27 / 194
一章
26、今夜も【1】
しおりを挟む
飴色に磨かれた階段を上がり、寝室へ入ると、翠子さんとエリスが行儀よく眠っていた。
俺は小さくため息をついた。
やはりベッドでは何をしても無理だったか。今日こそは翠子さんに腕枕をして、あなたの体温を感じながら眠りたかったのに。
残念だ。
ベッドに座り、屈みこんで翠子さんのひたいにくちづけを落とす。
目覚めさせることのないように、まるで草原を吹く涼風が肌を撫でるかのように。
なのに、エリスは「なによぉ」とでも言いたげに俺を睨んでベッドから降り、翠子さんは眠たそうに目を擦った。
「わたし、お腹を壊してなんていませんよ」
「ん?」
寝言かと思ったが。翠子さんは必死に「違うの、いらないの」と手を振っている。
もしかしてウィスケの匂いのことか? 喇叭のマークの。
これは面白い、と思ったのはきっと俺も少々酔っていたのだろう。
翠子さんに覆いかぶさって、その唇を奪う。かなり強引に。
「や、もう。平気だって、言ってるのに」
これは面白い。寝ながらも必死で、忠勇征露丸を飲むまいと、顔を背けようとする。
俺を押しのける両手を押さえつけ、指と指を絡ませる。無理に彼女の唇を開かせて、舌をねじ込んだ。
こんな風に強引にするのは、久しぶりのことだ。エリスを預かってから、俺はお預けばかりを食らっていたからな。
「ん……っ、んんっ」
ようやく目が覚めたのか、翠子さんがぱっちりと瞼を開く。はい、お目覚めが遅かったですね。お嬢さん。
「あ、あの……旦那……んぅ」
「困った翠子さんだな。俺のこともちゃんと呼べないのかい?」
「ちが…う、です。どうして? 昨夜も、したのに」
「したのに、って何を?」
意地悪な質問を投げかけると、翠子さんはそれだけで頬を染めた。
電燈を点してあるから、彼女の頬が赤くなる様子がよく分かる。まるで南洋の薄紅色の珊瑚のようだ。
「言葉にしてくれないと、分からないなぁ」
「旦那さまはご存じのはずです」
「そうだなぁ」と、のらりくらりと躱しながら、翠子さんの寝間着の帯紐を解いていく。ボタンがたくさん並ぶブラウスと違い、寝間着は脱がせるも着せるのも簡単でいい。
すぐに翠子さんのしなやかな脚が露わになった。
本当は今夜は寝かせてあげるつもりだった。だが、琥太兄からエリスを預かっている間の三日間、別荘に来るまではずっとエリスに遠慮していたんだ。
彼女はもうお客さんじゃないから、遠慮はしない。
翠子さんの両膝に手を置いて、左右に開かせる。もちろん彼女は抗議の声をあげるから、悪い大人の俺は脅すことにした。
「あまり大きな声を出すと、銀司たちに聞こえるよ? この別荘は、家ほど広くはないからね」
「……っ」
「それとも助けを呼ぶ? 今夜も旦那さまに抱かれそうです、と」
ふるふると翠子さんは首を振った。銀司たちの寝室からは慣れているから、少々声を出しても聞こえやしないのに、今は唇を引き結んで言葉を発することもない。
それもまた必死で可愛いと思うのだが。
こういう所が、多分サディストなどと揶揄られるのだろうな。
指先で、翠子さんの頬をそっと撫でてやる。そのわずかな感触にすら、彼女は小さく身を震わせた。
彼女はすぐに羞恥心から足を閉じようとするから、両手で膝を押さえたまま、恥じらいつつも期待に震える小さな其処へと、唇を寄せる。
「……んっ」
唇を噛みしめて、翠子さんは声を堪える。足の指がシーツをたぐっているのに、逃げることも叶わずに俺が与える愉悦に溺れていく。
「や、あぁ……ん」
「別に声を出してもいいよ」
「そんな所で、しゃべら……ないで」
俺の髪に指を差し入れて、翠子さんは背をのけぞらせる。そのせいで、余計に敏感な所を俺に差し出すことになるのも気づかずに。
まぁ、教えないけど。
俺は小さくため息をついた。
やはりベッドでは何をしても無理だったか。今日こそは翠子さんに腕枕をして、あなたの体温を感じながら眠りたかったのに。
残念だ。
ベッドに座り、屈みこんで翠子さんのひたいにくちづけを落とす。
目覚めさせることのないように、まるで草原を吹く涼風が肌を撫でるかのように。
なのに、エリスは「なによぉ」とでも言いたげに俺を睨んでベッドから降り、翠子さんは眠たそうに目を擦った。
「わたし、お腹を壊してなんていませんよ」
「ん?」
寝言かと思ったが。翠子さんは必死に「違うの、いらないの」と手を振っている。
もしかしてウィスケの匂いのことか? 喇叭のマークの。
これは面白い、と思ったのはきっと俺も少々酔っていたのだろう。
翠子さんに覆いかぶさって、その唇を奪う。かなり強引に。
「や、もう。平気だって、言ってるのに」
これは面白い。寝ながらも必死で、忠勇征露丸を飲むまいと、顔を背けようとする。
俺を押しのける両手を押さえつけ、指と指を絡ませる。無理に彼女の唇を開かせて、舌をねじ込んだ。
こんな風に強引にするのは、久しぶりのことだ。エリスを預かってから、俺はお預けばかりを食らっていたからな。
「ん……っ、んんっ」
ようやく目が覚めたのか、翠子さんがぱっちりと瞼を開く。はい、お目覚めが遅かったですね。お嬢さん。
「あ、あの……旦那……んぅ」
「困った翠子さんだな。俺のこともちゃんと呼べないのかい?」
「ちが…う、です。どうして? 昨夜も、したのに」
「したのに、って何を?」
意地悪な質問を投げかけると、翠子さんはそれだけで頬を染めた。
電燈を点してあるから、彼女の頬が赤くなる様子がよく分かる。まるで南洋の薄紅色の珊瑚のようだ。
「言葉にしてくれないと、分からないなぁ」
「旦那さまはご存じのはずです」
「そうだなぁ」と、のらりくらりと躱しながら、翠子さんの寝間着の帯紐を解いていく。ボタンがたくさん並ぶブラウスと違い、寝間着は脱がせるも着せるのも簡単でいい。
すぐに翠子さんのしなやかな脚が露わになった。
本当は今夜は寝かせてあげるつもりだった。だが、琥太兄からエリスを預かっている間の三日間、別荘に来るまではずっとエリスに遠慮していたんだ。
彼女はもうお客さんじゃないから、遠慮はしない。
翠子さんの両膝に手を置いて、左右に開かせる。もちろん彼女は抗議の声をあげるから、悪い大人の俺は脅すことにした。
「あまり大きな声を出すと、銀司たちに聞こえるよ? この別荘は、家ほど広くはないからね」
「……っ」
「それとも助けを呼ぶ? 今夜も旦那さまに抱かれそうです、と」
ふるふると翠子さんは首を振った。銀司たちの寝室からは慣れているから、少々声を出しても聞こえやしないのに、今は唇を引き結んで言葉を発することもない。
それもまた必死で可愛いと思うのだが。
こういう所が、多分サディストなどと揶揄られるのだろうな。
指先で、翠子さんの頬をそっと撫でてやる。そのわずかな感触にすら、彼女は小さく身を震わせた。
彼女はすぐに羞恥心から足を閉じようとするから、両手で膝を押さえたまま、恥じらいつつも期待に震える小さな其処へと、唇を寄せる。
「……んっ」
唇を噛みしめて、翠子さんは声を堪える。足の指がシーツをたぐっているのに、逃げることも叶わずに俺が与える愉悦に溺れていく。
「や、あぁ……ん」
「別に声を出してもいいよ」
「そんな所で、しゃべら……ないで」
俺の髪に指を差し入れて、翠子さんは背をのけぞらせる。そのせいで、余計に敏感な所を俺に差し出すことになるのも気づかずに。
まぁ、教えないけど。
0
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
愛し愛され愛を知る。【完】
夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。
住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。
悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。
特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。
そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。
これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。
※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる