拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?

第004話 ゼルアス侯爵領の掌握

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 ゼルアス侯爵領からダントルを除く領主一族が兵士を引き連れて王都へ向かった数日後、ダントルの目の前には更なる理不尽が襲い掛かって来ていた。
 フォーシュレーグ王国のレンリート伯爵領軍がゼルアス侯爵領領都を取り囲んだのである。その数およそ10万、領都の領民の半分に迫る数である。
 父親が王都へ率いた兵は領地全体からかき集めておよそ2万、王都の国軍も5万は居ないだろう。王都近郊から兵をかき集められれば増やせるだろうが目の前の連中がそれをむざむざ許すとは思えない。
 ダントルから見てもアデール王国の滅亡は待った無しの状況に見えて来た。王都近郊の大領地で敵軍に囲まれているのだから当然だろう。
 そして現在、ゼルアス侯爵領の領主の屋敷でダントルは顔面蒼白になり大汗をかきながら敵の兵士に囲まれていた。
 親兄弟は王都に行ってしまっている。主だった騎士や兵士も一緒だ。残っていた侍女が着替えさせたがその後お茶を出す事も無く逃げ出した。
 ダントルも逃げたかったが使用人達に捕まり無理矢理この場に押し出されたのだ。ダントルが居なければ自分達の誰かが相手をしなければならないと考えたのだろう。
(これまでの横暴な振る舞いの所為か我が家の人徳か、微妙な所だな)
 ダントルは敵軍の兵士達に囲まれている状況に、我慢しないとガチガチと歯を鳴らしてしまう程の緊張に囚われていた。そこに新たに高位の騎士達と思える者達を引き連れてとんでもなく美しい女性がやって来た。

「――君がこの領の代表で良いのかな? 私はシャルロッテ・フローディア。この戦争の総指揮を取っているわ」
 その女性が入室した途端、自分を囲んでいた兵士達の緊張が数段上がったのをダントルは感じた。
(とんでもないのがやって来たのだろう)
「ダ、ダントル、……ダントル・ゼルアス、です。3男の、です」
 ダントルにとって父親は決して逆らえない怖い相手だったが、目の前の女性にはそれ以上の恐怖を感じた。
 兵士達よりも高い身長に光りを反射するかの様な白い肌、白銀の長い髪。そこに切れ長の蒼い瞳と見た事も無い様な大きな胸を携えている。人間味を感じさせないその美しさはダントルに死神の様に感じさせていた。
(あの見た事もない程デカい胸に目を奪われれば殺される。……かと言ってあの冷たい瞳に目を向けるのは何より恐ろしい。何もされてないのに心臓を鷲掴みされてる気分だ。ああくそっ、……俺は此処で死ぬのか)
「…………りょ、領民には、手を出さないでくれ、……下さい」
 もう自分の命は諦めるしかない。死にたくなんか無いがこの死神相手にはどれだけすがっても無駄だろう。そこで出てきた言葉は戦争で理不尽な目に遭った子供達と、数少ない友人達が重なって見えて出た言葉だった。


「現状、貴方みたいな子供を吊し上げても私達には不利益しかないわ。それで、他の使用人達は何処に居るの?」
「はっ、どうも逃げ出した様でして、現在屋敷内の押収品の精査と共に調査中です。充分な兵を出して捜索しているので間も無く捕らえる事が出来ると思われます」
「そう。関係書類は全て私の所に持って来て頂戴」
「はっ、畏まりました」
 シャルロッテはダントルに一瞥しただけですぐに側の兵士に話し掛け仕事に入っていった。自分を代表か聞いておいてその態度はどうかと思うが、この興味の無さが子供に手を出さないと言う先程の言葉に信憑性を感じさせた。
 まだ12歳、後3年していたら吊し上げられていたかも知れなかったけど兎に角、今は子供で良かったと安心した。
「それにしても聞いていた話しとは大分違うわね貴方」
「……、は?」
「王都第2学院の、今年の入学試験で決闘騒ぎを起こしたのは貴方でしょう?」
「うっ! なっ、何故!?」
 それを!? と続けたかったが間者を放っていたのだろう。戦争前だったと言うのに恐ろしい情報収集能力だ。
 アイリスを美少女と勘違いしてハーレムに加えようとしたが、男と分かって逆ギレして決闘騒ぎになったのだ。
 まあ護衛をしていた騎士を代理に出したらアイリス側もナージャが勝手に出て来て叩きのめされたのだが、ダントルの中では既に黒歴史となっていた。
 因みにアイリスからはオーク君との認識だったが今のダントルは痩せてぽっちゃり気味のやや愛嬌のある顔立ちになっている。父親は強面オークなので将来は分からないが。

「それで、貴方はどうしたいのかしら?」
「どう……、とは?」
「先程の貴方は領民の助命を願った」
 自信無さげにシャルロッテをチラッと見ると真剣な表情て此方を見ているので、自分も何とか目を合わせ出来る限り真剣に聞く姿勢をとった。
「真摯にそう願っていたとしても私達に対しての印象操作だったとしても領主としての器とも取れる。アデール王国を接収後、貴方が望むのであれば此方の望む人材を受け入れ、教育を受ける事を了承する事を条件に領主候補として此方も受け入れても良いわ」
「っ――!!」
 ダントルにとってそれは寝耳に水の話しだった。元々3男、更に長男は子供も生まれていて自分が領主になる可能性は限り無く低かった。
 父親もそう考えていて、失態を犯したダントルを見限り戦地に送ったのだ。将来は野心を見せず家から出ればコネでそれなりの職に就かせて貰える、侯爵家としては最底辺の扱いだがダントルはそれを受け入れていた。
 だからこそ残っていた使用人達もダントルを見捨てて逃げ去った。そういった扱いを受けていたダントル自身も自分に期待する事は無くなっていたのだ。
 昔のダントルなら深く考えもせずに喜んで受け入れただろうが、今は不安の方が大きく感じられた。

 コンコン
「シャルロッテ様、ルシオスです」
「入りなさい」
「はっ、失礼致します。――シャルロッテ様、主な施設の接収を終えました。反抗した者達は捕らえて牢に入れております」
「そう、後は何時も通りに」
「承知致しました」
 シャルロッテの許可を得て入室したルシオスの報告を慣れた様に返していく。シャルロッテがダントルに視線を戻すと体をビクリと震わせた。
 視線を向けただけで何を怖れる事があると言うのか、シャルロッテは少々不快に思ったがそのまま話しをしていく。
「まあその話しは後でも良いわ。貴方も決着が着いていない段階で決断はし辛いでしょう」
「あ、……はい」
 此処で決断出来ていたらシャルロッテはダントルの評価を一段上げていただろう。――野心が強いとも取れるのでその評価は微妙な所だが。




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