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女性の敵は撲殺みたいです
しおりを挟むお礼を告げる最後の相手、リューンの姿を求めて屋敷中を探し回る私。
先程まで給仕役をしてたのに、どこにも見当たりません。
いつの間にか、鎮守の森に帰ってしまったのでしょうか?
こっそりと私はリューンから頂いた尻尾飾りにリーディングを施行。
霊的啓示効果により、その居場所が判明しました。
脳裏にその姿が怜悧に浮かび上がります。
最近の修行の成果で、こんな事も出来るようになったのです。
勿論一番知りたいのは母様の居場所で、何度も残された所持品にリーディングを行いましたが……
魔術か何かでプロテクトが掛けられてるのか、溢れる家族への想いが伝わってくるのみで、その居場所は要として分かりませんでした。
まあリューンはどうやらパーティを抜け出て、我が家から少し離れた小川のほとりに居る様でしたが。
私は周囲の方々に改めてご挨拶すると、所用と言い外へ出ます。
さして遠くない小川の淵。
川岸の草むらに腰掛け、夜空を見上げているリューンがいました。
その姿はどこか寂しげで、消えてしまいそうで。
いたたまれない気持ちになった私は、小走りで彼に駆け寄ります。
「探したよ、リューン」
「ん?
……ああ、ユナか」
こちらを軽く見上げた後、その視線はまた天空へ向けられます。
スカートが皺にならない様、綺麗に膝へ折りながら私はリューンの隣りに腰掛けます。
すっかり日が落ち暗くなった中、響き渡る虫の声。
柔らかな輝きを燈す、蛍の光。
穏やかな明かりに瞬く水のせせらぎ。
何だか幻想的な雰囲気です。
微かに照らされるリューンの横顔。
空を見上げる整ったその容姿。
けど、今は何だか儚げでした。
思わず言い知れない不安を抱いちゃいます。
私は胸中を占める不安を打ち消す様、そっと聞いてみるのでした。
「何を……見ていたの?」
「ふむ。星をな……」
「星?」
「ああ。吾等一角馬の一族が、夜空を神格化し信仰してるという話はしたことがあったか?」
「うん。前に少しだけ」
「そうか。
一角馬はな、身体が力尽き大地に横たえた後、その魂は夜空に召し上げられ万物を見守ると伝えられていてな。
特に生前目覚ましい生き方を為した者は、魂が星々となり輝きをあげるらしい」
「へえ……ロマンティックなお話だね」
「まあ旧い言い伝えだからな。
どこまで本当なのやら」
「ん~……でも私は嫌いじゃないよ、そういう話」
「ほお……これは意外。
ユナは結構浪漫が分かるのだな。
徹底したリアリストだと思っていたが」
「何それ。ひど~い」
「いや、すまんすまん」
心底驚いた感じのリューン。
私だって一応花も恥じらう(?)乙女です。
軽く拗ねて見せた私に、リューンが手を合わせ謝罪します。
いったいどこで覚えてきたのでしょうか?
そんな仕草が面白く、笑みが浮かぶます。
リューンもどこかホッとした様に苦笑を返します。
誰もいない夜空の下、私達は声を忍ばせ笑い合います。
「そういえば」
「ん? なに?」
「吾といる時は喋り方が違うのだな、ユナは」
「うーん……多分ね、これが素の私だと思う。
色々あって事情は複雑なんだけど」
「それはあの守護者が絡む事かね?」
「うん、まあ」
「ならば深く理由は聞くまい」
「ありがと♪
何だかリューンって、いつも自然体っていうか……
幻獣だからかな?
揺るぎ無く泰然としてて……
一緒にいると心底落ち着くな~って。
だからか知らないけど、リューンといると本来の私になれるの」
「それは光栄だな」
「ホントだよ?
この四年間腐らずにやってこれたのはリューンが傍にいてくれたからだと思う。
本当にありがとう」
「礼には及ばない。
汝らには義理があるしな」
「もう。いつもそれ?」
「いや、それだけでもないが」
「え?」
突如こちらに向き合ったリューンが私の顔を見詰めます。
昏くてその表情は窺えませんが、どことなく真剣な面差しの様な気がします。
途端、急に高鳴るハート。
ドキドキ
うるさい程に重低音を刻むビート。
あ、あれ?
な、なんでしょう、これ。
何だか変ですよ、私。
突然の衝動に困惑する私。
そんな私を余所に、ゆっくりとリューンの手が伸びてきます。
見事な腕前で竪琴を奏でた繊手。
それが私の頬をかすめ、髪に……
「ふあっ」
意識しないのに変な声が出ちゃいます。
自制を離れ、顔が上気していくのを止められません。
なななな何をやってるですか、私っ!?
そりゃあ私は前世の経験も含めて乙女ですけど現世の身体はまだ7歳の身体なので清く正しい男女交際を送らなければならないと思う訳ですがそもそもリューンに対して恋愛感情を抱いていたかと再確認する訳でありでも決してこうされることが嫌なのではなくもっと優しくしてほしいとかうあ私は何を言ってるんでしょうとか混乱しながらも思う次第ですけど結局のとこ結論から言わせていただくと、
(だ、駄目ですぅ……)
覚悟を決めた私は震えながらも目を閉ざします。
やがて訪れる唇への感触。
……はなく、身を離すリューンの気配が伝わりました。
慌てて目を見開く私。
そこには満足そうな顔で手にしたものを見詰めるリューンがいました。
よく見るとそれは綿状になった砂糖菓子の欠片でした。
「あ、あの……リューン?」
「ああ、やっと取れた。
パーティの最中、君の髪に張り付いてるの見掛けてな。
早く取ろうと思ってたのだが……
無事回収できて良かった」
「じゃあ先程までの思わせ振りな態度とかは……」
「思わせ振り?」
「な、何でもないです!!」
「? どうしたのだ、ユナ。
何だか先程から挙動が不審だし、顔が赤い」
「だから何でもないですってば!」
「?? よく分からない。
吾にも理解出来る様にだな、説明を」
「まだ言いますか、もう!
リューンの……馬鹿ぁぁぁ!!」
「ぐはぁ!」
事情を求め迫り寄るリューン。
私は全力で拳を叩き込むと、一撃で轟沈した彼を無視し、憤慨しながら立ち去るのでした。
女性の敵は滅べばいいんです。フン!
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