碧の幻獣使い

星村直樹

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タマゴ奪還ならず。地下暗河に

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 浄化施設。それは、とても巨大なプラントだった。

「信じられない。これが古代に作られた浄化装置?おれ等の世界より進んでいる」

「騎士殿、分かるのか」

「大体な。これは、コロニープラントだよ。実際は、循環して、作物を育てることができる。これを稼働したら、何万人もの食料を賄えるぞ」

「そんなにか。川がきれいになるだけではないのか」

 実際のリザードマンの話し方は、火の国の人より、更に、がつがつした片言のように聞こえる。でも、教育が行き届いているのか、おれの話についてくる。裸に近い恰好なのは、竜族同様、鱗が丈夫で、あまり汚れを寄せ付けないからだろう。臭いも特にない。

「こういった文明は、今は、ないのか」

「ない。無くても格段に困ったこともない」

「じゃあ聞くが、子供は、みんな元気に大人になるか」

「それは難しい。自然の摂理には逆らえない」

「リザードマンの頑強な体をもってしてもか」

「我らは、人間と違って狩猟民族だ。泳ぎもうまい。野山を走り回って、池に落ちようが、崖から落ちたぐらいでは死なないが、病気には勝てない」

「人は、農耕民族か」

「そうだろう。騎士殿は違うのか」

「おれは、まだ、学生だよ。これから何になるのか決める。今は、ミランダを守らないといけないだけだよ」

「ハハハハ、じゃあ、騎士だ。農民ではない」

「そうなるか」


 この世界に来て、誰と話しても、話しやすいと思った。学校だと、気を使って、突き抜けたり引っ込んだりをしなかったおれだが、ここでは、そういう細かいことは、考えていないように思う。風の妖精のフルーレ女王が、「ヒロは、この世界向きね」と、言っていたが、案外そうかもしれない。



 ミランダは、この先に、火の国の高官がいると確信していた。国の最高シークレットである公文書を閲覧できる人間などそんなにいるはずがない。もし、下級の官僚がこのことを知っているということが、何かのはずみに漏れたりしたら、ヨウメイの失脚に繋がる話になる。姑息で、小物なヨウメイが、そんなことをするはずがない。そう言う失敗を今までしなかったから、国の宰相になったのだ。どれだけ、国の中枢に自分の部下を食いこませていたのだろう。想像するだけで寒気がする。


「ミランダ姫、ここから川を下りますじゃ」

「待って、あそこに人が倒れてる。まさか、ポール?侍従長のポールおじさまなの」
 確かに彼なら、リクシャン王妃の寝室に、火の国の王からの贈り物を届けることができる。そう言って眠り香も焚けるだろう。だけど、王の側近中の側近、それも、母方の叔父にあたる人がこんなことを。

「知れ者が」
 ダイオが、無心で、この男を殺そうとする。

「待って、殺さないで。タマゴをどうしたか聞きださないといけないわ。お願い、介抱してあげて。それに、ポールおじさまも被害者よ。ヨウメイのチャームに毒され続けていたに違いないわ。正気に戻してから、罪を償わせましょう」

「我慢せねばならないのですか」
「残念だ」
 バクバが、ミランダを降ろしながら、あごで、部下に指示する。部下が、気付け薬を飲ませた。

「飲ませましたが起きません」

「無理やり起こすか」

「ちょっと待って、今、火龍王様と、お話します」

 コンピューター。私も、火龍王様と話がしたい
― 了解した。繋いだぞ

「火竜王様、ミランダです」
>なんだ、ミランダも、わしと話せるのか
「その話は、後で。それより、地下の川に着きました。犯人は、侍従長のポールです」

>得心は、行くが、そなたもつらいな。だが、罪が重すぎる

「それは後ほど嘆願させてください。彼を起こします。チャームをかけて、タマゴを具体的にどうしたのか聞き出しましょう。竜王クラスのチャームです。火龍王様にかけていただかないと、ポールの精神が持ちません」

>今回は緊急を要するからやるが、ミランダ、わしに厄介ごとを押し付けようとしていないだろうな

「それも後ほど」

 これは、チャームの上書きである。魔導士ヨウメイのチャームはとても強力で、ヨウメイの呪縛から解けた者は、その喪失感から、心身に異常をきたす。最悪、自分のやったことに耐え切れず自殺してしまうだろう。そこで、火龍王に、ヨウメイより強力なチャームをかけてもらい。そこから治療すれば、違う人生を送れる。

>まあ良い。バクバ、起こせ

「はっ」

 気付け薬でも起きないポールの背中をバクバが、「うん」と、強く押した。

>チャーム、わしに従え。自分の務めを果たすのだ

「はっ、・・か、火龍王様。ここは、・・・・私は、何ということを・・」

>良いから、タマゴをどうしたか話せ
「ポールおじさま。お願い、王子は無事なのですよね」

「ミランダ?どうしてお前がここに、麒麟の森で死んだのではなかったのか」

「それも、知ってらっしゃったのね。そうです。10分近く死んでいましたが、ここにいるヒロと、風の精霊に助けられたのです」

>ポール、王子をどうしたのだ。話せ

「殺していません。そこまで私にやらそうとしたら、私は、錯乱していたことでしょう。タマゴは、丁寧に包んで、藁をいっぱい敷いた樽の中に入れて放流しました。これは、古にも行われていたことだったのです」

>何のことだ

「エルフがいた時代には、王家のお子は、成体するまで、水竜の元、人魚が竜宮で育てていました。人魚がこのことを覚えていれば、王子は、健やかに育ちます。エルフがいなくなった後も、この風習は続いておりました」

>何千年前のことだ。そう自分に言い訳していたのだな

「申し訳ございません。この罪、万死に値します」
 ポールは、見えない火龍王にひれ伏し、額を地面にこすりつけた。

>自分の務めを果たせと申したであろう。今、死ぬな
「火龍王様!」
>むっ、追って沙汰を下す。今は、ヨウメイに組したものを全て刈る。この草刈りに参加せよ

「は、はーー」

>ミランダ、ヒロ。聞いての通りだ。ダイオ、手はず通り、二人をドワーフの町に連れて行ってくれ。バクバ、お前もついて行け。世襲の息子だ。何はばかることがあろう。そこで見聞きしたものをわしにも教えてくれ。ダイオ、良いであろう

「親父」
「良きように」

「では、高速艇で行きますぞ。ミランダ姫、騎士殿こちらに」

「副長、こやつを、火龍王様のもとに。わしは、おやじについて行く」

「隊長、ご武運を」
「騎士殿、ご武運を」
「ミランダ姫様」
 リザードマンたちに見送られて、地下世界に向かう事になった。

 タマゴはすでに、海に向かっていると思われる。舟の中で、ダイオが、これからのことについて話した。ドワーフの町で、海中に入る準備をしろというのだ。大海で、1つの樽を探すというのは、砂漠で、特定の砂粒を探せというぐらい困難なことだ。ダイオは、ドワーフの技術を借りようと言ってきた。長い信頼関係があればこその提案だった。
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