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七章
5、ご褒美
俺は翠子さんの奥を激しく突いた。
あなたにとっては恥ずかしい水音だろうが。俺は、あなたの奥から聞こえる淫らな音を好んでいる。
俺が与える甘美な快楽に、酔いしれていると分かるから。
「せ……んせぇ。も、だめ」
「うん、達していいよ」
切羽詰まった翠子さんには分からないだろう。余裕のあるふりをしている俺の方も、ぎりぎりだということを。
「せんせ……も、一緒に」
「何を?」
「翠子と、一緒に……一人はいや」
俺の欲望に揺さぶられながらも、愛らしくねだってくる翠子さんに俺はくちづけた。
「ああ、いいよ」
かすれた俺の言葉は、彼女の口の中に消えた。
電気ランプの明かりに慣れた目には、行灯の仄かな明かりは心もとない。けれど嫋やかなあなたの裸体を照らすには、暴力的な眩しさよりもいいのかもしれない。
彼女の花芯に指を当てつつ、奥を穿つ。双方から与えられる愉悦に、翠子さんは悲鳴に似た声を上げた。
「や……ぁっ、無理、だめ……、も、あぁ……あ」
「そういう時は、だめじゃなくて……いい、と言うんだ」
指導する俺の声も、途切れ途切れにかすれてしまう。俺の指先が花芯をかすめるたびに、彼女の中はきつく締まる。
言葉にならない声を上げて、翠子さんは達した。俺は、小刻みに痙攣を起こす彼女の体をきつく抱きしめて、後を追う。
俺の背にまわされていた翠子さんの手が力を失い、くったりと布団に落ちた。
「よく頑張ったな」
「旦那……さま」
「名前、だよ?」
「欧之丞さま。翠子、えらいですか?」
「もちろんだ」
汗にまみれた彼女のひたいを手で拭ってやると、翠子さんは花がほころんだように愛らしく微笑んだ。
◇◇◇
いつの間に眠ってしまっていたのでしょう。
わたくしは虫の声で目が覚めました。
たしか旦那さまに抱かれていたはずなのに、今はちゃんと寝間着を着ています。
凪の時間が終わったのでしょうか、前栽の木の葉がさわさわと音を立てています。
「お早う。といっても、夜だけどな」
旦那さまは立ち上がると、廊下に出てどこかへ行ってしまわれました。時計を見ると眠っていたのは一時間ほどのようです。
まだわたくしの肌は、旦那さまの手の感触を覚えていますし。その……何と申しますか、肌だけではなく体の奥も旦那さまを覚えております。
そういえば、ご褒美にさくらんぼがあったはずです。
きっとわたくしの瞳は期待に満ちてきらきらと輝いていたことでしょう。
けれど座卓の上には、もうあの美しく艶やかな果実が盛られたガラスの皿は影も形もありませんでした。
「頑張りましたのに。蟻と蠅と蛾に持っていかれてしまったのでしょうか」
子どものように泣くつもりなどありません。なのに、じんわりと涙が浮かんで部屋や前栽の光景が朧に滲んでいきます。
「どうしたんだ、翠子さん! 泣いているじゃないか」
「旦那さま」
部屋に飛び込んできた旦那さまが、わたくしの前に座って両肩に手をかけます。
慌てふためいているようで、その表情は強張っておられます。
「以前ほど無理はさせていないが。苦しかったのか?」
「……奪われてしまいました」
「あ、ああ。そうだな。俺はすぐにあなたを奪ってしまう。本当にひどい奴だ。自分でもそう思う」
「さくらんぼ……」
「はい?」
わたくしを右腕に抱えたまま、旦那さまは左手をひたいに当ててうつむいておられます。
「なんだ……さくらんぼか」
「あの? 蟻や蠅や蛾に奪われていないのですか?」
わたくしは、むぎゅっと強く抱きしめられて身動きが取れません。旦那さまは耳元に口を寄せてこられます。
今にも消え入りそうな小さな言葉でしたが、わたくしは確かに聞き取ることができました。
「よかった。俺があなたにひどいことをしたのではなくて」
あなたにとっては恥ずかしい水音だろうが。俺は、あなたの奥から聞こえる淫らな音を好んでいる。
俺が与える甘美な快楽に、酔いしれていると分かるから。
「せ……んせぇ。も、だめ」
「うん、達していいよ」
切羽詰まった翠子さんには分からないだろう。余裕のあるふりをしている俺の方も、ぎりぎりだということを。
「せんせ……も、一緒に」
「何を?」
「翠子と、一緒に……一人はいや」
俺の欲望に揺さぶられながらも、愛らしくねだってくる翠子さんに俺はくちづけた。
「ああ、いいよ」
かすれた俺の言葉は、彼女の口の中に消えた。
電気ランプの明かりに慣れた目には、行灯の仄かな明かりは心もとない。けれど嫋やかなあなたの裸体を照らすには、暴力的な眩しさよりもいいのかもしれない。
彼女の花芯に指を当てつつ、奥を穿つ。双方から与えられる愉悦に、翠子さんは悲鳴に似た声を上げた。
「や……ぁっ、無理、だめ……、も、あぁ……あ」
「そういう時は、だめじゃなくて……いい、と言うんだ」
指導する俺の声も、途切れ途切れにかすれてしまう。俺の指先が花芯をかすめるたびに、彼女の中はきつく締まる。
言葉にならない声を上げて、翠子さんは達した。俺は、小刻みに痙攣を起こす彼女の体をきつく抱きしめて、後を追う。
俺の背にまわされていた翠子さんの手が力を失い、くったりと布団に落ちた。
「よく頑張ったな」
「旦那……さま」
「名前、だよ?」
「欧之丞さま。翠子、えらいですか?」
「もちろんだ」
汗にまみれた彼女のひたいを手で拭ってやると、翠子さんは花がほころんだように愛らしく微笑んだ。
◇◇◇
いつの間に眠ってしまっていたのでしょう。
わたくしは虫の声で目が覚めました。
たしか旦那さまに抱かれていたはずなのに、今はちゃんと寝間着を着ています。
凪の時間が終わったのでしょうか、前栽の木の葉がさわさわと音を立てています。
「お早う。といっても、夜だけどな」
旦那さまは立ち上がると、廊下に出てどこかへ行ってしまわれました。時計を見ると眠っていたのは一時間ほどのようです。
まだわたくしの肌は、旦那さまの手の感触を覚えていますし。その……何と申しますか、肌だけではなく体の奥も旦那さまを覚えております。
そういえば、ご褒美にさくらんぼがあったはずです。
きっとわたくしの瞳は期待に満ちてきらきらと輝いていたことでしょう。
けれど座卓の上には、もうあの美しく艶やかな果実が盛られたガラスの皿は影も形もありませんでした。
「頑張りましたのに。蟻と蠅と蛾に持っていかれてしまったのでしょうか」
子どものように泣くつもりなどありません。なのに、じんわりと涙が浮かんで部屋や前栽の光景が朧に滲んでいきます。
「どうしたんだ、翠子さん! 泣いているじゃないか」
「旦那さま」
部屋に飛び込んできた旦那さまが、わたくしの前に座って両肩に手をかけます。
慌てふためいているようで、その表情は強張っておられます。
「以前ほど無理はさせていないが。苦しかったのか?」
「……奪われてしまいました」
「あ、ああ。そうだな。俺はすぐにあなたを奪ってしまう。本当にひどい奴だ。自分でもそう思う」
「さくらんぼ……」
「はい?」
わたくしを右腕に抱えたまま、旦那さまは左手をひたいに当ててうつむいておられます。
「なんだ……さくらんぼか」
「あの? 蟻や蠅や蛾に奪われていないのですか?」
わたくしは、むぎゅっと強く抱きしめられて身動きが取れません。旦那さまは耳元に口を寄せてこられます。
今にも消え入りそうな小さな言葉でしたが、わたくしは確かに聞き取ることができました。
「よかった。俺があなたにひどいことをしたのではなくて」
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