病院を出て、最後にあの人にそっと手を合わせ、警察に連絡しタクシーへと戻った。

「あ、クロ。僕達タクシーで来たんだけど一緒に乗ってく?今回かなり報奨金出るだろうし、全額僕が払うよ」
「…ううん。それは悪いし、僕なんとなく一人で飛びたい気分だから、飛んで帰る。じゃあおやすみ」

「あー、うん分かった。大丈夫だとは思うけど、もう夜遅いし気を付けてね」
「…うん、じゃあね」

そうクロは綺麗な羽を出し、静かに飛び去っていった。

「…クロさ、本当可哀想だよね」
「…うん。何も悪くないのに、あんな生まれをしてあんな事させられて。…おまけにあんな酷すぎる目に遭って。あいつが何したっていうんだろうね」
「…うん。神様も酷すぎるよね」

「…たぶん、神様もここまでする気は無かったろうけどね」
「…そうだね」

僕達は静かにタクシーに乗り込み、また帰り道を告げた。


「ああ、君達お疲れ様。ずいぶん早く終わったね」
「ええ、頼もしい助っ人がいたんで。…すごく、可哀想な奴なんですけど」
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