勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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慰めらしいです

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 痩せ我慢をして治療を拒否するシャス兄様を村外れの小川まで強引に誘います。
 兄様を手頃な石に腰掛けさせると、私は小川に赴いてハンカチを濡らします。
 少し冷たいですが、このぐらいの方が火照った身体にはいいでしょう。
 軽く絞り水分を含ませたまま私は兄様の下へ戻ります。

「兄様、上着を脱いでください」
「ユナ……その、大丈夫だから」
「ぬ・い・で、く・だ・さ・い!」
「はあ……ユナは母さん似だな。
 怒ると逆らえる気がしないよ。
 ほら、これでいい?」

 怒気を込めた私の要請に、シャス兄様は観念したように上着をはだけます。
 ひどい有様でした。
 ミスティ兄様の<影縛り>によってその場に縫い付けられてるのに、無理やり動いた結果がこれです。
 シャス兄様のほっそりしながらも鍛えられた身体。
 その肌の端々に内出血と打撲痕のような赤黒い痣が見えます。
 ……もしかしたら筋肉が断裂し掛かっているのかもしれません。
 痛みを完全に自制してしまう兄様の為、顔色から詳しくは窺えませんが。

「無理……しないで下さいね」

 ハンカチで身体を拭い、患部を冷やしながら私は声を掛けます。
 それと同時に兄様の内面を中心に気を循環。
 悪い所にエコーのように気を当て、身体内部の状態を探ります。
 母様の得意技で、よく診察室でやってるのを見掛けた事があります。
 今回初めて挑戦し、見様見真似でしたが、上手くいきました。
 どうやらギリギリ筋肉や腱などは大丈夫のようです。
 私は内出血を拡散すべく気を注ぎ込みます。
 痛みが徐々に和らいでいくのか、兄様が驚いた顔をしています。

「これで大丈夫です。
 今日から明日まで、おしっこが赤っぽいかもしれないですけど、それは今回血管に戻した内出血の分ですから。
 心配しないでください」
「鮮やかな手並み……まるで母さんみたいだ。
 ユナは大したものだね」
「そんなことありません。
 でも、シャス兄様」
「何だい?」
「一言いいですか?」
「……うん」
「兄様が家族を想う気持ちは凄く分かりました。
 けど、ミスティ兄様がいなかったらどうなってたと思うんですか?
 正しき怒りは大事です。
 だけど然るべき対処をしなくては駄目だと思います」
「……そうだね。
 ユナや兄さんの言う通り。
 ……ボクが間違ってたな。
 激情に任せて暴力を振るうなんて……最低だ」

 兄様が自嘲するように唇を歪め、閉眼します。
 自省するシャス兄様の姿は痛ましく、私は何だか泣きそうになりました。
 いえ、実際浮かび始めた涙で視界が滲みます。

「……あの、兄様」
「ん?」
「すみません……偉そうに。
 何だかお説教っぽくなってしまって……
 私、そんなつもりじゃ……」
「え? 何だ、そんなことを気にしてたのか」

 開眼し苦笑する兄様。
 ポロポロと零れ落ち始めた私の涙を手で掬ってくれます。

「ユナはボクを心配して言ってくれたんでしょ?
 ボクは未熟だから失敗もするし、過ちを犯しもする。
 けどその都度気付いた人が注意してくれればすごく助かるし、感謝したくなる。
 それは相手がユナや兄さんでも変わらないよ」
「兄様……」
「だからユナや兄さんがおかしい時には、ボクも声を掛けるよ。
 遠慮なく何でも言い合える関係って大切だからさ。
 たった三人の兄妹なんだし……これからもよろしくね、ユナ」
「こちらこそ、シャス兄様」

 私は泣いてしまった気恥ずかしさと、優しい兄様の笑顔にいたたまれなくなりながら、差し伸べてくれた兄の手を掴むのでした。


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