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一章
21 苦手なシナモンティー
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森守の仕事に休みはない。
開け放たれたままの防護柵の扉から、いつ何時魔獣が侵入するか分からないからだ。
魔獣が侵入すると警鐘が鳴る仕組みになっているが、寝ていてはすぐに対処できない。
そのため、ヴィリニュス家の人々は、二十四時間、必ず誰かが見張りに立つきまりになっている。
夜の見張りは、もっぱらエディの担当だ。
たまに兄のレオポルドが立つこともあるが、彼には可愛い妻がいるのである。毎夜というわけにはいかない。
両親は夜に活動出来るほど若くはないし、病弱な弟は論外である。
必然的に、夜の見張りが出来るのはエディだけということになる。
トルトルニアの人々を守るという使命感に燃えるエディは、たとえ夜勤になろうと文句はない。
祖母が愛するこの村の人々の安眠を守れるならばと、進んで見張り台に立っていた。
秋の夜ともなれば、冬ほどではないものの寒い。
夜の闇に溶け込むような深い紺色の毛布を羽織って、エディはいつものように見張り台に立っていた。
「エディ、お疲れ様。今夜はいつもより寒いでしょう? 暖かい紅茶を持ってきたのだけれど、どうかしら?」
入ってきた来たのは、ブロンドヘアと真っ白で透き通るような肌をした美女だった。
その手には、ティーセットが乗ったトレーがある。
エディは美女を見て、「ねえさん」と呼んだ。
彼女の名前は、ルタ。エディの兄、レオポルドの妻であり、エディの義姉にあたる。
高い身長に小さな顔、スタイルの良さはトルトルニアの女性にはないものである。
それもそのはず。ルタは、トルトルニアの出身ではない。ディンビエの首都で生まれ育った、お嬢様なのである。
淡い金色の髪に翠玉のような目。猫を思わせるちょっときつめな顔立ちをしているが、幼い顔立ちをしているトルトルニアの女性にはない、大人の色気が漂っている。
正直言って、レオポルドなんかには勿体無い女性だ。
何を隠そう、【お嫁さんにしたいトルトルニアの女性】ナンバーワンとは、彼女のことである。
数少ない独身女性を押しのけて、堂々一位が既婚女性。だが、納得の美しさである。
(それに加えて器量よしとくれば、ますます納得……)
茶器を扱う手は白く、ほっそりとしている。ずっと前の、エディの手のように。
肌からは甘い香水の匂いがほんのりと香っていた。いかにもお嬢様というような、上品な香りである。
「温まるように、スパイスも入れてみたのよ。お口に合うと、良いのだけれど」
そう言って差し出されたティーカップからは、シナモンの甘い香りが漂っている。
実は、エディはシナモンが大嫌いだったが、せっかくの兄嫁からの好意を無碍にもできず、おとなしく受け取って飲んだ。
開け放たれたままの防護柵の扉から、いつ何時魔獣が侵入するか分からないからだ。
魔獣が侵入すると警鐘が鳴る仕組みになっているが、寝ていてはすぐに対処できない。
そのため、ヴィリニュス家の人々は、二十四時間、必ず誰かが見張りに立つきまりになっている。
夜の見張りは、もっぱらエディの担当だ。
たまに兄のレオポルドが立つこともあるが、彼には可愛い妻がいるのである。毎夜というわけにはいかない。
両親は夜に活動出来るほど若くはないし、病弱な弟は論外である。
必然的に、夜の見張りが出来るのはエディだけということになる。
トルトルニアの人々を守るという使命感に燃えるエディは、たとえ夜勤になろうと文句はない。
祖母が愛するこの村の人々の安眠を守れるならばと、進んで見張り台に立っていた。
秋の夜ともなれば、冬ほどではないものの寒い。
夜の闇に溶け込むような深い紺色の毛布を羽織って、エディはいつものように見張り台に立っていた。
「エディ、お疲れ様。今夜はいつもより寒いでしょう? 暖かい紅茶を持ってきたのだけれど、どうかしら?」
入ってきた来たのは、ブロンドヘアと真っ白で透き通るような肌をした美女だった。
その手には、ティーセットが乗ったトレーがある。
エディは美女を見て、「ねえさん」と呼んだ。
彼女の名前は、ルタ。エディの兄、レオポルドの妻であり、エディの義姉にあたる。
高い身長に小さな顔、スタイルの良さはトルトルニアの女性にはないものである。
それもそのはず。ルタは、トルトルニアの出身ではない。ディンビエの首都で生まれ育った、お嬢様なのである。
淡い金色の髪に翠玉のような目。猫を思わせるちょっときつめな顔立ちをしているが、幼い顔立ちをしているトルトルニアの女性にはない、大人の色気が漂っている。
正直言って、レオポルドなんかには勿体無い女性だ。
何を隠そう、【お嫁さんにしたいトルトルニアの女性】ナンバーワンとは、彼女のことである。
数少ない独身女性を押しのけて、堂々一位が既婚女性。だが、納得の美しさである。
(それに加えて器量よしとくれば、ますます納得……)
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肌からは甘い香水の匂いがほんのりと香っていた。いかにもお嬢様というような、上品な香りである。
「温まるように、スパイスも入れてみたのよ。お口に合うと、良いのだけれど」
そう言って差し出されたティーカップからは、シナモンの甘い香りが漂っている。
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