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三章 一年目ふゆの月
33 ふゆの月30日、星まつり③
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「男のくせに情けない。シャキッとしろ。この子が好きなのだろう?妖精が人間に恋をしてはいけないなんて理はない。妖精の言葉が通じなくても、愛を告げる方法はあろうに」
「女王……僕は、彼女を兄のように見守っているだけです」
「ほぅ?妾にはそのように見えないが……まぁ、良い。それならそれでな。人間に恋をするのも、たまには良いぞ?人間は可愛い。特にその娘は、女神からも我ら妖精からも愛される子。長く共にあれば、好きにならずにはいられまいよ」
ニヤニヤと訳知り顔で見つめてくる女王に、シルキーはムッとした。
「彼女は男が苦手なのです。僕は彼女に穏やかな生活をしてもらいたい。ただ、それだけです。だから僕は、男ではなく、兄として彼女のそばにいるべきなのです」
どうだ、と話し終えたシルキーが女王を睨む。
女王は、彼の言う言葉がよく分からないらしい。不思議そうな顔をして、シルキーを見ていた。
「よう分からんが……まぁ、良い。可愛いこの子が毎日を楽しく過ごせるなら、妾は満足じゃ。この子のサポートを、しっかり頼むぞ」
「言われなくても、そうします」
「可愛げがないの」
「僕は白の貴婦人ですが、男なので。可愛くなくて結構です」
「ほんに、可愛くない」
子供のようにぷうと頰を膨らませる女王から、シルキーはぷいっと顔を背けた。
彼に可愛いは禁句である。
二人のやりとりを黙って見ていたスプリガンだったが、村から聞こえる音色が終わりに近づいていることに気づいて、女王へ声をかけた。
「女王様。そろそろ帰りませんと、王が拗ねまする」
「王など放っておけば良い。あやつめ、村のリサとかいう娘が綺麗じゃと言うて……妾は傷ついたぞ」
「しかし……」
助けを求めるように見つめてくるスプリガンに、シルキーは仕方ないと肩を竦めた。
たしかに、いつまでも女王がここに居るのは困る。
王の戯れに嫉妬するのは勝手だが、愚痴を聞かされる身にもなってほしい。
「間も無く夜が明けます。森へ帰れなくなったら、困るのは女王では?」
シルキーの言葉に、女王はあからさまに残念そうな顔をした。それを素知らぬ顔で無視を決め込み、シルキーは森の方へ手を差し出して「お帰りください」と言外に伝える。
「昔は可愛かったのにのぅ。今じゃすっかり男になりおって、面白くない。さて、そろそろ帰るぞ、スプリガン」
「畏まりました」
ステンドグラスのような繊細な羽を広げ、女王は空へと舞い上がる。
女王に連なるように、小さな妖精たちも一斉に飛び立った。
飛ぶことが出来ないスプリガンは、ずんぐりとした体を転がすように走り去っていく。
それを見送り、シルキーは濃紺から薄紫に変わり始めた空を眺めてため息を吐いた。
「僕は兄であるべきなんだ。そうだよね?イーヴィン……」
その声は兄というにはあまりにも、切ない響きを持っていた。
「女王……僕は、彼女を兄のように見守っているだけです」
「ほぅ?妾にはそのように見えないが……まぁ、良い。それならそれでな。人間に恋をするのも、たまには良いぞ?人間は可愛い。特にその娘は、女神からも我ら妖精からも愛される子。長く共にあれば、好きにならずにはいられまいよ」
ニヤニヤと訳知り顔で見つめてくる女王に、シルキーはムッとした。
「彼女は男が苦手なのです。僕は彼女に穏やかな生活をしてもらいたい。ただ、それだけです。だから僕は、男ではなく、兄として彼女のそばにいるべきなのです」
どうだ、と話し終えたシルキーが女王を睨む。
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「よう分からんが……まぁ、良い。可愛いこの子が毎日を楽しく過ごせるなら、妾は満足じゃ。この子のサポートを、しっかり頼むぞ」
「言われなくても、そうします」
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「ほんに、可愛くない」
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「しかし……」
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たしかに、いつまでも女王がここに居るのは困る。
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