乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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六章 二年目あきの月

63 あきの月10日、釣り①

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「むかーしむかし。あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。秋晴れの空の下、二人は仲良く海釣りへ。ですが、魚はなかなか釣れません」

「……リアン。あんたが騒ぐから、魚が逃げるのよ。私は、サーモンを釣りたいの。帰ったらシルキーにサーモンとホウレンソウのクリーム煮を作ってもらうんだから。おとなしく釣りをしていなさい」

 ファーガルの恋を応援する作戦会議をして以来、お姉さんづらをするようになったイーヴィンに、リアンは同じ歳なんだけどなぁなんて思いながら「へーい」とやる気のない返事をした。

釣果ちょうか無しだったら、ブラウニーが悲しむんじゃないの?」

「ブラウニーは優しいから、無けりゃ無いで美味しいの作ってくれますー」

「はいはい、良かったねー」

 ハラハラと、海の波間に紅葉もみじが浮かぶ。
 揺蕩たゆたう葉を眺めながら、イーヴィンとリアンは魚釣りをしていた。
 二人の他に、魚釣りをする人はいない。

 ファーガルは、作戦会議をした日からパッタリとお茶会にも来なくなった。
 昨日なんて、柄にもなく小さな花束を大事そうに持って歩くファーガルを見て、イーヴィンは思わず「うわぁ」と言ってしまった。
 笑ったとしても微笑み程度だった顔をこれでもかと甘ったるく蕩けさせているファーガルに、人はこうも変わるものなのかとイーヴィンは驚きを隠せない。

 どうやら彼は、せっせとイーヴィンの作戦を実行ーー地道にプレゼントしたりデートを重ねたりしているらしい。
 彼と遊べなくなったのは寂しいが、そのうち落ち着くだろう。その日までの我慢だと、イーヴィンは親指を立てて「グッドラック」と見送った。

 ファーガルに構われて理性が緩んだモアが、口の軽いリアンから「ファーガルが柄にもなく頑張っているのはイーヴィンのおかげ」と聞いて、お返しにと買取価格が倍くらいになったのは有難い。

(ファーガル、ありがとう!あなたのおかげで、ウシもニワトリも増やせました!)

 もしかしたら、ミルク瓶プリンのための投資を兼ねているのかもしれない。
 現在、イーヴィンの牧場はニワトリが四羽とウシが三頭、それから馬車用のウマが二頭という、大所帯になっている。

 ニワトリの名前は、ヤマダサン、ミヤタサン、ヨシダサン、カワダサン。
 ウシの名前は、マツダサン、オオタサン、イシダサン。
 ウマの名前は、イチゴウ、ニゴウである。

 ちょっと前までは農場というような感じだったのに、今じゃすっかり牧場だ。
 ローナンから貰った魔法の笛と、頑張って整えた牧草地のおかげで大した苦労もなく、昼過ぎには仕事が終わる。

 前世でゲームとしてプレイしていた時は、午前中に仕事を終わらせて、午後は婿候補の好感度アップに勤しんでいたものだ。
 だが、悲しいかな、婿候補はもういない。

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