再生の賢者 ~スキルポイント目当てで低級奴隷を漁っていたら、再生の賢者と呼ばれるハメに~

鄭 和食

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第1章 転魂流転~ルーベリス~

第13話 誓約の魔紙

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「改めまして、担当させていただきます、ミレイ・オハラと申します。先ほどは同僚が失礼しました」

 淡い栗毛色の髪を「ふわっ」となびかせて、ミレイさんがお辞儀をする。美人だ。

「……ユキアです。よろしくお願いします」

 何となくフルネームは控えた。姓があるのは貴族だけって設定だったら、面倒になる、と思っていたら……

「登録する際は、姓まで記入してもらいますが、わかりますか?」

「あ、はい、ユキア・ベオルークと申します」

 普通に姓名があるんだね。

「ご丁寧にありがとうございます。当自由組合の登録には銀貨5枚、初心者講習にも銀貨3枚が必要ですが、大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫です」と、俺は銀貨8枚をミレイさんに手渡す。

「ユキアさんはとても礼儀正しい方ですね。もしかして、『初等教育』を受けられたりは?」

「……初等教育??」

 小学校のことか?? こちらの教育事情が分からん、下手に答えられんよな……

「ああ、いえ、お気になさらず。『初等教育』とは中央政府が一昨年から導入した教育制度で帝国民であれば誰でも無償で受けることができるものです。ただ実際はいまだそこまで普及していないというのが実情です。民はその日暮らしの方々がまだまだ多いですので」

 帝国民……ここは『何とか帝国』なのか。しかも中央政府とか、教育制度とか。何となく中世西欧以前をイメージしてたけど、結構、行政機構は発展しているのか?

「その教育制度改革の一環で、総合調整自由組合、すなわち冒険者ギルドでも新人冒険者に『初心者講習』を実施し、冒険者の生存率を高める取り組みをしています」

「そうなんですね。でも、その、”第一号”って……」

 ミレイさんはちょっと困り顔を浮かべてつぶやいた。美人は困り顔もいいな。

「お恥ずかしながらユキアさんが初めてなのです。これは強制ではないですし、冒険者志望の方は、特に地方から出てこられる若い方は、なかなか、まぁ、その……”村の力自慢”的な方が多くて、素直に人の教えを請うということに慣れていない方が多いのです」

 ああ、なるほど。冒険者ってやはり荒くれ者が多いんだろうな。

「その点、ユキアさんは礼儀正しくて、素直に教えを請う姿勢が見られますので、こちらとしても助かります」

「いえ、あの、本当にまったくわからないことだらけなので、こちらこそよろしくお願いします」

 嘘偽りない言葉なので、素直に頭を下げる。顔を上げると、ミレイさんが若干顔を赤らめて「……か、かわいい」とつぶやいたように聞こえた。

「えっ?」

「い、いえ! それではこちらの用紙に必要事項をご記入ください。あ、帝国公用語の読み書きは大丈夫ですか?」

「多分……大丈夫かと」

 用紙を眺める……読める、私にも読めるぞ。『総合調整自由組合』の看板が読めたので、多分大丈夫だろうと思っていた。あとは書けるかだが……書ける、私にも書……まぁ、普通に日本語を書く感覚で書けた。だが、

『〈出身地〉……日本と書いてもな……どうしよう』

 俺が書きあぐねていると、「ああ、そこは村の名前などでいいですよ」と言われた。

「村……その、山の中にある本当に小さな村で、その”山の村”としか呼んでなくて……」

 さ、さすがに怪しすぎるか? 自分の村の名前を知らないって……

「なるほど。いまだ、この帝国西部コードウェル地方では行政区分されていない小さな村はありますからね。ちなみにこのルーベリスから見て、どちらの方角から来られました?」

「……西、だと思います」

「それでは、『コードウェル西部』とだけ、お書きください」

 セーフ、よかった、乗り切った。と思ったら、

『……【職】?? いまから冒険者という職に就くのではないのか? 前職という意味か?』

「ユキアさんは今年で15歳になられたんですよね? エルウェ教神殿で【魂鑑定】は受けられましたか?」

「……【魂鑑定】?? いえ、その、受けてません」

「そうですか。ではその欄は空欄で結構です。15歳の間であれば、誰でも1度は無料で【魂鑑定】を受ける事ができますので、エルウェ教神殿に行くことをお勧めします。もしかしたら【剣士】や【魔法使い】の【職】が得られるかもしれませんよ。といっても、15歳で【職】を得られる人は中々いませんけどね」

 【職】……なるほど。『ジョブ』のことか! そういえば【魂の操作盤ソウルボード】にもその欄があったな。

『職:────』

 よく見ると空欄ですらなく、『────』で消されている。どういう意味だろう、なんか、いい感じはしないな……

 とりあえず、一通りの記載は終わり、ミレイさんに用紙を渡す。

「はい、それではこの『誓約の魔紙』に魔素を流してください。それが難しいようであれば、少し血をもらいますが」

「あの、『誓約の魔紙』というのは……?」

「ああ、すみません、このご記入いただいた用紙のことです。今の真宰輔《しんさいほ》フェイ・コルク様が開発した一種の魔道具です。各人の魔素を登録できるとともに、この用紙に虚偽が記載された場合は淡く光り判別されます。これにより全帝国民に身分証を発行することができるようになった、画期的な発明ですね!」

……マジか。え、大丈夫かな? 出身地以外、嘘を記載したつもりはないが……

「……もしかして、ご存じなかったのですか? もう帝国全土で使用されていますから、特に説明をしなかったのですが」

「……本当に田舎の出なものですから」

「何か修正すべき個所はございますか?」

「いえ、大丈夫です(……なはず)」

 ミレイさんはペンを握る俺の手に自分の手を添えて、優しく微笑んでくれた。

「ユキアさん、誰にだってばれたくないことは一つや二つあります。大丈夫、もし淡く光っても、事情によっては私の胸の内に秘めることもできますから」

…………『惚れてまうやろ!!』 脳内で懐かしいフレーズが流れた。

「あ、ありがとうございます。だ、大丈夫だと思いますので、魔素を流しますね」
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