魔獣の求恋〜美形の熊獣人は愛しの少女を腕の中で愛したい〜

森 湖春

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四章

44 獣人のちから

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「エディ……」

 困ったような、少しだけ責めるような声に、エディは苦笑いを浮かべた。

(こういうの、いいな)

 何度か逢瀬を重ねて、二人の間にあった遠慮がちな雰囲気はなくなりつつある。

 特にロキースは、エディのことを神聖化しているような嫌いがあったが、こんな風に責任転嫁することも出来るようになった。

「え、なに? 僕のせいなの? それ」

 もちろんエディのせいだと、ロキースは思う。

 責めるつもりはないけれど、そうやって不意打ちで可愛いことをするのは頂けない。

 エディはロキースが彼女に恋していることを知っているくせに、挑発するみたいに可愛いことをしでかしてくれる。

 彼女自身にそのつもりがなくても、ロキースは忍耐力を試されているような気分だった。

 だって、ここは彼の縄張り。

 すぐ後ろには自宅があって、二階に上げればフカフカのベッドがあるのだ。

 エディをそこへ連れて行って、ロキースが満足するまでベッドから出さないことだって可能なのである。

 欲が滲んだままの目で恨みがましい視線を送ったら、エディはピャッと声を上げた。

「そ、そんな目をされても、困る……」

 まろい頰をうっすら上気させて、視線が泳ぐ。

 エディの傷だらけの手は、しゃがみ込んでいる足元にあった雑草を、意味もなくブチブチと抜いていた。

 あぁ、可愛い。

 こんなに愛しくてたまらないのに、ベッドに連れ込めないのがもどかしい。

「そろそろ、泊まりくらいは良いだろうか……?」

 手は繋いだ。

 デートもしている。それも、何回も。

 ハグも……ソファの背もたれ越しだが、経験済みである。

 となれば、次なるステップはお泊まり……!

 そんなの、駄目に決まっている。

 いつでもどこでもエディを抱きしめて甘やかしたい気持ちでいっぱいなロキースが、おとなしく紳士でいられる保証なんてないのだ。

 頭の中では、常にエディをベッドに組み敷くことばかり考えている。

 たまに、可愛いなぁと愛でるだけの時もあるが、大抵はいやらしいことだ。

 だって、仕方がない。

 彼は獣人だ。獣人とは、半獣である。

 半分獣で半分人の彼らは、人よりも理性が緩みやすかった。

 ジョージが聞いていたら、鉄拳制裁だ。

「何か言った?」

「……気のせいだろう」

 口の中で呟いた言葉は、良いのか悪いのかエディには聞こえなかったようだ。
 残念である。

 もしも聞こえていたら、エディから鉄拳制裁されていたかもしれないのに。

「ねぇ。ロキースは土属性だって言うけれど、地熱を調整する以外にも何か出来るの?」

 足元の野花を摘みながら、エディは小さな手で小さな花束を作る。

 もしもそれを貰うことが出来たら、寝室の窓辺に飾りたいとロキースは思った。

「そうだな……あぁ、探し物が得意だ」

「探し物?」

「魔熊は、隠されたものの在り処ありかを知り、財宝を発見する力を持っている」

 ロキースの言葉に、エディがパッと顔を上げる。

 その顔は何故だか、焦っているように見えた。
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