勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、転移する

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「お待たせしました、Sランクパーティ【気紛れ明星】の皆様。
 A級冒険者、勇者アレクシア。
 A級冒険者、戦士ガリウス。
 A級冒険者、賢者ミザリア。
 A級冒険者、聖女フィーナ。
 提示されたライセンスによる生体認証、確かに確認致しました」

 提示した冒険者証を返却しながら頭を下げるギルド嬢に俺達も礼を告げる。
 特殊加工された冒険者証は偽造が利かない。
 また個人ごとに波長の違う生体魔力を感知する機能により、間違いのない身分証明としての役割を果たす。
 特殊な読み込み器(リーダー)を通す必要があるがその信用性はかなりのものだ。
 各国の関所や各都市の検問所もこの冒険者証を提示するだけで大分手続きが簡略化される為、ライセンス目当てで冒険者ギルドに登録する商人もいるくらいに。
 まあ利便性の裏で冒険者としての責務も伴うので、すぐ退会するようだが。
 それでもライセンスの重要性は理解出来ただろう。
 俺達は頑丈な鎖で繋がれた冒険者証を改めて仕舞い込む。
 受付を終えた以上、ここから先はいよいよ迷宮内――ダンジョンの領域になる。
 僅かな油断が死を招く魔境。
 念には念を入れて点検を行わなくてはならない。
 ここが完全に気を抜ける最初で最後の場所なのだから。
 パーティメンバーの顔を見渡す。
 初となる精霊都市ダンジョンに向け緊張はあるも、力みは無く良い感じだ。
 これなら問題ないだろう。
 あの後――買い出しを終えて装備を整えた俺達は、精霊都市の迷宮前に設けられた冒険者ギルドの出張所に来ていた。
 ここは迷宮に挑む冒険者にとっての拠点であり命綱だ。
 回復、転送、準備。
 最前線に最も近い場所としてありとあらゆる設備が整っている。
 とはいえ、それはあくまで臨時的なもの。
 本格的な装備が欲しければ先程の俺達の様に街へと繰り出さなくてはならない。
 しかし当座を凌げる物なら多少割高だが全部揃っているのは有難い。
 緊急時などに移動の手間が掛からないのは大きなアドバンテージに繋がる。
 無論そういう事態にならない事を祈るが――
 何が起きるか分からないのもダンジョンの一面だ。
 用心するに越したことは無い。
 ちなみにダンジョン前詰め所にはギルドの精鋭が24時間態勢で待機している。
 ダンジョン内で飽和した妖魔が外へと溢れ出るスタンピード。
 おぞましい事態に対する最終防壁として彼らは尊敬され、それに見合う高い実力とレベルを誇る。
 ならば何故見習いに近い低レベルな者でもダンジョンへ投入するのか?
 これは妖魔に対する間引きの意味もある。
 余談だがどんな高レベルでも冒険者証が無ければ入口のゲートは開かない。
 強引に突破すると無期限のライセンス失効処分が下される。
 なので手間だがこういった手続きが必要になるという訳だ。

「これから先は転移陣を使用した迷宮への移動になります。
 皆様は今回が初挑戦になりますが――最深度に挑みますか?」
「いや、今回はあくまで様子見だ。
 時間もないし400階層辺りを探索してみようと思う」
「畏まりました。
 では準備が整いましたので――中央転移陣へお乗りください。
 今から30秒後に転移陣が発動します。御武運を」
「ありがとう」

 俺達は再度礼を述べると通常の入口とは別に設けられた転移陣に乗る。
 これは迷宮内に刻まれた魔法陣と結ばれた一方通行の転移を可能とする。
 一応Sランクに叙せられた俺達は600階層まで転移可能だが初挑戦でそれは冒険を通り越し無謀だろう。
 リスクは控えめにし、まずは様子を見ようと思う。
 先程購入したばかりの武具の性能も試してみたいしな。
 そうして発動する転移陣。
 転移特有の積層型魔法陣の発光と共に俺達はダンジョンへ突入する。
 終わりが見えない精霊都市ダンジョン――通称【最も深き嘆きの迷宮】へと。
 


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