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二章
16、添い寝
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雨の音が聞こえます。それに紛れて「愛している」という言葉も、聞こえた気がします。
何も見えない中で、何度も達したわたくしは、いつの間にか眠ってしまっていたようです。
目を開くと、座敷の天井が見えました。ゆらゆらと天井できらめいているのは、水面を映した影のようです。
体を起こすと、わたくしは布団の上にいました。
隣では先生が、眠っています。
見れば、わたくしは寝間着を着ていました。衿元も裾も乱れていません。
天井に映っているのは、桶に入った水が明かりに照らされていたものでした。中には手拭いが浸してあります。
「もしかして、体も清めてくださったのかしら」
今も下腹部には先生……いえ、旦那さまに触れられていた甘美な名残があります。
わたくしは手を伸ばして、旦那さまの髪にそっと触れました。
学校では前髪を上げていることが多いせいか、こんな風に前髪が乱れているのを見ることはほとんどありません。
切れ長の目のせいで怖く見えるのでしょうか、と考えていたその時。旦那さまが、ぱちっと目を開きました。
うわっ。どうしましょう。
顔を覗き込んでいたことが、ばれてしまったかもしれません。
粗相をしたと叱られて、また縛られたら困ります。
「起きたのか」
「は、はい」
旦那さまは気だるげに、壁に掛かった時計を見やりました。
「まだ一時だ。夜中だぞ」
「目が覚めてしまって」
さっきまで旦那さまにされていたことが脳裏をよぎり、わたくしは顔が熱くなるのを感じました。
体の奥は、まだ旦那さまの指の感触を覚えています。
それがばれるのを恐れて、思わずわたくしは後ずさりしました。
「逃がさない」
寝起きの乱れた髪と、ひそめた眉に、きっと機嫌が悪いのだろうと覚悟しました。
ですが、旦那さまはわたくしを両腕に閉じ込めたのです。
「翠子さん。あなたがいないと寂しい。いつも傍にいてほしいんだ」
「せ、先生?」
「愛していると、今のあなたになら言っても許されるだろう? あなたは、ずっと俺の心の中で……」
途中で言葉を途切れさせて、先生はそのまま布団に倒れこみました。
わたくしを抱きしめたままで。
耳元で、静かな寝息が聞こえてきます。
わたくし、先生に愛を囁かれたのですか?
雨の音に紛れて聞こえたあの言葉も、空耳ではなかったのでしょうか。
先生、いえ旦那さまの腕に閉じ込められたままで、身動きができません。
わたくしの背中に、旦那さまの胸が呼吸のたびに上下するのが伝わってきます。
肩から腕にまわされた、旦那さまの手。
さっきまでこの手で、この指で素肌に触れられていたのだと思うと、羞恥にぎゅっと目を閉じてしまいました。
けれど、頭の中が真っ白になるような。光が弾けるような感覚が甦るだけでした。
「抱いてほしい」とねだったのは、わたくしです。
旦那さまは、なぜかわたくしに目隠しをなさいましたが。それでも、無理矢理に犯すような酷いことはなさいませんでした。
どうにかなりそうなほどの、甘美な快感。それを与えられている間は、わたくしは実家のこと、父のことを考えずに済みました。
「旦那さまは、本当はお優しいのですか」
返事はありません。
背中に旦那さまの体温を感じている内に、わたくしの瞼も重くなりました。
何も見えない中で、何度も達したわたくしは、いつの間にか眠ってしまっていたようです。
目を開くと、座敷の天井が見えました。ゆらゆらと天井できらめいているのは、水面を映した影のようです。
体を起こすと、わたくしは布団の上にいました。
隣では先生が、眠っています。
見れば、わたくしは寝間着を着ていました。衿元も裾も乱れていません。
天井に映っているのは、桶に入った水が明かりに照らされていたものでした。中には手拭いが浸してあります。
「もしかして、体も清めてくださったのかしら」
今も下腹部には先生……いえ、旦那さまに触れられていた甘美な名残があります。
わたくしは手を伸ばして、旦那さまの髪にそっと触れました。
学校では前髪を上げていることが多いせいか、こんな風に前髪が乱れているのを見ることはほとんどありません。
切れ長の目のせいで怖く見えるのでしょうか、と考えていたその時。旦那さまが、ぱちっと目を開きました。
うわっ。どうしましょう。
顔を覗き込んでいたことが、ばれてしまったかもしれません。
粗相をしたと叱られて、また縛られたら困ります。
「起きたのか」
「は、はい」
旦那さまは気だるげに、壁に掛かった時計を見やりました。
「まだ一時だ。夜中だぞ」
「目が覚めてしまって」
さっきまで旦那さまにされていたことが脳裏をよぎり、わたくしは顔が熱くなるのを感じました。
体の奥は、まだ旦那さまの指の感触を覚えています。
それがばれるのを恐れて、思わずわたくしは後ずさりしました。
「逃がさない」
寝起きの乱れた髪と、ひそめた眉に、きっと機嫌が悪いのだろうと覚悟しました。
ですが、旦那さまはわたくしを両腕に閉じ込めたのです。
「翠子さん。あなたがいないと寂しい。いつも傍にいてほしいんだ」
「せ、先生?」
「愛していると、今のあなたになら言っても許されるだろう? あなたは、ずっと俺の心の中で……」
途中で言葉を途切れさせて、先生はそのまま布団に倒れこみました。
わたくしを抱きしめたままで。
耳元で、静かな寝息が聞こえてきます。
わたくし、先生に愛を囁かれたのですか?
雨の音に紛れて聞こえたあの言葉も、空耳ではなかったのでしょうか。
先生、いえ旦那さまの腕に閉じ込められたままで、身動きができません。
わたくしの背中に、旦那さまの胸が呼吸のたびに上下するのが伝わってきます。
肩から腕にまわされた、旦那さまの手。
さっきまでこの手で、この指で素肌に触れられていたのだと思うと、羞恥にぎゅっと目を閉じてしまいました。
けれど、頭の中が真っ白になるような。光が弾けるような感覚が甦るだけでした。
「抱いてほしい」とねだったのは、わたくしです。
旦那さまは、なぜかわたくしに目隠しをなさいましたが。それでも、無理矢理に犯すような酷いことはなさいませんでした。
どうにかなりそうなほどの、甘美な快感。それを与えられている間は、わたくしは実家のこと、父のことを考えずに済みました。
「旦那さまは、本当はお優しいのですか」
返事はありません。
背中に旦那さまの体温を感じている内に、わたくしの瞼も重くなりました。
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