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第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第025話 俺の扱い……まあ良いか
しおりを挟む何か皆んな聖女様を讃えてるな。俺? 男だから違うよ? 何言ってんの? ……駄目? 駄目かー。もうどうでも良いから汗流してふて寝したい。……1週間くらいふて寝したい。
『(うむ、無事戻ったようじゃの。安心したのじゃ。危うく本当に我が邪剣かと思うたのじゃ)』
冒険者や兵士、傭兵に囲まれたカオスな状況を何とか脱して村で許可を貰って浴場に入る。
ああ、どうすんだよこの状況。聖女騒ぎとか絶対これで終わりでじゃないだろ。――……何とかして逃げられないかな。
「聖女様ぁ、お背中流しますよー」「私達もご一緒させて下さーい」「ルルも、洗うです」
「「「「……………」」」」
「お、男の人……だったの?」「えっ? でも、聖女様って……」「はわわ」
最初に助けた少女達か、そしてまたこの展開か、まあ騒がれないならどうでも良いか。今は兎に角さっさと体洗って寝たいのだ。身も心も疲れきってるからね。
「――ルルに洗わせて」
「ルルッ!?」
「命の恩人にかわりない」
「そっ、そうね。私もやるっ」
前を隠して何かを覚悟したように迫って来る少女達。けど許可してないのに何で人の体勝手に洗ってくるの? まあ体動かすのもしんどかったから好きにさせるけど。
「それにしても、女の子だと思ってた」
「そうだよね? こんなに可愛くて綺麗なんだもん」
「まるでお姫様みたい。お貴族様だったりしませんか?」
「ん……違う」
「ええ~、平民には思えないくらい綺麗なのに」
貴族が綺麗とか何の幻想だ?
と言うか年頃の娘さん等なのに肌も隠さなくなったな。そのまま体を洗われてると気持ち良くなっていく。疲れの余り身を任せていると次第に力が抜けていって、――――そのまま意識を手放してしまった。
「くぅ~」
何だか暖かくて柔らかいモノに抱き付いていたらお腹が鳴った。何時の間にか眠ってたみたいだ。
「目が覚めたんですかアイリスちゃん?」
「……んぅ……」
半覚醒で寝ぼけ眼のまま見上げると、確か昨日浴場に突っ込んで来た少女達の1人……だったっけ? ――ん? 昨日??
まだ10代前半くらいの少女に抱き付いて寝てたみたい。いや、一緒に寝た記憶が無いからこの娘が布団に潜り込んで来たんだろう。俺の父性に惹かれたのかな?
『――――父性??』
まあ色々放って置けない疑問があるが、お前も俺をちゃん付けか。――犯人は村長の奥さんユリカさんだろうけど。
「……う~ん」
まだ眠いけど流石にお腹がすき過ぎた。何かお腹に入れたい。何とか体を起こすと少女が支えてくれた。
「大丈夫? アイリスちゃん、昨日は大分疲れてたみたいですね」
「ん~、……昨日??」
「覚えてませんか? 浴場で眠ってしまったんですよ?」
「ん、……ご飯、……忘れた」
「ご、ご飯ですか?」
何故か慈愛に満ちた表情で頭を撫でてくる少女。君15歳いってないでしょ?俺の半分以下、君の親より年上かも知れないぞ?
「あっ、アイリスちゃん起きてた?」
「アイリスちゃんご飯食べる? おばさんに頼んで来よっか?」
「んっ、……食べる」コクッ
「あらあら、やっと起きたのねアイリスちゃん。ちょおっと待っててねぇ。今すぐ持って来るからたっぷり食べてねぇ?」
塩の効いた野菜たっぷりの麦雑炊、酸味のある赤い実と甘味のある黄色い実が美味しい、今日は豪勢だな。何で少女達と同じ部屋で寝かされていたのか問いたいけどまあ良いや、ご飯ご飯。
「アイリスちゃん、はい」
もぐもぐ。
「アイリスちゃんコッチもどうぞ、あーん」
んっ、もぐもぐ。
「アイリスちゃん次私です。はい、あーん」
もぐもぐ、もぐもぐ、もぐ………。うん、美味い。
因みに抱き付いて寝てたのが茶髪ポニテのコレットで、赤髪ショートにそばかすのラビィ、黒髪ボブカットのルルの3人チームだそう。皆んな12歳、シラルの町の孤児だったらしい。
怪我して俺が治したのがルルでルルは130cmの俺より5cmも低いのだ。ルルには親近感が湧くな。このまま伸びなければ良いのに。
『(器が)小さいのう』
黙れ邪剣が。追い越されたら一生勝てないんだぞ!! コレットとラビィなんて既に俺より10cm高いんだからな!?
「ふふっ、アイリスちゃんハーレ……、お姫様みたいねえ」
「だってアイリスちゃん浴場で気を失うくらい頑張ってたんですよ?」
「ルルは命を救われた」
「アイリスちゃんの素肌は誰にも見せていませんから大丈夫ですよ?」
「?? ……っ!」ゴソゴソ
女になったのかと思って確認したけど胸も出てないし男のままだった。良かった。何が大丈夫か知らないけどオッサンの肌にそんな価値は無いんだよ?
ご飯を食べ終わって部屋に戻ってまったりしてるとまた眠くなって来た。布団の上でふわふわふらふらしているとルル、だったかな? が膝枕をして来たからそのまま目を閉じた。
「アイリスさん、……おや、お眠りになっておりましたか」
「んんぅ?」
「ああ、すみません。サージェスさんがお話しがあるそうなのですが、どうしましょう?」
サージェス? 何の用だ? んー、まあ会っておくか。うなずいて許可を出すと村長が呼びに戻って行った。何か偉くなった気分だな。偉い人がどうしてるか知らんけど。
『偉い? ……眠気を我慢しとる子供にしか見えんのじゃが?』ボソッ
何かやたらと疲れたサージェスが俺を見てボソボソ言いながら部屋に入ってドカッと床に座ってきた。苦虫を噛み潰したような顔をして天を仰いている。
「……お疲れ??」
「ああ、……すまん。冒険者ギルドのギルド長が事後処理を俺に丸投げしてさっさと帰っちまってな。全く寝れて無いんだよ。……はぁ……」
何でお前が? とは思うけど何か巻き込まれそうだから聞かない。
「アイリス、すまんが2・3日この村に留まってくれないか?」
「? ……何で??」コテン
「っ……ゴブリンキングやナイトは倒したが、かなりの数が散り散りに逃げたみたいなんだ。上位種は全て倒した筈だが今は両隣りの村にもゴブリンが現れる可能性を考えて戦力を割っている状態だ」
ふんふん、成る程。……でもランク2の俺が残っても仕方がないと思うんだけどな?
「成る程、アイリスちゃんの回復魔法ですね!?」
えっ!? ああっ! それがあったか!! でももう使いたくないぞ。洗脳されるみたいで怖いし何とかならないかな? ――――何ともならないな。
この状況から逃げられる気も全くしないし、このまま邪剣に乗っ取られるしかないのかな?
『(乗っ取る気は全く無いのじゃが……、今何を言っても無駄じゃな)取り敢えず緊急の者以外は魔力切れとか言ってその場は誤魔化すのじゃ。後の事は後ほど考えるしかあるまい』
何だ邪剣、どうした? お前らしくもない。嬉々として操ってくると思ったんだが?
『昨日のお主の状態は我にとっても想定外じゃったのじゃ。ちょっと我の魔力を循環させただけで聖人のようになるとはの。アレがお主の本性かと思うたぞ。まさに即落ちじゃった(我の所為かも知れんのは黙っておこう。邪剣認定されたらどんな扱いになるか分からんのじゃ)』
誰が即堕ちか、不気味な事言うなよ怖気が走ったわ。しかしまあ取り敢えずそうするしかないか。
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