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六章
72 ねぇ、ちょうだいな?
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ルタの目は、何かに取り憑かれたように血走っている。
こんな彼女は見たことがなくて、エディは逃げ腰になりながら問いかけた。
「あの、ルタ?」
「なぁに、エディ」
「なんだか様子がおかしくない?」
「そうかしら? でも、そうかもしれない。だって私、嬉しくて仕方がないの。ずっとずっと、獣人との恋に憧れていたから」
「でも、ねえさんは兄さんと結婚して……」
「そうよ。お父様がそうしろって言うから。でもね、もしかしたらチャンスがあるかもしれないと思っていたの。だって、トルトルニアは魔の森と隣接しているし、ヴィリニュスの鍵は紛失していて魔の森には出入り自由! 私、いつも思っていたわ。いつか魔の森から、私だけの王子様がやって来て、ここから連れ去ってくれるのではないかって!」
「は……え……?」
真っ赤な唇が、それは嬉しそうに語り続ける。
レオポルドとルタは相思相愛だと思っていたエディにとって、彼女の言葉は衝撃的なものだった。
混乱しながらも理解したことは、ルタとレオポルドが相思相愛ではないということ、ルタは獣人に対して相当な思い入れがあるということくらいだ。
「え……兄さんが好きだから結婚したんじゃないの?」
「レオポルド? そんなわけないじゃない。あんな、つまらない人。お父様がどうしてもというから、それっぽく迫っただけよ」
(本当に、兄さんのことがどうでもいいんだ……)
父親に言われたから。きっとその通りなのだろうとエディは思った。
だってレオポルドのことを話すルタは、つまらなそうだった。獣人のことを語る熱量が十だとするならば、一にも満たない。
(これは、僕への罰?)
信じられない言葉の数々にエディは混乱し、その挙げ句にこれは罰ではないかとまで思った。
エディはロキースと出会ったばかりの頃、ルタなら彼とお似合いなのにと思ったことがある。
全身全霊でエディに恋をしてくれるロキースに対して、そんなことを考えた罰なのではないか。
それでも、とエディは拳を握る。
(でも、渡せない。だって僕はもう、ロキースから離れたくないんだもの)
ロキースの隣にルタを思い浮かべた時だって、結局は苦い気持ちになっただけだった。
思えば、その時から予兆はあったのだ。エディがロキースに恋をする、そんな予兆が。
(ロキースは渡さない。誰にも!)
たとえ相手が才色兼備の、【お嫁さんにしたいトルトルニアの女性】ナンバーワンでも、譲れないものは譲れない。
一瞬へこたれそうになったエディだったが、ロキースへの気持ちを糧に立ち上がった。
「ねえさん。リディアの相手と僕の相手を知って、どうするつもりなの?」
「そんなの、決まっているわ。リディアは美形が好きだし、きっと上手くいく。だけどねぇ、エディ。あなたは、お祖母様が見つかるまで男の子でいるのでしょう? だから、私が身代わりになってあげる。私は家柄も容姿も、教養も、何もかもあなたより優れているわ。紹介さえしてくれたら、あとは私がなんとかしてあげる。だから、ね? あなたに恋をした相手、私にちょうだいな」
こんな彼女は見たことがなくて、エディは逃げ腰になりながら問いかけた。
「あの、ルタ?」
「なぁに、エディ」
「なんだか様子がおかしくない?」
「そうかしら? でも、そうかもしれない。だって私、嬉しくて仕方がないの。ずっとずっと、獣人との恋に憧れていたから」
「でも、ねえさんは兄さんと結婚して……」
「そうよ。お父様がそうしろって言うから。でもね、もしかしたらチャンスがあるかもしれないと思っていたの。だって、トルトルニアは魔の森と隣接しているし、ヴィリニュスの鍵は紛失していて魔の森には出入り自由! 私、いつも思っていたわ。いつか魔の森から、私だけの王子様がやって来て、ここから連れ去ってくれるのではないかって!」
「は……え……?」
真っ赤な唇が、それは嬉しそうに語り続ける。
レオポルドとルタは相思相愛だと思っていたエディにとって、彼女の言葉は衝撃的なものだった。
混乱しながらも理解したことは、ルタとレオポルドが相思相愛ではないということ、ルタは獣人に対して相当な思い入れがあるということくらいだ。
「え……兄さんが好きだから結婚したんじゃないの?」
「レオポルド? そんなわけないじゃない。あんな、つまらない人。お父様がどうしてもというから、それっぽく迫っただけよ」
(本当に、兄さんのことがどうでもいいんだ……)
父親に言われたから。きっとその通りなのだろうとエディは思った。
だってレオポルドのことを話すルタは、つまらなそうだった。獣人のことを語る熱量が十だとするならば、一にも満たない。
(これは、僕への罰?)
信じられない言葉の数々にエディは混乱し、その挙げ句にこれは罰ではないかとまで思った。
エディはロキースと出会ったばかりの頃、ルタなら彼とお似合いなのにと思ったことがある。
全身全霊でエディに恋をしてくれるロキースに対して、そんなことを考えた罰なのではないか。
それでも、とエディは拳を握る。
(でも、渡せない。だって僕はもう、ロキースから離れたくないんだもの)
ロキースの隣にルタを思い浮かべた時だって、結局は苦い気持ちになっただけだった。
思えば、その時から予兆はあったのだ。エディがロキースに恋をする、そんな予兆が。
(ロキースは渡さない。誰にも!)
たとえ相手が才色兼備の、【お嫁さんにしたいトルトルニアの女性】ナンバーワンでも、譲れないものは譲れない。
一瞬へこたれそうになったエディだったが、ロキースへの気持ちを糧に立ち上がった。
「ねえさん。リディアの相手と僕の相手を知って、どうするつもりなの?」
「そんなの、決まっているわ。リディアは美形が好きだし、きっと上手くいく。だけどねぇ、エディ。あなたは、お祖母様が見つかるまで男の子でいるのでしょう? だから、私が身代わりになってあげる。私は家柄も容姿も、教養も、何もかもあなたより優れているわ。紹介さえしてくれたら、あとは私がなんとかしてあげる。だから、ね? あなたに恋をした相手、私にちょうだいな」
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