魔獣の求恋〜美形の熊獣人は愛しの少女を腕の中で愛したい〜

森 湖春

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一章

22 美人妻、ルタ

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「美味しいよ」

 ぎこちなくなりそうな顔に笑みを浮かべ、エディはルタを見た。

 レオポルドと結婚して、もうそろそろ三年になるだろうか。

 彼女は相変わらず、美しい。一分の隙もなく化粧をし、武装するように煌びやかな衣装を身に纏う。

「そう。良かったわ」

 そう言って嬉しそうに笑う唇は、蠱惑的な赤色をしている。

 薄暗い見張り台の中だと、真っ赤な唇が浮き上がって見えた。

(僕は、ちょっと苦手)

 とても、既婚女性とは思えない。

 レオポルドや村の男たちは「ルタはいくつになっても女を感じさせてくれるいい女だ」なんて言っていたけれど、エディからしてみたら少しくらい落ち着けよと思う。

 詳しくは知らないが、どうやら彼女とレオポルドはお見合い結婚らしい。

 なんでも、失踪した祖母の部屋に、彼女のお見合い写真が置いてあったのだとか。

(おばあちゃんのことだから、きっと慎重に事を進めようとしていたんだろうな……けどなぁ……よりにもよって、うちのお気楽両親が見つけちゃったから……)

 お見合い写真を見つけた両親は、すぐさまルタの実家であるマルゴーリス家に連絡を取って、お見合いをセッティングした。

 当主不在だというのに、いや、当主不在だからこそ、チャンスとばかりに二人は即行動したのだろう。こんな良縁、二度と巡ってこないから。

 ヴィリニュス家は、森守の一族としてディンビエの中でも重要な家である。

 とはいえ、事情を知らない者からすれば、トルトルニアの中では有名な家、くらいにしか周知されていない。

 対するマルゴーリス家は、ここ数代に渡って政治家や外交官を輩出している名家である。

 歴史ある一族ではないが、国内では名の知れた家だ。

 田舎の大した家柄でもないヴィリニュス家に嫁ぐには、マルゴーリス家はあまりにも良家だった。

 だが、レオポルドを見て一目で気に入ったルタは、両親を説得してこの家に嫁いできたらしい。

(そこまで好いてくれてるってことだよね。だから、いつも兄さんのために着飾っているんだろうなぁ)

 好きな男の前では、いつだって可愛くありたいものよ、とリディアは言っていた。

 あいにく、エディには好きな男なんていなかったし、可愛くありたいなんて思いもしなかった。

 だから、それを聞いたエディは、「何を言っているんだか」と一笑に付したのだ。

(そう。僕は何を言っているんだって笑ったんだ……だけど……)

 エディの脳裏にふと、先日の一件がよぎった。
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