拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?

第025話 急転

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「商人の王都への出入りを禁止する!?」
 王都に入ろうとしていた行商人はレンリート伯爵軍からの発布に驚いたが、いよいよかと感じていた。
「ああ、まだ少し先の話しだが予め王都内で布告して欲しいのだ」
「しっ、しかし、そんな事をすれば王都でアデール王国の国軍に捕らえられてしまうのではないですか?」
「ひっそりと噂を流すだけで良い。何百人と居る行商人全てに依頼している。相手も全てを監視して捕らえるのは無理であろう?」
「――その後、王都を出るのは?」
「王都の外に出るのに此方は制限を掛けない。あくまでも商人にはな」
「商人には、……とはどう言う事でしょう?」
「敵の兵士を出す訳にはいかんだろう? 武具無しであれば平民として通すがな。それも噂として広げてくれ。国として降伏を受け入れれば封鎖は解除する事もな」
 こうして広げられた噂は瞬く間に王都内を駆け巡った。敵に囲まれている非常時にその敵からの情報は自分達の命に関わるのだから当然だろう。


「父上~、城の女共が反抗的なんだけどー?」
「自分達で何とかしろ!」
(くそっ、後宮に女共を押さえてあると言うのにそれどころではないではないか!)
 そしてその情報は当然王城にも届いていた。既に敗戦間近と見て城の人間も王位簒奪したゼルアス家への敬意を取り繕う事すらしなくなっていたのだ。
「噂では3日後から王都を封鎖するらしいです」
「――南部から切り込み、サルマトール侯爵領まで脱出するしかないであろうな」
「しかし、問題はそこまで行けるかどうか……」
「行かねばならんのだ。これ以上王都を封鎖されては干上がるだけだ」
 東のフォシュレーグ王国は今現在敵対している相手だし西のカントラス王国も何度もやり合っている相手、北に抜けても山々に囲まれた小国メメントリア王国があるだけで袋小路だ。
 そうなると南部サルマトール侯爵領まで行くしかない。制圧出来れば南の国々と同盟を結べる可能性もある。――極めて0に近い可能性ではあるが。

「陛下! ゼルアス陛下! フォシュレーグ王国レンリート伯爵軍からの書簡です!!」
「何っ!? 寄越せ!!」
 自ら書簡を強引に奪い取り目を血走らせて読みふけるゼルアスにラーバン将軍は痺れを切らして話しを聞いた。
「――何と書いてあるのです?」
「王都から、兵を出したらその瞬間から王都に進軍すると書いてある」
「むう、……となると、王都の門は広いが隊列を組んでも恐らく数百も出ない内に戦端が開かれるでしょうな」
「それは向こうが進軍しても同じではないか? 門内部で待ち構えて各個撃破してしまえば良いだろう?」
「進軍すると書いてあっても実際には外に出た兵を叩くだけで王都内には入らんでしょう」
「何故だ?」
「お忘れですか? 商人の出入りを禁止されれば此方は直ぐにでも干上がってしまいますよ? 奴等はそれを待っていれば勝てるのですから、無理をして攻め込む必要が無いのです」


 シャルロッテ達はアデール王国側からの情報を収集し分析していた。アデール王国の国軍では次々と離反者を出していたが、当然それを止め様とする動きもあった。
 ――しかしそれが逆に軍の規律を乱し殺伐とさせた。
 離反しようとする平民の兵士達を捕らえ、見せしめとして処刑したり逆に反抗され、貴族の上官が惨殺されたりする事件が続発していたのだ。
 そしてその動きはゼルアス軍内部でも起き始めていた。
「国軍だけでなくゼルアス軍からも離反者が出て来た様ですね」
 王都民を外に出さない為に国軍は王都外壁の内側を見張っているのに対し、ゼルアス軍は城内の警備に当たっていて王都民の声を聞く事は無かった。
 だが此処に来て城内にまで届く不穏な噂や、使用人達の態度の変化で現実を突き付けられてしまったのだ。

「上官の貴族をぶっ殺して手柄を上げたとか言う阿呆も出て来たしな」
 だから厚遇で雇えなどと言って来た兵士達が居たのだ。帯剣したまま向かって来たので警告したのだが興奮状態で一触即発の雰囲気になっていた。
「あの時は儂が活を入れて治まったが、あの様子ではその内此方でも血を見る事になるぞ」
「一旦離反者の受け入れを止めますか?」
「それは悪手よ。下手をすれば後が無くなったと考えて一致団結して反抗されてしまうかも知れないわ」
 シェルビドの危惧にルシオスが対応策を出すがシャルロッテは却下した。
「現状維持よ。此処は下手に動いても相手を悪い方に混乱させるだけだわ」
「つまらぬ策じゃったな。ぷくく」ボソッ
「(ピキッ)何か言いましたか? シェルビド殿」
「いや? なーんも言うとらんよルシオス殿?」すっとぼけ
「くっ、ムカつくジジイだ」ボソッ
「「……あ?」」
 パンパン!
「兎に角、此処が踏ん張りどころよ2人共。ふざけてたら、――分かるわね?」
「「…………はい」」
 シャルロッテは手を叩きながら魔力を冷気に変えて微笑みながら威圧していた。
(と言うかお嬢のそれ(威圧)があれば阿呆共も黙るんじゃなかろうかな)

 ルトルートとアーダルベルト達はシャルロッテ達が北部で雇った平民の指揮官として行軍を指揮していた。しかしアデール王国の国軍やゼルアス軍に対する脅し目的の数合わせだったので兵士っぽく見せるだけで他に仕事は無い。
 目的地の王都に着いてしまった今は兎に角剣を振らせて走らせ、たらふく飯を食わせているだけだ。
 真面目にやれば正式に軍で雇うと言ってあるので皆やる気に満ちている。軍に雇われると言うのは平民にとって食いっぱぐれの無い、戦闘職で最上位の職業と言って良いのだから当然だろう。
「なあアーダルベルト、此処まで来たら俺等要らなくね?」
「言うなルトルート」
「けどよぅ。これから戦闘があったとしても、流石にコイツ等は参加させるレベルにないし。ぶっちゃけやる事無いよな?」
「そう言うなら彼方さんに御用聞きでもしてみるか? 何かあったみたいだぞ?」
「止めろ止めろ、お前も一緒に巻き込まれんだぞアーダルベルト」
 そう言ってシャルロッテ達の居る本陣の方を見るルトルートとアーダルベルト。王都側の国軍やゼルアス軍とは違いのんびりした日々を送っていた。――雇われた平民達は毎日死にそうな顔で走らされていたのだが。


 ルトルートとアーダルベルトが言う通りレンリート伯爵軍にとんでもない情報が入って来て、シャルロッテ達は対応を迫られていた。
「ゼルアスが毒殺、……これからどう動きますかね」
 手を出されそうになった女官の親が毒味役で、手を出される前に遅効性の毒でゼルアスを殺害したらしい。その毒味役は捕らわれる前に逃亡したそうだ。恐らく手助けした者達もいたのだろう。
 国軍トップのラーバン将軍は見切りを付けてゼルアス家の者達を取り押さえようとしたが、ゼルアス軍はゼルアス家の生存が自分達の命運を握ると激しく抵抗、双方共にかなりの犠牲者が出で現在も睨み合いの状況だそうだ。
「流石に情報が少な過ぎて展開が読み辛いわね」
「可能性としては考えられていましたがね。ですがこれで南部に逃亡される心配はほぼ無くなったのは良かったのではないですか?」
「兵が2つに割れたからなぁ。それどころでは無いだろう」
「ゼルアス軍は分かります。新王家となっているゼルアス家が居なければ王城に居座る根拠が無くなりますから。しかし何故国軍はゼルアス家を捕らえようとしたのでしょう?」
「ゼルアス侯爵領でも随分と傲慢な振る舞いをしていた様だからな。国軍からも支持を得られん様になったのではないかの?」
「捕らえて幽閉でもしておけば、これ以上支持が下がる事も無いでしょうしね。いざとなれば此方との交渉材料に使おうとでも考えたのではないかしら」
「成る程」
「流石お嬢だな」
「どう言う意味よ。――まあ良いわ。取り敢えず此方の方針は変えない。向こうの出方を伺うわよ」




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