勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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尊敬しちゃうみたいです

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 前方に灯りが見えてくるのももどかしく、全身を闘気で覆い強化。
 ジャランさんにこのまま向かってくださいと告げ、
 さらにここまで同行してくれた礼を言うと、
 馬車から飛び降りた私は一気に駆け抜け、トップスピードに乗ります。
 加速して流れゆく視界。
 夜目の利く私ですが、周囲はすっかり夜の帳が下りていて真っ暗です。
 そんな中、村外れにある我が家がポツンと孤立してるのが見て取れます。
 でもあたたかな照明が皓々と灯り、
 屋根に繋がる煙突からは煙が立ち、
 玄関口には人がいるのを見て安心します。
 ああ、我が家なんだな~って。
 皆と共に過ごした思い出が積み重なった場所。
 私の魂の故郷はもうここみたいですね、うん。
 ……え?
 人?
 遠視・望遠スキル等も使いよ~~~~~~く目を凝らすと、
 遅くなった私を心配したからでしょうか?
 玄関でにこやかに微笑み手を振る人影はファル姉様でした。
 あわわ。大変です。
 確かファル姉様曰く、
 真のメイドたる者、家人の送迎を常に行うのが鉄則ですわ、とか。
 時々予知能力でも持ってるんじゃないかと思うくらい、何時如何なる時もきっかり出迎えてをしてくれます。
 そんな事を思い出しつつ私は急ぎ……でもメイド服のスカートが捲れない様、
 最大限に気をつけながら進みます。
 多分人生最速で家までついた私は深呼吸後、上品にスカートを翻し一礼。
 ファル姉様も微笑を真面目な表情へ変え応じます。

「おかえりなさいませ、ユナ様」
「ただいま帰りました、ファル姉様」
「ジャラン様よりマイスター家で夕飯を御馳走になる件は伺っております。
 僭越ですがわたくしの方から御礼をさせていただきました」
「あ、はい。
 帰宅途中、直接ジャランさんから聞きました」
「それは重畳。
 ところで……随分慌ててるようですが、何事ですの?
 それにアレはマイスター商店の馬車のようですが……」

 帰宅早々、玄関まで出迎えに来てくれたファル姉様が疑問を投げ掛けてきます。
 私だけならともかく、マイスター商店に帰った馬車が再び敷地に入ってきた事が不思議な様子です。

「ファル姉様、お話の途中ごめんなさい!
 緊急事態です。手を貸してください!
 馬車の中に怪我をして、しかも川を流されて衰弱してる人がいるんです!」
「本当ですか!? ならばユナ様はすぐにカル様を呼んで下さい。
 わたくしはジャラン様と一緒にその方を診察室に運びます!」
「はい!」

 私の発言に驚きつつも毅然と指示出しする姉様。
 何事にも動じず的確に対応する。
 こういった精神安定度の高さをいつも尊敬してしまいます。
 私は急ぎ靴を脱ぐと大声で父様を呼びます。
 胸の奥から湧き立つ焦燥感。
 男性は一刻の猶予もない感じです。
 ホンの数秒がとても長く感じました。
 そうして応接間から父様の返答があった瞬間、あれほど私を支配してた焦燥は見る見る内に消えてゆき、膝から力が抜け思わずその場に座り込みます。
 専門の治療術師である母様程ではないも、実戦で鍛えた治療技術を持つ父様に任せれば後は大丈夫です。
 玄関に横づけになった馬車の荷台から苦心して男性を診察室へ運ぶ姉様とジャランさんをちらりと見ながら、
 私は安堵に胸を撫で下ろすのでした。 


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