乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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六章 二年目あきの月

71 あきの月25日、フリーマーケット①

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 ーードーン、ドドーン。

 広場に、花火が上がる。
 イーゼルに立てかけた黒板に、チョークで何やら書きつけていたイーヴィンは、花火の音に驚いて「ぴゃっ」と飛び上がった。

「びっくりしたぁ」

 カスタード色のワンピースにフリフリレースのエプロン、頭にはカラメル色のキャスケットを被ったイーヴィンは、分かりやすくプリン屋さんといった格好である。
 ワンピースの下に履いたフリフリのパニエでふんわりとしたスカート部分は、まるでタマゴのように丸みを帯びていた。

 どこもかしこも標準的な体格のイーヴィンには、よく似合っている。
 これがリサやモアだったら、胸元が気になってしまうだろう。イーヴィンが残念なわけではない。彼女は標準である。リサとモアが規格外なのだ。

「もう……イーヴィン?準備は出来ているの?もうすぐフリーマーケット開始時間よ?」

「あ、モア。見てみて、看板書いたの!」

 運営本部で待機していたモアだったが、しゃがみ込んで何かしているイーヴィンが気になってやって来たらしい。
 無邪気に笑う彼女の背後から、看板とやらを覗き込む。
 黒板には、こう書いてあった。


 瓶を返却した方には100Mお返し致します!
 プティメルバ島
 酪農まつりデザート部門優勝
 ノースファーム
 イーヴィンのミルク瓶プリン
 一個、800M


「……イーヴィン」

 わなわなと震えるモアに、イーヴィンは怯えた。
 ビクビクと首を竦めながら見上げた彼女は、目をギラギラさせている。
 理由は分からないが、てっきり怒られると思っていたイーヴィンは、拍子抜けしたようにまばたきした。

「モア……?」

「さいっこうじゃない!普通のプリンが400Mに対してデザート部門優勝のプリンが800Mは少々高い気がするけれど、瓶代を考えれば仕方がない。けれど、返却したら100M、つまり700Mでミルク瓶プリンが食べられる……素晴らしいアイディアよ!瓶なら洗って使えるから、返却してもらえたら何度も使えるし。イーヴィン、やるわね!」

 朝も早いというのに、モアの口はよく回る。
 トドメにバシバシと背中を叩かれて、イーヴィンは咳き込んだ。

「そうねぇ……あとは、その場で食べる人にはクリームのトッピングとかどうかしら?甘いものが好きな人なら、きっと飛びつくわ!」

「え。でも、クリーム、用意してないよ?」

「私を誰だと思っているの?すぐに用意してあげるから、あなたは黒板に追記しておいて!」

 そう言いながら、モアは風のように去っていく。
 ふわふわと触り心地の良さそうなふくよかな体格をしているのに、彼女の動きは素早い。
 あっという間に見えなくなった彼女に「流石だなぁ」と呟いて、イーヴィンは言われた通りに看板へ追記したのだった。

 モアは、三十分もしない間にホイップクリームを持ってきた。
 一体どこから調達してきたのか、渡されたボックスの中には星型の小さな砂糖菓子や銀色のアラザンまで入っている。

「わぁ、可愛い」

「でしょう?私からのサービス。しっかり稼いでちょうだいな」

 モアはニヤリと笑いながら、「見てるわよ」とハンドサインをして本部に戻っていく。
 イーヴィンは手を振って彼女を見送ってから、広場の中央にある時計台を見上げた。

「もうすぐね」

 緊張に、胸がドキドキしていた。
 でも、同じくらいワクワクもしている。
 少しでも落ち着こうと深呼吸をしたら、秋の匂いがした。

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