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お店番みたいです
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「本当にいいのかい、ユナちゃん」
「はい。今日もお任せください」
「じゃあ少しだけお願いするね。
急いで棚卸しをしなくちゃならないものが結構あってさ。
ほら、アンタ!」
「ん? ああ。
いつもありがとうな、ユナ。
コイツ共々助かってる」
「そんな……」
「なんだい、アンタ。
もっと言い方ってもんがあるだろ?
……まあ、この人にそんな器用さを求めちゃ駄目さね」
「いいえ。ゴランおじさんの武骨だけど……
とても優しい気持ちは、ちゃ~んと伝わってます」
「そうかい?」
「勿論、ジャレッドおばさんの気持ちも」
「あはは。この娘は褒め上手だね。
そうだ、お礼って訳じゃないけど、今日もご飯を食べておいきよ」
「え~……と、その」
「な~に遠慮してるんだい。
新しく来たファルちゃんにも色々と注文を受けた事だし、
後で息子のジャランに配達に行かせるからその時に知らせとけば大丈夫だよ」
「は、はい。
じゃあ……御馳走になります♪」
「うん。子供は素直が一番」
「あっ御馳走といえば!
私、大事な事を忘れてました」
「何だい?」
「これ、ファル姉様からです。
リンゴパイを焼いてくれました」
私は綺麗にデコレされ、バスケットに収められたリンゴパイを渡します。
まだ仄かに漂う香ばしい芳香が食欲を誘います。
「またあの娘は気を遣って……もう。
まあ仕方ない。
後であたしからもお礼を言っておくさ。
ユナちゃん、ひと段落したらお茶のみしようね」
「は~い!」
「元気な返事だね。
じゃあちょっと二人で倉庫にいるから、何かあったら呼んでおくれ」
「了解です」
私は手を振りながら倉庫に消えていく二人を見送りました。
さて、これからは一人でマイスター商店の店番です。
臨時とはいえ、看板娘としては仕事に精を出さなくてはなりません。
はたき棒と布を手に取り、商品を綺麗にしていきます。
雑多な品揃えですが繊細な物もある為細心の注意が必要です。
落とさない様、壊さない様に注意を払います。
勿論接客も忘れません。
午後はお客さんが少ないとはいえ、そこは村でも人気のお店です。
村人や探索を終えた冒険者が顔を覗かせます。
小さな身なりの私に驚く方も多いですが、
しっかりとした返答に安堵し興味深げに話し掛けてきます。
私もその都度的確に応じるので好評を得てる様でした。
しきりなしに訪れる来客。
丁寧な応対をしてる内にいつの間にか夕刻になってきました。
黄昏色に染まり始めた店内。
私はランプに灯りを燈そうと店先に向かいます。
そして気付きました。
薄暗い闇、まるで潜む様に佇む影に。
しかし私は動揺したりすることもなく、
ランプに油を注ぎ火を点ける作業を継続しながら尋ねます。
独り言のように小声で。
影も私に答えるというより、機械的な返答をする人形の様に応じます。
「首尾は?」
「はい。王都の5分の1の情報屋が参加に入りました。
組合筋にも話は通ってます」
「手緩いですね。
もっと増員は望めません?」
「対立する組織を煽らない為には、このくらいでよろしいかと。
無用な争いは金と人員の無駄です」
「確かに。
でも歯痒いですね」
「現在、盟主様の構築したネットワークは拡大の一途を辿っています。
神懸かり的な先物取引で莫大な利益を得る我等が情報収集機関<アラクネ>。
潤沢な資金を元に網を張るそれはまさに蜘蛛。
情報が情報を生み、さらなる情報という獲物を招く。
アラクネの名に恥じぬものになってるとは思いますが。
しいて助言を述べさせていただけるなら、版図を急激に広げさせる事により、
王立諜報機関<シャープネス>に目をつけられない様心掛けるのが賢明ですな」
「駒が反論ですか?」
「いえ。意見で御座います」
「ならば構いません。
ですが最終的な意思決定は私にあります。
貴方達は自らの責務を果たしなさい」
「承知。元より我等は破産し路傍に朽ち果てる身を盟主様に拾って頂いた者達。
この身が尽きるまで貴女様に忠誠を誓います」
「結構。貴方達の更なる忠誠を望みます」
騎士の様に跪き頭を垂れる影。
私はその挙動に満足すると、影の忠義に報いようと手を伸ばし、
「ユナちゃ~ん。
遅くなってごめんよ~。
お茶の準備が出来たから母屋においで~」
掛けたところで、ジャレッドおばさんの大きな声に遮られました。
私は冷たさを装った仮面を脱ぎ捨てず、
氷の女王のごとき声色で会話を打ち切ります。
「頃合いですね。
以後は定時の連絡にて」
「はっ、畏まりました」
「期待してますよ、銀狐」
「お任せください。
我等が盟主<ホーリーアヴェンジャー>様」
「……恥ずかしいからその二つ名は辞めなさい」
「左様ですか?
ならば盟主様の仰せのままに。では」
深々とした一礼。
慇懃無礼にも取れるその礼と共に、影が夕闇に消えます。
完全に気配が無くなったのを確認し、私はゆっくりと深呼吸をします。
自分で望んだ事とはいえ、闇の世界の住人との接触は神経を遣いました。
(……でも、これが私の望んだ道です)
茨で傷付き、泥に塗れても尚突き進む覚悟。
私はナイアル様との誓約を胸に、
返答を待つジャレッドおばさんに元気な声を返すのでした。
「はい。今日もお任せください」
「じゃあ少しだけお願いするね。
急いで棚卸しをしなくちゃならないものが結構あってさ。
ほら、アンタ!」
「ん? ああ。
いつもありがとうな、ユナ。
コイツ共々助かってる」
「そんな……」
「なんだい、アンタ。
もっと言い方ってもんがあるだろ?
……まあ、この人にそんな器用さを求めちゃ駄目さね」
「いいえ。ゴランおじさんの武骨だけど……
とても優しい気持ちは、ちゃ~んと伝わってます」
「そうかい?」
「勿論、ジャレッドおばさんの気持ちも」
「あはは。この娘は褒め上手だね。
そうだ、お礼って訳じゃないけど、今日もご飯を食べておいきよ」
「え~……と、その」
「な~に遠慮してるんだい。
新しく来たファルちゃんにも色々と注文を受けた事だし、
後で息子のジャランに配達に行かせるからその時に知らせとけば大丈夫だよ」
「は、はい。
じゃあ……御馳走になります♪」
「うん。子供は素直が一番」
「あっ御馳走といえば!
私、大事な事を忘れてました」
「何だい?」
「これ、ファル姉様からです。
リンゴパイを焼いてくれました」
私は綺麗にデコレされ、バスケットに収められたリンゴパイを渡します。
まだ仄かに漂う香ばしい芳香が食欲を誘います。
「またあの娘は気を遣って……もう。
まあ仕方ない。
後であたしからもお礼を言っておくさ。
ユナちゃん、ひと段落したらお茶のみしようね」
「は~い!」
「元気な返事だね。
じゃあちょっと二人で倉庫にいるから、何かあったら呼んでおくれ」
「了解です」
私は手を振りながら倉庫に消えていく二人を見送りました。
さて、これからは一人でマイスター商店の店番です。
臨時とはいえ、看板娘としては仕事に精を出さなくてはなりません。
はたき棒と布を手に取り、商品を綺麗にしていきます。
雑多な品揃えですが繊細な物もある為細心の注意が必要です。
落とさない様、壊さない様に注意を払います。
勿論接客も忘れません。
午後はお客さんが少ないとはいえ、そこは村でも人気のお店です。
村人や探索を終えた冒険者が顔を覗かせます。
小さな身なりの私に驚く方も多いですが、
しっかりとした返答に安堵し興味深げに話し掛けてきます。
私もその都度的確に応じるので好評を得てる様でした。
しきりなしに訪れる来客。
丁寧な応対をしてる内にいつの間にか夕刻になってきました。
黄昏色に染まり始めた店内。
私はランプに灯りを燈そうと店先に向かいます。
そして気付きました。
薄暗い闇、まるで潜む様に佇む影に。
しかし私は動揺したりすることもなく、
ランプに油を注ぎ火を点ける作業を継続しながら尋ねます。
独り言のように小声で。
影も私に答えるというより、機械的な返答をする人形の様に応じます。
「首尾は?」
「はい。王都の5分の1の情報屋が参加に入りました。
組合筋にも話は通ってます」
「手緩いですね。
もっと増員は望めません?」
「対立する組織を煽らない為には、このくらいでよろしいかと。
無用な争いは金と人員の無駄です」
「確かに。
でも歯痒いですね」
「現在、盟主様の構築したネットワークは拡大の一途を辿っています。
神懸かり的な先物取引で莫大な利益を得る我等が情報収集機関<アラクネ>。
潤沢な資金を元に網を張るそれはまさに蜘蛛。
情報が情報を生み、さらなる情報という獲物を招く。
アラクネの名に恥じぬものになってるとは思いますが。
しいて助言を述べさせていただけるなら、版図を急激に広げさせる事により、
王立諜報機関<シャープネス>に目をつけられない様心掛けるのが賢明ですな」
「駒が反論ですか?」
「いえ。意見で御座います」
「ならば構いません。
ですが最終的な意思決定は私にあります。
貴方達は自らの責務を果たしなさい」
「承知。元より我等は破産し路傍に朽ち果てる身を盟主様に拾って頂いた者達。
この身が尽きるまで貴女様に忠誠を誓います」
「結構。貴方達の更なる忠誠を望みます」
騎士の様に跪き頭を垂れる影。
私はその挙動に満足すると、影の忠義に報いようと手を伸ばし、
「ユナちゃ~ん。
遅くなってごめんよ~。
お茶の準備が出来たから母屋においで~」
掛けたところで、ジャレッドおばさんの大きな声に遮られました。
私は冷たさを装った仮面を脱ぎ捨てず、
氷の女王のごとき声色で会話を打ち切ります。
「頃合いですね。
以後は定時の連絡にて」
「はっ、畏まりました」
「期待してますよ、銀狐」
「お任せください。
我等が盟主<ホーリーアヴェンジャー>様」
「……恥ずかしいからその二つ名は辞めなさい」
「左様ですか?
ならば盟主様の仰せのままに。では」
深々とした一礼。
慇懃無礼にも取れるその礼と共に、影が夕闇に消えます。
完全に気配が無くなったのを確認し、私はゆっくりと深呼吸をします。
自分で望んだ事とはいえ、闇の世界の住人との接触は神経を遣いました。
(……でも、これが私の望んだ道です)
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返答を待つジャレッドおばさんに元気な声を返すのでした。
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