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6日目⑥
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「ここは……?」
「あれ? いつもの先輩の家じゃないっすね」
魔狼ローグを無事に討伐し終えた俺達。
さすがに第二階層のボスだけあってレベルが上がったのだが……
意識空間に飛んだ俺達は見慣れた我が家の居間じゃなく、荘厳な寺院の様な場所にいた。
質実剛健でありながら絢爛豪華な威容。
相反するそれらが矛盾なく調和を以て一体化していた。
金でなく歴史の重みを感じる内装はもはや神秘を得るまでに至っている。
窓から覗く周囲の風景は黄金に染まり幻想に満ちていた。
「綺麗なところね……まるで天国みたいな」
「当たらずとも遠からず――かもしれませんよ、瑞希さん」
「どういうこと、臼汰くん?」
「レベルアップ時に俺達が招かれるのは、多分アイが干渉して生み出した空間。
要は俺達の深層心理を投影した疑似的な世界なんですよ。
だからこの寺院も現実にある訳じゃない。
ここは――俺達の心の中。
正確にいえば俺達の深層心理を下に描かれた仮想現実(ヴァーチャルリアリティ)の世界なのは分かりますよね?」
「ええ。アイさんから聞いて理解してたわ」
「これに俺は疑問を抱いていたんです」
「疑問?」
「ダンジョンとの契約というか【探索者】として認識されている俺達。
いや、探索者全てに対して意識世界があるのでしょう。
けど仏教で言うとこの阿頼耶識、ユングで言う集合的無意識的なベースとなるものが、まず前提としてあるのではないか――と」
「ほえ~ウチには難解で難しいっす。
さすが大学で心理学を専攻してた先輩ですね」
「茶化すな」
「ううん。興味があるわ。続けて?」
「はい。
人間の深層に存在する、個々である人の実際の経験を越えた多くの人……
人類に共通した先天的な精神領域であり通常、普遍的無意識とも呼ばれるもの。
俗に言う【天国】【楽園】と認識されるのがここなんじゃないですかね?」
「解説ありがとうございます。
説明する手間が省けて大変助かります」
そう言いながら奥へと続く扉から姿を現したのは、神々しいほどの美貌を持った麗人だった。
男女どちらともつかない見た目――
清流の様に美しく流れる銀髪に、サファイアのような蒼の双眸。
さながら天工が身命を注いだ様な容姿。
簡素なローブすらその美しさを際立たせる。
一番特徴的なのは両手の甲で輝く蒼い水晶だろう。
吸い込まれそうな深い色合いのそれは、畏敬を抱かせる神秘に満ちた装身具アクセサリーだ。
あまりの美貌に硬直する俺達の前に来ると丁寧に頭を下げる。
「私はこの領域の代行者にして寺院の管理者。
アリシアといいます。
どうぞよろしくお願い致します」
「は、はい……」
「こちらこそよろしくお願いします、アリシア様」
「ああ、お気遣いなく。
貴女達が敬意を以て接してくれているのは充分伝わります。
なので――以後は様などつけなくて結構ですよ」
「はひ!?」
「何とか……努力する。
頑張りますわ……」
硬直しながらも失礼がないよう挨拶をかわす女性陣。
無理もない。
豪胆と言えば聞こえがいいが、精神的に鈍く動じない自分でさえ気後れするオーラだ。
通常なら圧倒されてしまう存在感だろう。
しかし空気を読まない俺はアリシアに訊いてみる。
「領域代行者にしてこの寺院の管理者と名乗ったが――
あなたはいったい何者なんだ?
俺達はどうしてここに? アイはどうしたんだ?」
「お答えしますね、臥龍。
私はアイの上位存在――まあ、上司みたいなものです。
彼女には荷が重いので今回は控えてもらっています。
この度、貴方達をここにお招きしたのは二次職への転職……
俗に言う【クラスチェンジ】の儀を執り行う為です」
「あれ? いつもの先輩の家じゃないっすね」
魔狼ローグを無事に討伐し終えた俺達。
さすがに第二階層のボスだけあってレベルが上がったのだが……
意識空間に飛んだ俺達は見慣れた我が家の居間じゃなく、荘厳な寺院の様な場所にいた。
質実剛健でありながら絢爛豪華な威容。
相反するそれらが矛盾なく調和を以て一体化していた。
金でなく歴史の重みを感じる内装はもはや神秘を得るまでに至っている。
窓から覗く周囲の風景は黄金に染まり幻想に満ちていた。
「綺麗なところね……まるで天国みたいな」
「当たらずとも遠からず――かもしれませんよ、瑞希さん」
「どういうこと、臼汰くん?」
「レベルアップ時に俺達が招かれるのは、多分アイが干渉して生み出した空間。
要は俺達の深層心理を投影した疑似的な世界なんですよ。
だからこの寺院も現実にある訳じゃない。
ここは――俺達の心の中。
正確にいえば俺達の深層心理を下に描かれた仮想現実(ヴァーチャルリアリティ)の世界なのは分かりますよね?」
「ええ。アイさんから聞いて理解してたわ」
「これに俺は疑問を抱いていたんです」
「疑問?」
「ダンジョンとの契約というか【探索者】として認識されている俺達。
いや、探索者全てに対して意識世界があるのでしょう。
けど仏教で言うとこの阿頼耶識、ユングで言う集合的無意識的なベースとなるものが、まず前提としてあるのではないか――と」
「ほえ~ウチには難解で難しいっす。
さすが大学で心理学を専攻してた先輩ですね」
「茶化すな」
「ううん。興味があるわ。続けて?」
「はい。
人間の深層に存在する、個々である人の実際の経験を越えた多くの人……
人類に共通した先天的な精神領域であり通常、普遍的無意識とも呼ばれるもの。
俗に言う【天国】【楽園】と認識されるのがここなんじゃないですかね?」
「解説ありがとうございます。
説明する手間が省けて大変助かります」
そう言いながら奥へと続く扉から姿を現したのは、神々しいほどの美貌を持った麗人だった。
男女どちらともつかない見た目――
清流の様に美しく流れる銀髪に、サファイアのような蒼の双眸。
さながら天工が身命を注いだ様な容姿。
簡素なローブすらその美しさを際立たせる。
一番特徴的なのは両手の甲で輝く蒼い水晶だろう。
吸い込まれそうな深い色合いのそれは、畏敬を抱かせる神秘に満ちた装身具アクセサリーだ。
あまりの美貌に硬直する俺達の前に来ると丁寧に頭を下げる。
「私はこの領域の代行者にして寺院の管理者。
アリシアといいます。
どうぞよろしくお願い致します」
「は、はい……」
「こちらこそよろしくお願いします、アリシア様」
「ああ、お気遣いなく。
貴女達が敬意を以て接してくれているのは充分伝わります。
なので――以後は様などつけなくて結構ですよ」
「はひ!?」
「何とか……努力する。
頑張りますわ……」
硬直しながらも失礼がないよう挨拶をかわす女性陣。
無理もない。
豪胆と言えば聞こえがいいが、精神的に鈍く動じない自分でさえ気後れするオーラだ。
通常なら圧倒されてしまう存在感だろう。
しかし空気を読まない俺はアリシアに訊いてみる。
「領域代行者にしてこの寺院の管理者と名乗ったが――
あなたはいったい何者なんだ?
俺達はどうしてここに? アイはどうしたんだ?」
「お答えしますね、臥龍。
私はアイの上位存在――まあ、上司みたいなものです。
彼女には荷が重いので今回は控えてもらっています。
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