【第一部】没落令嬢は今宵も甘く調教される

真風月花

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三章

10、続きを

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 お風呂から上がったわたくしは、さっき体にかけてもらったモスリンの単衣をまといました。
 帯はありませんが、目隠しされていた帯紐が一緒に籠に入っています。
 それを結んでいると、旦那さまが脱衣所に現れました。

「ああ、済まない。帯を忘れていたな」

 しっとりと濡れた黒髪に、水滴のついた旦那さまの体は細身ですが筋肉がついています。

 でも旦那さまは裸ですから、わたくしはすぐに背中を向けました。

「なにもそんなに恥ずかしがらなくても。この先、俺の裸なんか見慣れると思うけどな」

 その言葉の意味するところを考えて、思わず両手で顔を押さえました。
 まだ体の奥に、先ほどの熱が残っています。
 お風呂に入って落ち着いたわけでは……ないのです。

「本当はもっとゆっくり翠子さんと風呂に入っていたいのだが。まぁ、じきに夏休みになる。俺も休みが取れるから、どこか温泉か避暑地にでも行くか」
「そんな贅沢なこと」
「ふむ。分かった。温泉も避暑地もどちらも行きたいのだな」
「……それは旦那さまが行きたいのでは?」
「翠子さんは、数学以外は聡いな」

 髪から水を滴らせながら、旦那さまは明るく笑いました。
 本当に、わたくしがこの家に来てから高瀬先生はよくお笑いになります。自分がそうさせているなんて、思い上がりでしょうが。
 でも、なんだか……いえ、とても嬉しいのです。

 だから、わたくしは高瀬先生を拒むことができないのかもしれません。

 部屋に戻ると、旦那さまは手早く布団を敷きました。敷布団を一枚だけです。
 もちろんまだ眠る時間ではありません。
 日はまだ傾いていないのですが、簾が下ろされた座敷は薄暗く、宵の時間を思わせるほどです。

「おいで、翠子さん」
「はい」

 旦那さまが差し伸べた手を、わたくしは取りました。
 素直な行動だったからでしょうか。旦那さまは一瞬目を見開きましたが、すぐに柔らかな表情を浮かべます。

 そのまま布団に横たえられ、風呂上がりに着たばかりのモスリンの単衣を脱がされます。旦那さまは、服を脱いではいません。
 優しく降り注ぐくちづけに応じていると、旦那さまがわたくしの耳元で囁きました。

「この間は一本だった。今日は少し増やすよ」
「何を、ですか?」
「あなたに入れる指のことだ」
「……はい」

 わたくしは戸惑いながらもうなずきました。

 旦那さまの指がわたくしの太腿を撫で、足を開かされます。
 きっとそのまま触れられるのだろうと覚悟して、きゅっと手を固く握りました。
 ですが、違ったのです。

「やっ……ひゃ……あっ」

 思わぬ刺激に、わたくしの体がびくんと跳ねました。

「や、だめです。やめて……ちがっ……あぁ」
「何が違うんだ?」
「な、舐めないで、ください」

 両腿を旦那さまが押さえつけているので、わたくしは足を閉じることができません。わたくしの足の間に、旦那さまの頭が見えます。
 身悶えする快感に、わたくしは体をよじりました。

「駄目だよ、動いては。間違って歯を立てたらどうするんだ」
「でも、それは……いや、です」
「ちゃんと風呂に入っただろう? 汚くなどない」
「そんなつもりで、お風呂に?」
「そう」
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