乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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六章 二年目あきの月

64 あきの月10日、釣り②

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 そんなわけで、今日は「ファーガルが忙しいせいで牧場の改造が出来ない」と不貞腐れる独身仲間のリアンを誘って、気分転換に来たのだ。

(波の音に耳を傾けながら、のんびりと釣りをする……うーん、贅沢な時間だわ)

 前世でも今世でも、こんなにのんびりした時間があっただろうかと、イーヴィンは贅沢なこの時間を有り難く思った。

(女神様には悪いけど、転生失敗して良かった~)

 希望していた乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたら、ハッピーエンドまで待ったなしで知略謀略を張り巡らせながらバッドエンド回避に勤しまなければいけない生活だっただろう。
 魚釣りをするような余裕なんて、なかったはずだ。
 それを考えると、今の生活はイーヴィンに合っているのだと思う。

(来世もこのままで良いんだけどなぁ)

 来世こそ乙女ゲームの悪役令嬢に、と意気込んでいた女神には悪いが、来世も穏やかな暮らしが出来れば満足だ。
 そもそも、来世で悪役令嬢になったとしても、前々世の記憶がなければどうしようもない。前世ならともかく、前々世となると怪しいものである。

「はぁぁ。ファーガルのやつ、恋人が出来ても茶会には来ると思ってたのに。あいつ、オレらよりモアを取りやがった」

「そりゃあ、友情より恋でしょう。なに?友達の恋をして応援するとかカッコつけてたくせに、いざ構われなくなったらそれ?男らしいって見直してたのに。リアンは結局リアンだわ」

「んだよ。オレはオレでいいじゃんか」

 唇を尖らせてブーブー文句を言うリアンは、イーヴィンと同じ歳のはずなのに弟みたいである。
 見た目は悪く無いし、性格だって明るくて良いと思うが、やっぱり彼がイーヴィンの恋愛対象になることはない。

 対するリアンだって、イーヴィンのことを恋愛対象とは思っていないはずだ。
 少なからず意識しているのなら、彼女の目の前で、無遠慮にパンツの中身の位置を直したりしない。

(まぁ、私は弟のを見て慣れてるけど)

「そうね。リアンはリアンで良いんじゃない?顔は悪くないし、性格はちょっと鬱陶しいけど、可愛く思う人はいるんじゃないかな」

「え、マジ?オレって有り⁈」

「いや、私は無しだけど」

「オレだってお前はナシですー。なぁなぁ、イーヴィンはどんなヤツがタイプなんだ?オレはねー、髪が長くて、料理が上手くて、甘いお菓子が好きで、オレの話をニコニコしながら聞いてくれるコがタイプ!」

「……それ、ブラウニーじゃないの?」

「え……?」

「髪が長くて、料理が上手くて、甘いお菓子が好きで、リアンの話をニコニコ聞いてくれるとか、ピンポイントでブラウニーしか思いつかないんだけど」

 イーヴィンの言葉に、リアンはきょとんとしていた。
 それからしばらく固まっていたかと思えば、唐突に「うおぉぉ」と叫び出し、釣竿を放置して駆け出していく。

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