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第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?
第002話 美容の魔法?
しおりを挟む「カリンは腰骨が歪んでますねえ。んん~気になるのはお肌と髪の艶ですか。じゃあキレイキレイにしちゃいましょうね。女の子は皆んな綺麗で可愛いのが1番です」
「えっ、リリスちゃん!? 何か雰囲気が何時もと違っ、あっ凄いっ……」
「ギルド長は綺麗なのに眉間にシワが寄ってますねー。視力も回復させてぇ、身体のバランスを整えて、ほーらお肌もツルツルですよー」
「ちょっ、ちょっと待って? 貴女本当にリリスッ、あっ、ぅん」
「レーナさんは? 特に無い? でも目のクマさんと胸の傷は取っちゃいましょう。ついでにシワも無い無いしましょうねぇ」
「ええっ!? ええっ!? 何でっ、ああっ、んっ……!!」
――どうしてこうなった。
自棄になって聖女モードどころかおかしなテンションになってしまったぞ? それと言うのも鍛練の途中でコレット達に回復魔法を掛けていたのがカリンに知られてしまったのが原因だ。
『そりゃアレだけ鍛練しておいて疲れを残すどころか元気いっぱい擦り傷なんかも癒しておったしの。見れば直ぐに分かるのじゃ』
そこでカリンに自分にもして欲しいと懇願された。ちょっとその圧が怖くて頷いてしまったのが運の尽き。ギルド長、副ギルド長まで参加して来たのだ。
若返りに俺の回復魔法が関係ある可能性がとか何とか、それ俺の回復魔法の範疇じゃなくリリィの調整レベルの事をしろって事だよな?
『求めておるのは美容に特化していそうじゃがの』
当然技術も魔力も足りる筈も無く、リリィの外魔力循環を使う事になって堪え切れずに暴走してしまったのだ。……ああ気持ち悪い。
『そうは言うがコレでもマシな方なんじゃぞ。本来なら取り込んだ魔力を体内で回復魔法にして使うのじゃ。それを体の外、患者に魔法を掛ける時に回復魔法にしてるんじゃからの』
それは分かってるけどもっとマシな方法が無いもんかね。
『それどころか難しい患者には本来のやり方が必要になるのじゃ』
……はあ。スタンピードの時、俺の魔法は回復魔法に特化しているって事にしちゃったからな。数十人の重軽傷者を癒しておいてこの程度の人数で根を上げる訳には行かなかったんだよな。
「ギルド長……、これヤバくないですか?」
「ここまで効果があるとは。――私達で独占した何て思われたら不味いですよ」
「伊達に聖女扱いされていないわね。完全に能力を見誤ったわ。でも何か性格まで変わってないかしら」
ギルド長達がボソボソ言いながら帰って行った。何か気になるけど詮索はしない、それが俺の処世術。
精霊剣リリィを枕元に置いてコレットとルルに挟まれて寝た。ラビィを含めて日替わりで一緒に寝るらしい、――皆んな甘えん坊だよな。
『…………』
翌朝ミリアーナが艶々してスッキリした顔でやって来た。随分ご機嫌だけどお前には美容魔法? は掛けてない筈だよな? 良く分からんが深く聞かない方が良い気がする。
コンコン「リリスちゃん、ちょっと良いかしら」
「あーらギルド長朝から……どうしたのよそれっ!? 顔っ、肌艶がっ、何をしたのよ!」
ミリアーナが思わずギルド長に掴み掛かってしまったけどこれは仕方ないとアイリス以外は理解していた。
「ミリアーナ、貴女も肌艶が良くなってるしスッキリしたような顔してるじゃない。同じなんでしょ? 何を驚くの?」
「同じって、……はっ! 私を差し置いて何処の女に抱かれたの!?」
「「「「「――――はあ?」」」」」
一瞬時間が止まったかと思ったぞ。何を言ってんだコイツは?
「あれ? 違うの?」
「貴女が何を言ってるのか分からないし分かりたくもないけど、私の方はリリスちゃんの美容魔法を受けてこうなったのよ」
「うえぇええーーっ!? ……いやいや、ちょっと待ってリリスちゃん! 私が回復魔法受けた時そんな効果なかったよね??」
「ミリアーナ、戦う人。――美容より体調」
「おおう……成る程……。でもでも次からは美容の方も欲しいわよアイリスちゃん!?」
多分何を言っても断れないヤツだよなコレ? 他の連中からも圧を感じるぞ。
「リリスちゃんに聞きたいんだけどこの美容の効果ってどのくらい保つのかしら?」
ギルド長の顔が怖い。何をそんな真剣になる事があるのか。
「年齢や、体質による」
「……私の場合は?」
ギルド長って30過ぎくらいだよな。大体同い年なのにこの立場の違いって、……で? リリィどうなんだ?
「んと……1・2年くらい、経てば、また出て来るかも、です」
「……それって、……老化を1・2年遅らせるって事?」
「んっ、寿命は伸びない、けど健康になる」コクリ
「成る程、それが長いのか短いのかは置いといて、1回の美容魔法でこの効果は破格過ぎるわね」
美容魔法と言う呼び名で固定されてしまったようだ。お金と厄介事の匂いがするぞ? 俺は何でここまでしちゃったのか。
……リリィ、お前俺の暴走を止められなかったのかよ。
『リリィが勝手に使い手の意思に反する事が出来るのなら、それはもう精霊剣などでは無く呪いの邪剣なのじゃ』
くっ、正論!
「リリス……、いえ。――アイリスちゃん。貴方に依頼があるの。ウチの職員達にも美容魔法をして貰えないかしら」
「えうっ!?」
イヤそれ、収拾付かなくなるんじゃ。
「私達だけが恩恵を受けたって事が問題なのよ。ここまで効果があると、ね」
……嫉妬かぁ。
「男性は体調を主に、女性は美容を。ただし視力を回復したり古傷を消したりとかはしないで、本当に収拾付かなくなるから。それでどうかしら」
これリリィの外魔力循環のパターンだよなぁ……断りたい。
「職員28名ウチ男性12名女性16名、1人銀貨2枚2万イェン分を4日間でやって欲しいの。多分女性は全員お金を上乗せして色々と頼んで来ると思うけど」
「えっ? ウチってそんなに職員いたの!? 傭兵だって100人いないのに??」
「スタンピード対策よ。一時的に他から集まって貰ってたのよ」
と言っているが実は多くがシャルロッテが連れて来たレンリート伯爵領からの間者である。何時もはライハルト子爵領内に散って活動しているがスタンピードで集められていたのだ。
――断りたいけど断る理由が思い付かない。うーん、お金が入ると思って諦めるしか無いのか。
「やる、です」
『お主、大丈夫か?』
仕方ないだろ? でもお前の魔力キツくて気持ち悪くて慣れないんだよなぁ。4日で4ヶ月分稼げるのは大きいけど。
『まあお主がそれで良いのなら構わんのじゃが』
取り敢えず朝のウチに4人、内1人は自分の魔力で何とかしたけど3人は無理だった。更にその内の2人は女性だったんだけど2人共金貨1枚、10万イェン上乗せして来た。シワ消しくらいはしないと納得しなさそうだったんだよな。――女性って怖いわぁ。
その後憂さ晴らしにコレット達にミリアーナと鍛練をして、夕方からまた4人回復させた。ちなみに皆んなは俺の護衛依頼を受けていて町を出る時まで一緒って事になった。
「わざわざ変装を解いてアイリスちゃんとして依頼を受けるんですねぇ」
コレットが言う通り、聖女と言われてるアイリスとして職員の回復をしている。
「金髪リリスちゃんの事は職員でも一部しか知らないからね。隠したいんでしょ」
夜になってコレット達に加えて今日からミリアーナも一緒に寝る事に、……なったんだけど何故かギルド長、副ギルド長、カリンがやって来てまた美容魔法を受けて行った。
ああー、頭がスッキリする。心が洗われる。世界が只々愛おしく感じる。この余韻が最高な気分にさせてくれるから最悪なんだよな。
『ううむ、良い事のように聞こえるから反応し辛いのじゃ』
俺はそんな人間じゃないし、他人に心を操られたみたいで怖いんだよ。
『まあそれは分かるがの。結局お主が受け入れた事じゃしな』
そうして翌日から朝4人夕方4人回復させて間に鍛練と言う形にした。ルルには魔法も教えている。リリィの回復魔法で魔力に触れてるからか自分の魔力を感じとれるようにはなっている。魔法を扱う1番の壁は超えた事になるから発動までは後1歩かな?
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