勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

文字の大きさ
13 / 89

説得らしいです

しおりを挟む

 万物に宿る精霊。
 その精霊を使役し、自らの望む在り方を具現化するのが精霊魔術です。
 ミスティ兄様は精霊を統べる聖霊の寵愛を受けてるとのことで、僅か7歳にして自在に精霊を操ります。
 今も精神を司る精霊<影の精霊>に命じ、物質界とは異なるアストラルサイドからの干渉を掛けた……みたいです。
 膨大な魔力で強化された筋力も、シャスティア・ノルンという存在そのものに掛けられた呪縛には敵わないようです。
 生憎私は魔術の才能が無い為分かりませんが、ミスティ兄様の術でシャス兄様が身動きを取れないのは確かですし。
 ……本当に危ないとこでした。
 ミスティ兄様の抑止があと数瞬でも遅れてたら汚い花火が咲いてしまったとこでしょう。
 はあ……良かった。
 シャス兄様が殺人者にならずに済んだ。 
 安堵感に力が抜け、思わずその場に跪いてしまいます。
 けどシャス兄様は納得いかないようでした。
 動かない身体を総動員し、ミスティ兄様に喰って掛かります。

「……術を解いてくれませんか、兄さん」
「ん~? んー……駄目だな」
「何故です!?」
「シャスが冷静さを失ってるから」
「だってあいつは……
 あいつらは母さんを侮辱したんだ!」
「そうだな」

 激昂するシャス兄様。
 規格外の魔力が強引に束縛を打ち破っていきます。
 無論そんな力に子供の身体が耐えれる訳もなく、
 ブチブチ……
 ビキビキ……
 と、あまり耳にしたくない音が響きます。
 あわわ。大変です!

「それが分かっていながら、兄さんは何故そんなに冷静なんですか!
 悔しくはないんですか!?」
「あー……まあ、な」
「だったら何故!?」
「なあ、シャス」
「……はい」
「お前さ、お前がそんな事して……
 ホントに母さんが喜ぶと思うか?」
「あ……」
「母さんも父さんもいつも言ってるだろ?
 力の意味を考えろ、って。
 俺達が持ってる力はさ……こんな憂さ晴らしに使うような、ちっぽけなもんじゃないだろ?」
「兄さん……」
「まあ俺は兄貴だからな。
 一応は止める。
 でもこれを聞いても続けるなら、それはお前の意志だ。
 好きにするがいいさ」
「……すみません、兄さん。
 ボクが馬鹿でした。
 あんな安い挑発に安易に乗ってしまって」
「いや、家族の事を持ち出されたら誰だってそうなる。
 気にすんな。
 ただ、自戒し自覚しろ」
「はい」

 シャス兄様の返答に満足したのかミスティ兄様が指を鳴らします。
 次の瞬間シャス兄様の束縛が解け、力余った兄様はたたらを踏みます。
 兄さんが歩み寄り、その頭をワシワシと掻き回します。

「お前はまだガキなんだからさ、ガキはガキらしく素直に甘えろ。
 変にいい子ぶらなくていいぞ」
「……子供なのは兄さんも一緒でしょ」
「俺は精神年齢高いからいいの。
 子供は子供でも(仮)だからさ」
「何ですか、それ。ふふ」
「お、やっと笑ったな」
「兄さんの悪ふざけには頭が下がりますよ」
「ならいいさ。
 それとユナ!」
「ひゃ、ひゃい!?」

 事態の推移を見守っていた私。
 いきなり声を掛けられたのでびっくりしちゃいます。

「助けにくるのが遅くなって悪かったな。
 ちゃんとシャスを止めようとしたな? 偉いぞ」
「いえ、その……」

 あう。
 天使の様に可愛らしい顔でマジ褒めされたら照れてしまいます。

「さて、後はこいつらの処分か……」

 ミスティ兄様の目線の先ではゴーダとズーネヲが身体を震わせています。
 シャス兄様の鬼気に当てられたのもありますが、ミスティ兄様の術によって束縛されてるのです。

「お、オレ達に手を出したら親父が黙っちゃいないぞ!?」
「だっせーな、お前。いきなり親の話かよ。
 男ならちゃんと自分の力で語れよな。
 それにシャスも言ってたけどさ……ノルン家を敵に回したんだ。
 ただで済むと思うなよ?」
「ひっ」
「兄さん、ボクが言っても説得力はありませんが、暴力は……」
「ん? ああ、分かってるって。
 お前もユナも頭が固いな。
 父さんが言ったのは術法等によって誰かを傷付ける事だぞ?
 これぐらい(影縛り)なら心身に影響はないさ。
 それにな、世の中には……
 死より恐ろしい事がある事をこいつらに教えてやらないとな」
「「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」」

 意地の悪い思案顔で笑うミスティ兄様。
 その瞳に何を見たのかゴーダ達は絶叫し、そして絶望するのでした。
 ミスティ兄様によって村外れに引き摺られていく二人。
 哀れなその姿を見ながら、私は内心黙祷を捧げます。
 合掌。









 ……その後しばらく、精神に傷を負った二人は家に引き籠ったそうです。
 性懲りもなくすぐに復活したらしいですが。
 私は改めて母様とミスティ兄様は敵にしてはならないと誓い直すのでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

処理中です...