勇者の系譜とやらに異世界転生した私ですが、そんな事など関係なくメイド喫茶で働いてます

秋月静流

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優しく宥めちゃうみたいです

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「しかしあの魔神皇という存在は強大だった。
 交渉する間もなく戦闘を仕掛けられたが、一方的だったよ。
 闇魔術を使えるだけでなく、まさか配下がいるとは」
「配下?」
「ああ。6魔将とか言ったかな?
 名乗りながら襲ってきたので正確な数は分からないが……」
「そ、その中に女性はいましたか!?
 蒼髪翠瞳の女性なんですけど」
「何分不意打ちだったものでね。
 詳しく判別してる余裕がなかったが……
 俺が遭遇した中にはいなかったような気がする」
「そう……ですか。
 ならばいいのですけど……」

 期待と不安。
 一縷の望みを掛けて質問した糸は立ち消えてしまいました。
 目に視えて消沈する私。
 そんな私を気遣い声を掛けてくれるネムレス。
 まったくどっちが病人何だか。
 私は気力を総動員すると強引にテンションを持ち直します。

「ん……大丈夫です」
「そうか……理由は知らないが、あまり無理はするな。
 感情を制御するのも大事だが、君は君らしくあればいいのだから」
「それ、他の人にも言われました」
「今の君の外見にそぐわぬように見えるのだろう。
 女性に歳を尋ねるのは大変失礼だろうが、
 ユナは実年齢はいくつになるんだい?」
「向こうの世界での享年は12歳でした。
 こちらに転生してきて7年ですが……
 一年は意識がないような状態だったので、
 精神年齢は18歳くらいでしょうか?」
「良かった。俺より年上ということはないようだ」
「ひどいです。女性に対しデリカシーがないと思います」
「よく言われるよ」

 むくれる私に対し、弁解するように苦笑するネムレス。
 会話に疲れたのか枕に寄り掛かる様に身を委ねます。

「痛みますか?」
「ん? ああ。
 肉体的な損傷は君達の献身的な治療でかなり回復したよ。
 日常的な動作に問題はあるまい」
「そうですか……良かった」
「だが今回の戦いで大分アストラルに深い傷を負ってしまったみたいでね。
 残念ながら完全回復までにかなり時間が掛かりそうだ」

 自らの身体に穿たれた傷。
 その上から巻かれた包帯を見ながら、ネムレスは溜息をつきます。
 私は彼に近寄ると、労わる様に薬液を塗り包帯を取り替えます。

「ん。すまないな、ユナ」
「いえ。これくらい。
 不思議な縁もありますし」

 鍛え込まれたネムレスの身体。
 幾多の戦場を潜り抜けてきたであろうその身体は……
 ボロボロでした。
 古傷が幾重にも奔り、中には切断されたのを強引に魔術で癒着したと思わしき痕もあります。
 こんな風になるまでこの人は何故戦えるのでしょう?

「ネムレス」
「何かな?」
「貴方は何故……ここまで戦えるのです?」
「疑問かね?」
「ええ」
「答えてもいいが……
 一つ、約束してくれ」
「何でしょう?」
「その、出来たら笑わないでほしい。
 俺が言えた義理じゃないが」
「笑いませんよ」
「そうか……ならば話そう。
 俺が琺輪と契約し、守護者として戦う理由。
 それは……」
「それは?」
「どこかの誰かの笑顔の為だ」
「え?」
「虐げられし者。
 報われない魂。
 世界は悲劇に満ちている。
 本当に、どうしようもない程に。
 だが霊長の守護者として……
 正義の味方として少しでも誰かを救えるなら……
 俺は自らが傷つくことを厭わない」
「ネムレス……」

 拳に力をこめて話すネムレス。
 その姿があまりにも一生懸命だったから。

「ひどいな、ユナ。
 笑わない約束だったのだろう?」
「ごめんなさい。
 でも馬鹿にしてる訳じゃないんですよ?」

 口元に自然と浮かんでしまった微笑。
 この人の純粋な想いに少し魅せられてしまったようです。

(最初は怖い人かと思ったけど……
 ホントにいい人みたいですね。
 それに……何か可愛い)

 私は年上に対する感想としては失礼な事を思いながら、
 少し憤慨するネムレスを優しく宥めるのでした。


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