【第一部】没落令嬢は今宵も甘く調教される

真風月花

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三章

8、甘い蜜

 目隠しをされた状態で、なおも旦那さまの愛撫は続きます。
 何も見えないので、どこに蜜を垂らされるのか分かりません。冷たい蜜が落とされるたびに、わたくしは身をすくませます。

 胸かと思えば、次は鳩尾みぞおちのあたりに。無論、わたくしの肌に滴る蜜は、旦那さまが舐めとります。
 ひんやりとした蜜と、旦那さまの舌の熱っぽさ。それに時おりつままれる乳首の痛み。

「あぁ......ぁ」

 何も見えないから、感覚だけが鋭敏になっています。
 風に揺れる木の葉の音は聞こえるのに。それも旦那さまが体重をかけて、椅子が軋む音に消されてしまい、嫌でも行為に引き戻されます。

「翠子さん……」

 耳元で囁かれたと思うと、その口で耳朶を噛まれました。
 なのに痛みを感じたとたん、胸にじれったいほどの快感を与えられました。

「な、なに……あ……んっ」
羽箒はねぼうきだよ。消しゴムのカスを払うのに使う文具だ」
「どうして、そんな……の」

 何を使用されているのかを聞かされても、それがいつ胸に触れるかは分かりません。
 しかも柔らかな羽箒だけではなく、指でひどく抓まれたり、肌に痕がつきそうなほどにくちづけされたり。

 めくるめく快感と痛みに、わたくしは激しく首を振りました。

「やぁ……あ。やめて……ぇ」

「やめてほしそうには見えないが」
「……だって……こんなの」

 うまく言葉にできません。わたくしは途切れ途切れの息で、旦那さまのシャツの袖を握りました。

 あなたの顔も見えない。それに体の芯が疼いてしまい、自分でもどうしていいか分からないのに。
 
「……足りないのか?」

 問いかけられた言葉に、わたくしはさらに強くシャツを握りしめました。
 それが、わたくし自身も知らない答えだったのかもしれません。

「済まなかった、翠子さん」

 ふいに行為が終わり、先生がわたくしの目隠しを外しました。
 仄暗いはずの部屋なのに。これまで暗闇の中にいたせいか、不思議とまぶしさを感じます。
 ですが、こんな中途半端で投げ出された状態で、まともに動くこともできません。

 椅子から体を起こすこともできないわたくしに、先生は薄地のモスリンの単衣ひとえをかぶせました。

銀司ぎんじ。銀司はいるか?」
「はい、旦那さま」

 濡れ縁側とは反対の、奥の廊下の方から返事が聞こえます。襖は閉じられたままなので、使用人の銀司さんの声はくぐもっていました。

「風呂に入りたい。沸いているか?」
「はい。お清さんに頼まれていましたので」
「ありがとう。今すぐ入る」

 なぜ急にお風呂に? さっきお願いしたときは、聞いてくれなかったのに。
 わたくしは、ぼんやりとした頭で考えました。
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