魔獣の求恋〜美形の熊獣人は愛しの少女を腕の中で愛したい〜

森 湖春

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六章

75 ミハウの秘密

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 しばらく無言で紅茶を飲んで。ようやく落ち着いたところで、エディは口を開いた。

「なんで、ミハウが魔笛について知っているの?」

 両親からも兄からも、そんな話は聞いていない。

 もしかしたら隠しているだけかもしれないが、エディはなんとなく、彼らも知らないような気がしていた。

「うーん……これ、あんまり言いたくないんだけどね。僕が虚弱体質なのって、先祖返りだかららしいんだ」

「先祖返りって?」

「ヴィリニュス家には、魔獣の血が流れている。防護柵を作った魔術師っていうのが、初代ヴィリニュス家当主に恋をした魔獣だったんだ。その魔獣の血を色濃く継いでしまった僕の体は、有り余る力を制御するためにエネルギーを使ってしまって、いつも燃料切れを起こしている状態なわけ。それを、おばあちゃんは見抜いていて、その時に鍵の秘密についても教えてくれたんだよ。もしも魔笛が完成したら、僕が操られてしまうかもしれないからって」

「そんな……」

 ミハウの身にそんなことが起こっているなんて、エディは知らなかった。

 どう反応したら良いのか分からず、エディは戸惑う。

 そんな彼女に、ミハウは「僕のことはいいんだよ」と笑った。

「それよりも、問題は魔笛の方。ヴィリニュスの鍵は、おばあちゃんの失踪以来見つかっていない。残りの魔笛の在り処も、おばあちゃんは知らないって言ってた。でもさ、もしも魔笛をルタが持っていたとしたら? エディタに言っていたように、ロキースを意のままに……つまり、エディタに成り代わることだって可能だと思わない?」

「……」

 エディは、まずい、と思った。

 だって、ルタが届けてくれた手紙には、こう書いてあったはずだ。

『ヴィリニュスの鍵を取り戻すために、魔の森で何をしても許す』ということが。

 ルタは、中を見ただろうか。

 ポケットから出した手紙をしげしげと見つめても、彼女が見たかどうかは分からない。

「ミハウ、どうしよう……僕、ヴィリニュスの鍵を探しに行くつもりだったんだ」

「え、どういうこと? 鍵はおばあちゃんが持っているんじゃないの?」

「誰が持っているかは、分からない。けれど、ロキースのおかげで在り処は分かっている。ロスティ側の魔の森に、あるんだ。この手紙は、ヴィリニュスの鍵を取り戻すために取得した、ロスティの許可証なんだよ。僕は迂闊にもこの手紙を失くして……ついさっき、ルタさんが届けてくれた……もしかしたら、彼女に手紙を、読まれたかもしれない……」

 手紙を持つ手が、震える。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 エディの頭の中は、その言葉でいっぱいになった。

 これからどうすれば良いのかなんて、考えられない。

 ただひたすらに、迂闊な自分を責め続ける。

「……ディタ、エディタ!」

 ガクガクとミハウに揺さぶられて、エディは彼を見た。

 まるで迷子のような不安そうな目が、ミハウをぼんやりと見つめる。

「エディタ。こうなったら、ルタよりも先にヴィリニュスの鍵を取り戻すしかないと思うんだ。もしも彼女がこっちより先に鍵を手に入れたら、とんでもないことになる。だって、魔獣を意のままに出来るってことは、魔の森の全ての魔獣を服従させることだって可能なんだ。そうなったら……最悪、戦争にだってなるかもしれない」

 戦争。

 その言葉に、エディの体がビクリと跳ねる。

「ルタの父親のマルゴーリス家当主は、野心的な男だ。ディンビエの国土を広げるために、魔の森を焼き払おうと進言したこともあると聞いている。そんな男の娘が、ヴィリニュスに嫁いでくるなんておかしいと思っていたんだ。あの女、兄さんが好きだからとか言っていたけど、本当は違うのかもしれない。ヴィリニュスの鍵が目当てで、嫁いできたのかも」

「ルタさんは、兄さんのことをつまらないって言ってた……兄さんと結婚したのは、父親が言ったからだって」

「そう……ねぇ、エディタ。ロキースなら、鍵の在り処が分かるんだよね? それなら、一刻も早く、探しに行こう。グズグズしていたら、どうなるか分からないもの」

 ミハウの提案に、エディはコクリと頷き返した。
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