勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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言い掛かりらしいです

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「ここはオレ達の縄張りなんだ。
 余所者は出てけよ」
「そうだそうだ」

 一際大きい男の子が私達に身体を寄せて威圧してきます。
 その傍らでは金切声で独特の髪型が特徴的な男の子が追随します。
 村長のドラ息子であるガキ大将のゴーダと、その子分ズーネヲです。
 余所者出身の母様から生まれた私達を疎ましく思っているのか、
 前々から執拗な嫌がらせをしてくるのでした。
 特にゴーダは権力者である親の権威を笠に乱暴を振るうので、
 村中の女の子から嫌われてます。
 困った様に顔を見上げる私にシャス兄様は毅然とした態度でゴーダに応じます。

「ここは公共の場だと思ってたけど?」
「それは大人のルールだ。
 オレ達子供には関係ない」
「ボク達も村の一員なのに?」
「ああ、オレ達はな。
 だがお前らは違う。
 所詮は余所者の分際だからな。
 少しは身の程を弁えろ、ってもんだ」
「くひひ……ホントですね、ゴーダさん」

 傲慢に言い放つゴーダ。
 いやらしい笑いを浮かべるズーネヲ。
 はっきり言って最悪です。

「……呆れて物が言えないな。
 行こうか、ユナ。
 相手にしてると疲れる」
「そうですね、シャス兄様」

 馬鹿相手にムキになる方が馬鹿です。
 さらりとゴーダの舌鋒を擦り抜けると、シャス兄様は私を促し歩き出します。

「おい、待てよ!」

 馬鹿が何か言ってきますが私達は気にしません。
 せっかく場所を譲ったんですから、そこを堪能すればいいじゃないですか。

「ちょっ、待てよ!
 待ってて言ってんだろ、淫売のガキが!!」

 その言葉に、
 シャス兄様の足がピタッと止まります。
 慌てて制止しようとした私を振り切り、兄様は俯きながらゴーダの前へ歩み寄っていきます。
 その顔は前髪に隠れ窺うことが出来ません。
 ですが私は、初めてシャス兄様が怖いと思いました。

「な、なんだよ」
「今……何て言った?」
「ああ?」
「母さんのこと……お前は何て言ったんだ?」
「あ? ああ、お前の母親のことだろ?
 有名だぜ~早く認めて欲しくて、周囲の奴等をタラシこんでんだろ?
 身体とか使ってよ!」

 意味はよく分かっていないのでしょう。
 しかし子供が耳にするくらいは噂になってるということでしょうか。
 母様は術法だけでなく整体も行ってます。
 気の通りをよくすることで内面からの活性を図るからです。
 でもこの世界の人にはそれが奇異なものに映るみたいです。
 直接肌に触れる為、快く思わない人達もいるのでしょう。

「おい、何か言えよ」

 小馬鹿にしたように突き出された手。
 その手を、シャス兄様は目にも止まらない速さで掴みます。
 ゴーダは驚いているようでした。
 兄様は今まで何を言われようが挑発には乗ってこなかったのですから。
 それは単に兄様が大人な対応でスルーしてただけのこと。
 見逃されていただけなんです。
 それに子供離れした膂力にもびっくりしてる様です。
 父によって行われている日々の修行は決して無駄ではなく、
 私達は一般的な子供達のレベルを遥かに超える域まで身体を鍛えられてます。
 けど父様からは村人相手に闘技・術法を使う事を固く禁じられています。
 それが最低限のルールだから、と。
 ですから兄様はスルーしてきたのですが……
 ゴーダは馬鹿です。
 穏和で温厚なシャス兄様、唯一の逆鱗に触れてしまったのですから。
 
「今までは実害もないから放っておいた……」
「イテテ……
 離せ、離せよ!」
「だがお前はボクだけじゃなく、
 家族の名誉をも汚した……」
「いってえ! いてえよ!」
「分かってるんだろうな、その意味を」
「ああ!?
 何言ってんだ、おまえ!?」
「ボクに……ノルン家に敵対すると決めた以上……
 こんなもので済むと思うなよ!!」
「「ひ、ひいい!!」」
 
 キッと面が上がり、兄様の上気した顔が覗きます。
 その瞳に何を見たのかゴーダとズーネヲから悲鳴が洩れました。
 ですがそんなことより何より、烈火のごとく怒るシャス兄様から膨大な魔力が立ち昇るのが私には視えてしまいました。
 色彩豊かな魔力は無意識に束ねられ、兄様の四肢を強化していきます。
 いけません!
 兄様は怒りに我を忘れてしまってる状態のようです。
 このままでは噴水広場に柘榴が砕けたような痕跡を残してしまうでしょう。
 慌てた私が闘気を纏い身体強化をし、割って入ろうとします。
 が、間に合いません!
 魔力付与によって強化された兄様の拳が、ゴーダの頭に叩き込まれる!
 ……まさに寸前、

「な~に楽しいことやってんだ、シャスにユナ」
「ミスティ兄様!」

 突如乱入してきたミスティ兄様の精霊魔術<影縛り>にて、
 シャス兄様は強制的とはいえ、無事止められたのでした。




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