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四章
17、お返事しました ※文子視点
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お見合いのお返事は、とっくに決まっている。
でも、わたしは自分が琥太郎さんを噛んでしまったことが、恥ずかしくてならないの。
「あの、これからもお付き合いをお願いします」
わたしは両手で顔を隠したまま、早口で告げた。
ん? ちょっと待って。なんだか涼しくて、肌がすーすーするの。
指の間から見てみると、正座したわたしの腿が見えた。
素肌……え? 恐る恐る顔から指を外すと、歯形のついた胸が露わになっている。
「きゃ、きゃあっ!」
「えー、今更やで。文子さん」
わたしは慌てて布団に潜り込む。
「こーらっ。ちゃんと返事しなさい」
「しました。お付き合いしますって」
いやぁっ。布団をめくらないで。
どうして今まで素っ裸で平気でいられたの? というか琥太郎さんも裸よね。
「じゃあ続きは布団の中で聞こかな」
「やだ、入ってこないでください」
わたしの懇願は簡単に無視されてしまった。しかも「『入ってこないで』って、なんか色気あるよなぁ」なんて仰るんだもの。
結局、布団の中の薄暗い空間で、わたしたちは寄り添う羽目になってしまった。
肌と肌がぴったりとくっついて。さっきの熱がまだ体の奥でくすぶっているから、本当に困るの。
「結婚を前提に話を進めてもええってこと?」
うんうん、とわたしは首を縦に振ります。
「それは良かった。けど、二人して布団に潜り込んだら、妙な気持ちになるなぁ」
「妙って?」
「んー? 子どもの頃に、遊ばへんかった? お化けが去るまでじーっとしとくとか、遭難して吹雪が去るんを待つ設定で」
どんな設定ですか、それ。
もしかして男の子って、そういう遊びをするのかしら。
「高瀬先生とですか?」
「そうやで。可愛いやろ」
琥太郎さんと先生の子どもの頃は、どんなに頑張っても想像がつかない。
でも、わたしが生まれるずっと前からの付き合いなのよね。
「もし文子さんと年齢が近くて、一緒に遊んどったら。どんな遊びをしとったんやろな」
「虫捕りかしら」
琥太郎さんは声には出さなかったけど「うへーっ」という顔をした。
「そこはせめて百人一首とか、雅なのにしようや」
「わたし、絶対に勝てないわ」
「うん、勝たさへんで。どんな時も、琥太郎兄ちゃんは全力やから、大人げないねん」
うそ。飄々として力はちょっとしか出していないように見えるわ。
「でもまぁ、ちゅーしてくれたら手加減したるかもしれへん」
「それって賄賂なのでは?」
「んー、袖の下くらいにしといて」
というか、さっきまでわたしを何度も抱いていたのに。
どうして、ちゅー……いえ、キスがそんなに大事なのかしら。
琥太郎さんは「ふふん」という風に口の端を上げてご機嫌な様子。
そして二人して潜り込んだ布団の中で、さらにわたしに顔を寄せてきたの。
「嬉しいなぁ。この旅行から帰っても、文子さんと離れんでもええんやって」
「そ、それは、その」
わたしは瞼をきつく閉じて、深呼吸をした。
これまで琥太郎さんの強引さに流されて、それでも次第に惹かれていったけれど。
決断は、ちゃんと自分でしないといけないから。
頷くだけじゃだめだから。
「琥太郎さん。わたしをお嫁さんにしてください」
薄暗い布団の中で、琥太郎さんが瞬きを繰り返すのが分かった。
「どうか、末永くよろしくお願いします」
ぽた……っ。
とても微かな音がした。
どうしたのかしらと布団をめくってみると。何ということかしら。
琥太郎さんが泣いていたの。
さっきの音は、どうやら彼の手の甲に涙が落ちた音みたい。
そして、今はぽろぽろと綺麗な涙をこぼしている。
「あれ? 何でやろ」
「だ、大丈夫ですか」
「子どもの時以来、泣いたことなんかないんやけど」
困ったように笑いながらも、琥太郎さんは綺麗な涙をこぼしていた。
「知らんかったわー。嬉しすぎると、人って泣くんやな」と感心しながら。
でも、わたしは自分が琥太郎さんを噛んでしまったことが、恥ずかしくてならないの。
「あの、これからもお付き合いをお願いします」
わたしは両手で顔を隠したまま、早口で告げた。
ん? ちょっと待って。なんだか涼しくて、肌がすーすーするの。
指の間から見てみると、正座したわたしの腿が見えた。
素肌……え? 恐る恐る顔から指を外すと、歯形のついた胸が露わになっている。
「きゃ、きゃあっ!」
「えー、今更やで。文子さん」
わたしは慌てて布団に潜り込む。
「こーらっ。ちゃんと返事しなさい」
「しました。お付き合いしますって」
いやぁっ。布団をめくらないで。
どうして今まで素っ裸で平気でいられたの? というか琥太郎さんも裸よね。
「じゃあ続きは布団の中で聞こかな」
「やだ、入ってこないでください」
わたしの懇願は簡単に無視されてしまった。しかも「『入ってこないで』って、なんか色気あるよなぁ」なんて仰るんだもの。
結局、布団の中の薄暗い空間で、わたしたちは寄り添う羽目になってしまった。
肌と肌がぴったりとくっついて。さっきの熱がまだ体の奥でくすぶっているから、本当に困るの。
「結婚を前提に話を進めてもええってこと?」
うんうん、とわたしは首を縦に振ります。
「それは良かった。けど、二人して布団に潜り込んだら、妙な気持ちになるなぁ」
「妙って?」
「んー? 子どもの頃に、遊ばへんかった? お化けが去るまでじーっとしとくとか、遭難して吹雪が去るんを待つ設定で」
どんな設定ですか、それ。
もしかして男の子って、そういう遊びをするのかしら。
「高瀬先生とですか?」
「そうやで。可愛いやろ」
琥太郎さんと先生の子どもの頃は、どんなに頑張っても想像がつかない。
でも、わたしが生まれるずっと前からの付き合いなのよね。
「もし文子さんと年齢が近くて、一緒に遊んどったら。どんな遊びをしとったんやろな」
「虫捕りかしら」
琥太郎さんは声には出さなかったけど「うへーっ」という顔をした。
「そこはせめて百人一首とか、雅なのにしようや」
「わたし、絶対に勝てないわ」
「うん、勝たさへんで。どんな時も、琥太郎兄ちゃんは全力やから、大人げないねん」
うそ。飄々として力はちょっとしか出していないように見えるわ。
「でもまぁ、ちゅーしてくれたら手加減したるかもしれへん」
「それって賄賂なのでは?」
「んー、袖の下くらいにしといて」
というか、さっきまでわたしを何度も抱いていたのに。
どうして、ちゅー……いえ、キスがそんなに大事なのかしら。
琥太郎さんは「ふふん」という風に口の端を上げてご機嫌な様子。
そして二人して潜り込んだ布団の中で、さらにわたしに顔を寄せてきたの。
「嬉しいなぁ。この旅行から帰っても、文子さんと離れんでもええんやって」
「そ、それは、その」
わたしは瞼をきつく閉じて、深呼吸をした。
これまで琥太郎さんの強引さに流されて、それでも次第に惹かれていったけれど。
決断は、ちゃんと自分でしないといけないから。
頷くだけじゃだめだから。
「琥太郎さん。わたしをお嫁さんにしてください」
薄暗い布団の中で、琥太郎さんが瞬きを繰り返すのが分かった。
「どうか、末永くよろしくお願いします」
ぽた……っ。
とても微かな音がした。
どうしたのかしらと布団をめくってみると。何ということかしら。
琥太郎さんが泣いていたの。
さっきの音は、どうやら彼の手の甲に涙が落ちた音みたい。
そして、今はぽろぽろと綺麗な涙をこぼしている。
「あれ? 何でやろ」
「だ、大丈夫ですか」
「子どもの時以来、泣いたことなんかないんやけど」
困ったように笑いながらも、琥太郎さんは綺麗な涙をこぼしていた。
「知らんかったわー。嬉しすぎると、人って泣くんやな」と感心しながら。
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